噛みつき評論 ブログ版

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検察の暴走?

2019-04-07 23:59:23 | マスメディア
 メディアが検察から漏れてくる情報ばかり流すので、ゴーン氏が強欲な悪者だという印象をもってしまいそうだが、この事件は日産の幹部がゴーン氏の失脚を図り、検察がそれに利用されたというのが実像であろう。日産にも罪があるからこそ、司法取引が使われたというわけである。早い話がよくある仲間割れである。ゴーン氏の行為の多くは日産も知っていたことであり、以前は認めていた可能性が高い。その中で違法性のあるものを細かく調べ検察に告げ口したわけである。韓国の朴槿恵前大統領の告げ口外交を思い出すが、あまりスマートなものではない。

 保釈中のゴーン氏がまた逮捕されたが、これは異例のことだという。確かに、目まぐるしく変わる司法側の態度は信頼できないものと映る。また保釈時に収めた10億円の保釈金は拘留されても返されず、再度の保釈時には新たに保釈金が必要となるという。このような制度は、私には理解しかねる。少なくとも現在の10億円は意味がなくなっている。

 今回の逮捕はゴーン氏の口封じだとか、例の人質司法だとか言われているが、国際的な非難を予想しながらの逮捕には相応の理由があるのだろう。一度走り出すと止められない検察の組織としての性格かもしれないし、ここまでやらないと有罪に持っていくのが難しい状況に追い詰められているのかもしれない。

 現在、出てくる情報のほとんどは検察側からのものであり、それらはゴーン氏が有罪であるとの色付けがなされていると考えてもよい。本当のところはわからないが、弘中弁護士が弁護を引き受けた裏にはある程度の勝算があるとの判断があったのかもしれない。弘中弁護士は10年前の村木厚子事件の弁護で無罪を勝ち取った人物である。村木事件では大阪地検特捜部は村木氏を164日間も拘束し、フロッピーディスクの日付を改ざんしてまで彼女を犯人に仕立て上げようとしたが、それがバレ、担当の検事ら3名が逮捕されるという未曽有の事態になり、検察の権威は失墜した。それにしても無実の人間を有罪に仕立てようとしたまことにひどい事件であった。検察は容疑者を長期間拘置して、予定の筋書き通り進めようとしたのだろうが、村木氏本人と弁護士が検察より有能であったのを見落としたのだろう。ゴーン氏もしかり、そして弁護士は同一人物である。

 違法性が疑われているものの、もとは一民間企業内の報酬の形の問題であり、オーナー社長ならありふれたことであろう。特捜部が威信をかけて手掛けるような事件ではないと思う。特捜部の本来の仕事は、汚職で政策を曲げられたなど、公益に影響を与えるものであるべきである。それに比べて卑小な事件を手掛けたばかりに、人質司法など、日本の司法の暗部を世界にさらしたのであれば、まさしく藪蛇である。

 推定無罪は建前だとしても、容疑が確定しない者に対してこのようなやり方は人権侵害である。いくらかの不便はあったとしても、釈放したままで捜査は続けるべきである。組織で動くものは責任が分散されるせいか、無責任な行動をとることが多い。またゴーン氏が無罪になったとしても検察は責任を取らなくてもよい。疑いの段階で、ある程度の拘束は止むを得ないが、100日を超えるような拘留という人権侵害の後に無罪になった場合、咎めなしでは、納得できない。そのために逮捕から延長を含めて23日間という拘留期間の上限を定めているのであって、逮捕を繰り返すことで、その制限を事実上無視することは、実質的な違法行為であるともいえる。他の人権問題には敏感に反応するメディアや日弁連もなぜかこの問題にはあまり熱心ではない。今回は海外に知られることで海外から強い批判を浴びている。日本の常識は海外の非常識なのである。よりよい司法制度のために、検察の惨めな敗北とその結果による「強い外圧」を期待する。