司馬遼太郎の小説「花神」は討幕軍の総司令官になる大村益次郎の生涯を描いたものですが、次のようなくだりがあります。
後の大村益次郎、村田蔵六は長州の村医を捨て、宇和島藩に仕官することになるのですが、宇和島へ向かう途中の松山城下で、蘭法医の藤井道一の家に泊めてもらいます。そして藤井は宇和島まで道案内をすることになるのですが、さらに途中の大洲では医者の山本有仲が一行に加わるという話です(藤井道一の同行は記録に残されているそうです)。
同行する2人の医者は火急の用でもないのに仕事を数日間休むことになるのですが、現代の感覚からするといかにものんびりした話です。作者の脚色もあり、また当時とは社会構造が異なるので比較はあまり意味がありませんが、数日間、仕事を放り出すことができる余裕が事実なら羨ましくもあります。それは医師と患者の立場の強弱に由来することでもあるのでしょう。しかしながら週80時間などという苛酷な労働を強いられる現在の勤務医とは大違いです。
上は極端な例ですが戦後しばらくの間、物資が欠乏していた時期がありました。輸出が振るわないため外貨不足の状況が続き、輸入は自由にできませんでした。当時は「売ってやっている」というふてぶてしい態度の商店が珍しくなかったと記憶しています。また「気に入らない客には売らねぇ」という、金よりも意地や誇りを優先する頑固オヤジもいました。でもそんな商店やオヤジは遥か昔に滅びました。
現在は様変わりで、消費者から見ればありがたい社会になりました。物資は過剰なほど豊富にあり、ほとんどの商店は愛想よく笑顔で応対してくれます。消費者が選択権を持って立場が強くなることで売り手の態度は大きく変わりました(それはストレスを伴うことでしょうが)。家電量販店の看板には即日配達の表示があり、宅配便は2時間ごとの配達時間を選ぶことができます(管理業務や無駄も増え、そこまでしなくてもと思いますが)。
生産物やサービスに対する消費者の要求水準は高くなる一方です。マスコミは常に消費者側に立ち、製品やサービスの質に厳しい姿勢を示します。販売競争とマスコミの姿勢が消費者側の要求を強め、その分、生産・サービス提供者側は負担が増してきました。
競争は経済を効率化し、消費者にとってよい結果をもたらしましたが、一方で、金よりも意地や誇りを優先するような者を排除し、売上げを優先するものが生き残るという状況を生み出します。売上げ優先の考え方は拝金主義につながり、他の考えの存在を難しくします。例えば視聴率が優先されると放送の使命が軽視されるように。
競争は生産・サービス提供者側に負担を与え、また社会に拝金主義の土壌を提供するという負の面をもつことに注意したいと思います。様々な利点を持つ競争ですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」と言えるのではないでしょうか。
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03年から07年かけて精神障害による労災支給件数は2.5倍になっており、生産者・サービス提供者の負担は現実の問題になっています(参考:勤労者受難時代)。消費者の多くは生産者・サービス提供者でもあります。消費者が多少不便になっても、生産・サービスに従事する人の負担軽減にもう少し配慮してもいいと思うのですが。・・・むろん江戸時代には戻れませんが。
後の大村益次郎、村田蔵六は長州の村医を捨て、宇和島藩に仕官することになるのですが、宇和島へ向かう途中の松山城下で、蘭法医の藤井道一の家に泊めてもらいます。そして藤井は宇和島まで道案内をすることになるのですが、さらに途中の大洲では医者の山本有仲が一行に加わるという話です(藤井道一の同行は記録に残されているそうです)。
同行する2人の医者は火急の用でもないのに仕事を数日間休むことになるのですが、現代の感覚からするといかにものんびりした話です。作者の脚色もあり、また当時とは社会構造が異なるので比較はあまり意味がありませんが、数日間、仕事を放り出すことができる余裕が事実なら羨ましくもあります。それは医師と患者の立場の強弱に由来することでもあるのでしょう。しかしながら週80時間などという苛酷な労働を強いられる現在の勤務医とは大違いです。
上は極端な例ですが戦後しばらくの間、物資が欠乏していた時期がありました。輸出が振るわないため外貨不足の状況が続き、輸入は自由にできませんでした。当時は「売ってやっている」というふてぶてしい態度の商店が珍しくなかったと記憶しています。また「気に入らない客には売らねぇ」という、金よりも意地や誇りを優先する頑固オヤジもいました。でもそんな商店やオヤジは遥か昔に滅びました。
現在は様変わりで、消費者から見ればありがたい社会になりました。物資は過剰なほど豊富にあり、ほとんどの商店は愛想よく笑顔で応対してくれます。消費者が選択権を持って立場が強くなることで売り手の態度は大きく変わりました(それはストレスを伴うことでしょうが)。家電量販店の看板には即日配達の表示があり、宅配便は2時間ごとの配達時間を選ぶことができます(管理業務や無駄も増え、そこまでしなくてもと思いますが)。
生産物やサービスに対する消費者の要求水準は高くなる一方です。マスコミは常に消費者側に立ち、製品やサービスの質に厳しい姿勢を示します。販売競争とマスコミの姿勢が消費者側の要求を強め、その分、生産・サービス提供者側は負担が増してきました。
競争は経済を効率化し、消費者にとってよい結果をもたらしましたが、一方で、金よりも意地や誇りを優先するような者を排除し、売上げを優先するものが生き残るという状況を生み出します。売上げ優先の考え方は拝金主義につながり、他の考えの存在を難しくします。例えば視聴率が優先されると放送の使命が軽視されるように。
競争は生産・サービス提供者側に負担を与え、また社会に拝金主義の土壌を提供するという負の面をもつことに注意したいと思います。様々な利点を持つ競争ですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」と言えるのではないでしょうか。
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03年から07年かけて精神障害による労災支給件数は2.5倍になっており、生産者・サービス提供者の負担は現実の問題になっています(参考:勤労者受難時代)。消費者の多くは生産者・サービス提供者でもあります。消費者が多少不便になっても、生産・サービスに従事する人の負担軽減にもう少し配慮してもいいと思うのですが。・・・むろん江戸時代には戻れませんが。
新聞だって例外でないですよねぇ
てか 新聞は自分達の談合売価やしつこい勧誘は知らぬふりします
商いは 結局なるべく上手く仕入れて 高く売るしかないから
まあ 極端ですが詐欺みたいなもんです
正直をトコトンやると商いにはならない
と、愚痴めいたことは置いておいて、私は、この競争から自らドロップアウトしようと考えています。患者さんには、私の方針で納得できなければ、他の医療機関にかかるようにと言うようにしています。徐々に、仕事をダウンサイズし、気持ちの通じる患者さんに医療を提供してゆくように・・・と「内心」考えています。
競争・効率化の果てに、さらなる診療報酬の抑制・・・もう十分だ、結構だという気持ちです。
世の中には、この新自由主義体制の下で、弾き出され仕事を得られず、大変な思いをされている方も多いのでしょうが・・・私の来年のモットーは、競争を拒絶し、ダウンサイズするということにしようと思っています。
病院勤務は体力的にもたないと、やむなくこの春に開業した親戚の者が、今度は管理業務の大変さに悩まされています。
ダウンサイズ宣言、いいですね。私は既に傍観者の立場ながら、お気持はよくわかります。このような宣言があちこちで起こると、社会の風向きが少しは変わるかもしれないと思います。
NHKの「医療再建」を貴ブログで知りました。「権力は腐敗する」という言葉はメディアが大好きですが、自らも腐敗することに気づく必要がありそうですね。