噛みつき評論 ブログ版

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子供まで政治利用する神経

2011-09-22 10:45:27 | マスメディア
『昨日、東京での「さようなら原発」の集会と行進には、大江健三郎さんらの呼びかけで大勢が参加した。壇上から作家の落合恵子さんが訴えたように、平仮名しか読めぬ子が「ほうしゃのうこないで」とおびえる現実、捨て置けない』

 これは21日の天声人語の一節であります。幼児が「ほうしゃのうこないで」とおびえるのは、大人がそのように教えるからで、幼児が見えない放射線を判断できるわけがありません。オームに「ほうしゃのうこないで」と教え、オームさんも言っているよ、というのと同じです。

 わけのわからない子供の投書をとりあげ、自社の主張に利用するというのは朝日がよく使う手口です。今回、反原発の集会から、特にこの部分を取り上げたのは子供を利用するクセがついているためでしょう。けれど、この手口はいささか卑怯な感じがします。

 情緒に訴えるやり方は、理をもって考えることが嫌いな人間を説得するには有効なのかもしれません。しかし原発をどうするかという問題は情緒で判断すべきだとは思えません。逆に子供を利用するような反対運動はその誠実さが疑われ、主張まで胡散臭いものに見えてしまいます。

 原発の廃止を社会に訴える以上、原発の知識はもちろん、温暖化とCO2問題、電力需給や再生可能エネルギーの見通しなど、広範囲の知識を持った上での総合的判断でなければ無責任であります。この集会の主宰者格である大江健三郎氏や落合恵子氏らは無論それらの知識を十分お持ちの上、綿密な検討を重ねられたことと思いますが、そうならば専門外のことだけに、実に驚嘆すべきことです。

 少し前、大江氏は「9条の会」の発起人としてご活躍でしたが、きっとそのときも国際政治や軍事問題について十分な見識をお持ちになっていたのでしょう。ただ残念なことに北朝鮮問題や尖閣問題の後、なりをひそめているように見えます。

 憲法・国際政治や原発・経済という専門外の分野で、ノーベル賞作家という知名度を使った政治活動は見事という他ありません。ただ、そのご主張がいつも左翼政党と重なるのがいささか不思議ですが。

 旧ソ連における共産主義国家は数十年間続いたのち消滅しましたが、その間、膨大な犠牲を出しました。しかしこの世紀の実験を主導したのは平等を願う良心的な人々です(むろん不純な動機の人も多数混じっていましたが)。

 知名度が高く影響力の大きい人間が国の方向を左右するような大きな問題に対して意見を述べ、影響力を行使することは重大な意味をもちます。影響力の大きさに見合うだけの十分な裏づけと、慎重さが必要でしょう。