噛みつき評論 ブログ版

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英のEU離脱と政治的混迷、わけがわからん

2019-03-24 21:13:08 | マスメディア
 ホンダが英国スウィンドンからの撤退を発表し、現地では数千人の失業が予想されるとして失望が広がっているという。しかし、2016年6月の国民投票で、スウィンドンは54.3%がEU離脱に賛成票を投じたそうである。離脱に賛成した人々はそれが失業を招くことになるとは想像しなかったのだろう。国民投票実施の時、主な関心は移民問題などにあり、複雑な経済問題は選択の中心的な課題から外れていたと思われる。国民の選択はわかりやすい問題を中心に行われ、難しい問題は避けられるという傾向を持つと考えてよい。これは国民投票が国民の意志を決める最終的な手段であっても、その判断能力の限界を理解しておく必要があることを示す。理解の難しい問題への対処は直接民主制の弱点である。その弱点を補うと期待されるのはマスメディアであるが、これがさらに信用できないことが多い。

 もうひとつの問題は再度の国民投票に対してメイ首相が否定的であることだ。16年の国民投票からもうすぐ3年になり、離脱の問題点は徐々に明らかになってきた。前回の投票でも僅差であったから今、国民投票をやり直せば、離脱中止が多数になる可能性が高いと思われる。投票のやり直しを求めるデモは100万人にもなったという。現在の国民の意志を重視するならば再投票が合理的である。しかしこれは前回の投票の決定を否定することになるので、国民投票という権威、つまり法制度の権威を低下させる恐れがある。

 国民の意志か、それとも法の権威か、どちらを優先すべきは一般論としては判断できない問題である。国民の意志を重く見るのは実質を重視する考え方であり、法の権威を重視するのは形式を重く見る考え方と言える。実質重視派と形式重視派である。どちらの傾向が強いかは人によってかなり明瞭に決まっているように感じる。生来の性格にもよるし、後天的な環境にもよるだろう。また職業的な影響もある。法律家や規則の運用を職業とするものにとって形式は大切である。法や規則が軽視されてはメシが食えなくなる。

 しかしそれらの事情を考慮しても、今回の問題で優先すべきは現在の国民の意志、つまり再投票であろう。再投票は前回結果の撤回ではなく、やり直しに過ぎない。離脱は極めて重要な国家的問題であるし、前回の投票結果は現在の国民の意志を反映していない可能性が大きいからである。もし再投票をせず、離脱を決定すれば、現在の国民の意志に反することになりかねない。これは民主主義体制にとって是非とも避けるべきことだ。最も重要な原則を否定することになるからである。むろん多数が正しいとは限らないが、それは別の問題である。

 残念なことは、このような視点から英国の問題を捉えるメディアがあまり見当たらないことである。この問題は離脱の可否だけでなく、政治体制やその運用に関する重大な問題を含んでいるにもかかわらず、である。長い歴史を持つ、民主政治の先進国で起きた例だけに、その行方に興味が尽きない。 
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1 コメント

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Unknown (山の猫 (忍者姫))
2019-04-23 16:49:09
岡田さん、お久しぶりです。忍者ということばが流行りつつあるので、山の猫にHNを変更いたしました^^

岡田さんのブログ更新を楽しみに、更新の度に読ませていただいております^^コメントを書きかけては、毎度長くなりすぎてしまい、こりゃいかんと消してしまっておりました。お許しください(=^・^=)
EU離脱に関しては、日本にも影響する話ですし私も注目しております。イギリス欧州連合離脱の是非を問う国民投票については、沖縄の普天間基地の辺野古移設を問う県民投票と少し重なって見えました。沖縄の場合、国民投票とはまた違いますけれども。(個人の投票の結果という意味で)国政による利益と個人の利益とが一致すれば良いのですが、そうでない場合、国のトップにいる方々が国民の利益となる結果を出さなければ、その先の未来を生きる人々に影響が及ぶのではないかと危惧の念を抱いております。単に意見を二分するだけでは住みにくい地域になるばかりかと思うことでした。
岡田さんがおっしゃるとおり「極めて重要な国家的問題」ですし、民主主義を謳う国の民主主義が文字通りであることを願うばかりです。
国民投票をするのであれば全ての国民が投票しなければ国民の総意とは言えないのかもしれないと思うことでした。イギリスの政治家の手のひら返しにはいささか呆れました(笑)
5月1日から元号が変わりますが、岡田さんの噛みつき評論は引き続き楽しみにしております。寒暖の差が激しい日々が続きますし、ご自愛ください。
山の猫より(=^・^=)/

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