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砲艦外交は健在なり

2018-03-11 23:32:01 | マスメディア
 1853年-54年にかけて、米国のペリー提督は軍艦を率いて来日、艦隊を江戸湾に進入させ日本に開国を認めさせた。これは軍事的圧力を使って交渉を行う「砲艦外交」の有名な一例だが、砲艦外交は現在の世界でも重要な外交の要素である。しかし、この言葉はなぜか広辞苑(第6版)には載っていない。左派の岩波書店としてはこんな言葉や言葉が示す現実を消してしまいたいのではないかと勘繰りたくなる(大辞林には載っていた)。(*1)

 米朝の首脳会談が実施されることになったが、その背景には経済制裁とともに砲艦外交が大きな力になったと思われる。外交の要諦を表す漫画に、にこやかな顔の紳士が握手の右手を差し出しながら、左手には棍棒を持っている絵が使われることがある。砲艦外交を視覚的に表せばこうなるわけである。ただ現代では砲艦より空母がふさわしい。他国に圧力をかけるのに最も適した攻撃的戦力だからである。中国が高価な空母を作ろうとしているのはこんな意味もあるからだろう。

 逆にいうと、もし米の軍事的圧力がなければ北朝鮮は意志を変えず、首脳会談への可能性はなかっただろう。砲艦外交が功を奏し、平和的な解決に役立つことになるかもしれない(騙すのが得意技の国だけにどうなるかわからないが)。弱い軍事力しかもたない日本が同じことをやっても北朝鮮から嗤われるだけだろう。砲艦外交はけっして褒められたものではないが、現実には有効な手段として使われる以上、これから目をそらすことは誤った認識を招く恐れがある。高邁な理想や人権・人道などを何回言っても全く効果のない国もある。効くのは物理的な力だけである。

 むろん北朝鮮が砲艦外交をやるような可能性もあるし、そうなっては困る。今回は米国の圧倒的な軍事力がそれを防ぐことになりそうというわけである。ナチスドイツのように秩序の破壊者になりそうな国が強大な軍事力を持つことがもっとも恐ろしい。膨張政策を続ける中国は将来どうなるかわからないが、危険な国になる可能性を排除できない。

 強い軍事力の保持は侵略を抑止する効果だけでなく、強い外交力にもなる。あたりまえのことだが、今回の米朝の関係から得られる教訓である。長く平和を享受したいなら強力な軍事力をもつことが必要という考えが成り立つ。逆に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」、防衛を疎かにすれば、戦乱や侵略の憂き目に遭うこともある。

(*1)読者の方からご指摘をいただきました。今年発売の広辞苑第7版には載っていたそうです。私が調べたのは第6版でした。訂正いたします。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
広辞苑第7版には載っています (腹一杯)
2018-03-12 21:25:59
いつも更新ありがとうございます。
気になりまして調べました。確かに6版には載ってませんが、今年発売の7版にはありました。
ブログ主様のご意見に賛成です。戦力は必要と思います。
ただ前から北朝鮮はアメリカとの会談を望んでいたので、アメリカが会おうという気になったのは、北朝鮮が核開発をしているからか、と思います。
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Unknown (okada)
2018-03-13 10:48:27
ご指摘、ありがとうございます。手元にあるのは古いので、念のためネットでタダで使える広辞苑でも確認したのですが、これは旧版だったようです。やはりカネを出さないと新版は使えないようになってるみたいです。
戦力をこれほど軽視するのは日本だけでしょうね。戦力の意味をあえて曲解してるように見えます。
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