噛みつき評論 ブログ版

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40日の裁判員裁判は詐欺同然

2010-11-04 10:13:54 | マスメディア
 最高裁のホームページには裁判員裁判の日程について現在も次のような説明があります。
「約7割の事件が3日以内で終わると見込まれています。事件によっては,もう少し時間のかかるものもあります(約2割の事件が5日以内,約1割の事件が5日超)」・・・同HPの裁判員制度Q&Aより

 この説明を読んで40日もの長期裁判があるかも知れないと思う方は極めて少数ではないでしょうか。大多数の人は40日あるいはそれ以上の日程の裁判があることを意識せずに裁判員制度を受け入れたのだと思われます。はじめからこんな長期の裁判があることが明示されていれば裁判員制度への賛否は大きく異なっていたでしょう。ところが鹿児島の高齢夫婦殺人事件ではこの40日が実現することになりました。

 悪質な勧誘方法がしばしば問題になってきた証券会社の営業ですら最近は金融商品のリスク開示が行われるようになりました。まともな証券会社なら、少なくとも文書の上では発行体リスク、為替リスクなどがきちんと並んでいます(たいていは小さな字ですが)。

 最高裁の説明は裁判員の時間的負担がさほど大きくないという印象を与えます。「1割の事件が5日超」という文言から40日を想像することはとても無理です。より複雑な事件ならは100日や200日もないとは言えません。例えば、1パーセントの事件は100日以上になります、といった説明をするのが信用を保つやり方です。

 たしかに日程の上限が示されていないので、算数の問題としてはたとえ40日でも200日でも最高裁はウソを言ったことにはなりません。しかし社会通念上(これは判決などにしばしば使われる言葉です)、つまり実質的には国民の大部分を騙したことになります。そしてこれは裁判員の負担という裁判員制度の根幹に関わる大事な問題です。

 これはほとんど詐欺だと言わざるを得ません。最高裁の名に恥じず、怪しげな三流会社の広告も顔負けの「最高」の出来栄えであります。信用を最大限重視しなければならない最高裁判所の行為とは信じられません。詐欺師などを裁くことが仕事の裁判所が信用できないなら、いったい何を信用すればよいのかということになります。最高裁の信用度が鳩山元首相のお言葉並みでは困るわけであります。

 さらに別の問題も生じます。鹿児島の高齢夫婦殺人事件では裁判員候補の約8割が辞退したとされています。長期の裁判に参加できるのは暇が十分ある人に限られ、裁判員の構成に無視できない偏りが生じて、裁判の機能そのものが影響を受ける可能性があることです。これについては次の機会に。