噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

鳩山政権の統治能力

2009-12-17 10:05:37 | Weblog
 我々はとんでもない政権を選択したのではないか、8月の選挙で民主党に票を入れた人ですら、そう思い始めているのではないでしょうか。統治能力への疑問は定着しつつあるようです。

 普天間飛行場移設問題を先送りした理由を鳩山首相は次のように説明しています。

 「日米の合意の重さ、一方で沖縄県民の強い思い。両方同時に考えたときに、今すぐに結論を出せば必ず壊れる」「私は結果を出して壊すなどという無責任なことはやりたくない」

 米国はもとより、これに納得する国民がいるのでしょうか。何が必ず壊れるのかを明示すべきであり、また結論を先延ばしにすれば展望が開けるのなら、その道筋を示すべきです。むしろ先送りして壊れそうになっているのは日米の信頼関係です。深読みすれば、結論を出して自らの連立政権が壊れるくらいなら日米関係が壊れた方がいいという意味にも受けとれます。これは国民が餓死しても体制の維持を優先するというどこかの国と通じるものがあります。

 上記の発言は「決定しない決定」の理由という重要なものであるにもかかわらず、意味がよくわかりません。会見に群がっていた優秀な記者の方々はこの発言に納得されたかもしれませんが、私にはわかりません。「何が壊れるのですか」くらいの質問をして、首相の意図を一般国民にもわかるように伝えるのがお仕事だと思うのですが。単に伝えるだけならマイクロフォンだけで十分です。

 鳩山政権は米国に対し信頼を失うような行動をとりながら同時に中国に接近していると、既に指摘されています。もしかすると日本外交は岐路に立っているのかもしれません。政治的に安定し、半世紀を超す関係を築いてきた米国と距離をとり、未知の要素が多く残る中国に接近するのは大きなリスクがあります。

 多くのメディアはこの問題を大きく取り上げています。産経や読売は当然というところですが、今回はNHKも事態を深刻なものと理解しているようで、大きく報道し、批判的な解説もしています。しかし朝日だけは異色です。

 「あらたにす」によると15日、日経と読売は朝夕刊ともトップで取り上げているのに対し、朝日は朝刊ではトップですが『普天間移設先「5月までに決定」』と誤った事実を伝え、夕刊では一面から消えています。また同日のテレ朝「報道ステーション」では野球の松井選手の話題の後、申し訳程度にごく短かく触れただけです。まるで知らせたくないような、驚くべき姿勢です。日米間の危機につながりかねない問題を伏せるのは、国民の認識を誤らせるものです。

 日本には非武装中立論に代表されるような空想論が根強く存在します。100年先の理想論としてはわかりますが、外交に対処していくには非現実的なものです。この空想論に汚染されているのは社民党と朝日新聞だと言われていますが、このところの動きは鳩山政権もかなり親和性をもっていることを示しています。

 日本は数十年前、生産力が10倍もある米国に戦争をしかけました。リアリズムに立脚せず、思想や精神論に影響された認識がいかに危険なものであるかは既に経験済みの筈です。主義や思想が現状認識を狂わせるという事実は一般化してよいと思います。

 哲学者田中美知太郎氏は「いわゆる平和憲法だけで平和が保障されるなら、ついでに台風の襲来も、憲法で禁止しておいた方がよかったかも知れない」と言ったそうですが、非現実的な認識を巧く皮肉っています。

 むろん、普天間問題は基本的な政策の結果などではなく、単に政権の統治能力の欠如の結果と見ることもできます。まあどちらにしても困ったものです。目先の人気取り以外には関心がないようなこの政権の統治能力が周知のものとなるのに、さほどの時間はかからないと思われます。


最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (フラット)
2009-12-17 22:54:05
これも外交に絡む話ですが、ワタシは習近平と陛下の「会見」の件がハラワタ煮え繰り返りました。
ワタシは陛下を国体とする戦前までの長きにわたる常識を受け入れています。しかし今回の会見についてはそんな見識などとは関係なしに広く批判の対象とされているようです。そうした意味では逆説的ではありますがちょっと胸がすく思いがしました。

いやいや、そーゆーことではなくて、与党として政府としてのあるべき姿、一貫した思想、理念を示せね烏合の衆とこれを実質的に率いている幹事長。しかも親中派に大半を占められた左翼政党だということは今回の件でも明らかです。
来年の参院選では自民党にはイデオロギーを全面に出して、改憲など結党当初の理念に立ち返って闘って欲しいですね。そしたら身体があいてたらボランティアしてもいいくらい応援してやる!
例え地元候補者がどんな馬鹿でも。


と、いうくらい失望しました。ある程度は予想していましたがこんなに酷いとは……とにかく、まずは過去の自身の発言に責任を持って秘書の連帯責任で鳩山首相には議員辞職してもらいましょう。
そうでなければ大人に疑念を抱くひねたガキ供を大量生産することになるでしょう。
若者が「なってない」のは大人のせいです。
Unknown (銘無し)
2009-12-18 09:48:59
民主党にはたいした期待をしていなかったのですが、これ程展望を欠いているとは想像できませんでした。
連立すれば、社民党が普天間問題に口を出すことは分かりきっていたので、何がしかの打開案があるのかと思っていました。
マニフェストで謳っていた諸々も、実現の為の戦略が碌に無いようです。無駄だと言っていたものも、十分な調査の上で攻撃していたのではなかったかに見えます。
結局は、旧社会党のように自民党に対抗することだけが存在意義なのかもしれません。(小泉政権になる前はもう少しまともな政党だったと思いますが)
それとも、民主党単独政権だったらもっとマシだったのでしょうか。
退場する前に、せめて溜まった膿を吐き出させることを期待したいのですが、こちらも望み薄な気がします。
自民党以外に政権担当能力が無いと皆を絶望させたとしたら、民主党の罪は計り知れません。
Unknown (okada)
2009-12-18 17:31:25
法的な問題は知りませんが、天皇を外交の取引材料に使う、それも強引な幹事長のやり方には良い気持ちはしません。
自民に戻る人が増えてほしいです。

こんなに早く、ここまで民主党が醜態を晒すとは私にも少し意外でした。首相はむろんのこと、閣僚にもパッとした人は見あたりませんね。素人臭さが目立ちます。
財政などに関する調査・計画立案能力、統率力、方向性の提示、すべて落第点です。小沢幹事長の権力集中政策も不気味です。

私としては1日も早く政権から降りてもらいたいと思っています。巨額の国債残高、CO2 25%減などの重たい置き土産がこれ以上大きくならないうちに。

コメントを投稿