噛みつき評論 ブログ版

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政治のプロ

2013-07-15 10:18:14 | マスメディア
「『憲法を変えると戦争を始める』とキャッキャと言う。まだ生きているのが不思議なくらいの化石みたいな人だ」「バカみたいな社会党の生き残り女」

 言うまでもなく、これは石原慎太郎氏が福島瑞穂氏を評した言葉です。言いたい放題の感がありますが、面白くて、しかも当たっていることに感心します(他の政治家がこんな発言をすればひどいバッシングを受けるでしょうが、石原氏は特別のようです)。なかでも「まだ生きているのが不思議なくらい」というところに着目したいと思います。

 社民党は未だに非武装中立を目指すなどその主張の非現実性によって時代の流れから遠く取り残された観があります。政党支持率が1%を割り込んだことはその反映と思われます。

 しかし、もしかしたら福島瑞穂氏らはその主張が今の時代には通用する代物であるとは思っていないのではないでしょうか。よほどの石頭でない限り、それが絵空事にすぎないことはちょっと考えればわかります。まあ共産党も似たようなものでしょう。

 だとすれば、頑(かたく)なに既存の路線を踏襲するのは、1%足らずの「頭の硬い固定客」を逃がさないためであろうと推定できます。急に路線を変えて失敗するよりも、じり貧ながらも確実に延命できる道を選んだのでしょう。これは政党というよりもうビジネスです。建前は理想を追求する政党、本音は商売、つまり彼らは政治のプロ、政治業者と呼んでもよいでしょう。

 メディアの世界にも似たようなことがあります。右翼雑誌の編集者が右翼の信奉者とは限りません。編集者は雑誌が売れればよく、それには右翼の固定読者を喜ばせればいいわけです。左翼系の新聞・雑誌も同じで、中には頭が赤く染まった人もいるでしょうけど、大事なことは左翼の読者を喜ばせ、販売を伸ばすことです。もし右翼に同調するような記事を載せれば客離れを起こすでしょう。

 その結果、右翼の人は右翼系の新聞・雑誌を好んで読み、さらに「純化」されます。左翼もまた同じです。その結果、両者の距離は縮まらず「不毛の対立」が続きます。しかし左右のメディアにとっては安定した収益環境が維持できるというわけです。

 収益を重視する姿勢は販売部数にも表れます。朝日新聞は800万部、読売新聞は1000万部という部数を誇りますが、これは五十万部~百数十万部とされる英米仏の一流紙に比べると異常に大きい数です。日本の新聞がいかに商売優先の姿勢を貫いてきたか、その努力の結果とも見ることができましょう。

 商売優先の姿勢は既存の読者への迎合を重視することにもなり、保守的な体質が継続することを意味します。新聞は宅配制度や寡占体制、新聞特殊指定による定価販売に守られて、安定した繁栄を手に入れたことで、さらに保守傾向が強まります。そのため左翼・右翼の色分けも固定されます。まさに共存共栄、居心地のよい体制です。

 政治の世界では対立ばかりが目立ち、現実的な合意を目指すような意味のある議論が少ないように感じます。政治の貧困が言われますが、その理由のひとつでしょう。大雑把な推論であることは承知の上ですが、その背景にメディアの収益優先の営業政策があるように思います。