噛みつき評論 ブログ版

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朝日新聞、ご都合主義の責任逃れの変身術

2009-04-20 08:54:54 | Weblog
 『賞味期限切れだって食べられる』-4月18日の朝日新聞に載った記事であります。1ページの半分以上を使い、賞味期限切れ食品を「モッタイナイ商品」と称して市価の半値程度で販売しているスーパーマーケットの経営者の話を載せています。一部の要約を紹介します。

 「7年ほど前、大手冷凍食品メーカーの冷凍トラックが店にきて、タダでいいから引き取ってくれないかと。4年を過ぎているのもありましたが、引き取らなければ捨てるしかない、というので、試しに調理して食べてみたらおいしかったので、期限切れと表示して市価の1割で売ったところトラックいっぱいの商品が一日半で売れました」

 「表示が義務化される前の時代は、私達は自分の目と鼻と舌で食べても大丈夫かということを判断していました。きちんと殺菌された上で缶詰や真空パック詰めされた食品が多少時間が経ったからと言ってすぐに食べられなくなるとは考えられません。
 賞味期限というのは元々、おいしく食べられる期限の目安として表示したもので、それを過ぎると悪くなって食べられなくなるというものではない筈ないですね。
 日本では毎日、賞味期限切れの食品が大量に廃棄されているという話を聞くと、本当にもったいないなあと思います。
 おなかをこわしたという苦情は一度もありません。ほとんどの食品は事前に試食して出しています」

 保健所は2回来たそうですが、賞味期限切れと表示していれば法的な問題ないとのことです。前の晩に店頭に出すと翌日の午前中に9割程度は売れるそうで、購買者に支持されていることがうかがえます。

 最後に取材を担当した記者がこのスーパーで期限を3ヶ月過ぎた真空パック詰めの煮豆を買って、食べてみたら、味も匂いも問題なく子供たちも食べたがおなかをこわすことはなかったと述べています。

 この記事は賞味期限切れ食品の販売を好意的に紹介しています。経営者のオピニオンという形をとっていますが新聞社の意向を反映するものと見てよいでしょう。内容も妥当なもので、我々が持ち続けてきた健全な常識に沿うものです。

 しかしただひとつ違和感を覚えるのはこの記事が朝日新聞によって書かれたことです。2年余り前、朝日は他のメディアとともに食品の期限問題で大騒ぎし、いつもの「全員参加」で不二家などを激しくバッシングした「経歴」をもっているからです(参考 不二家への理不尽なバッシング)。

 当時、朝日は食品の賞味・消費期限問題(*1)で食品企業をバッシングし、不二家などを経営危機にまで追いやりました。ここには食品の期限超過は危険という前提があった筈です。少々期限が切れていても大丈夫という認識では激しいバッシングが成り立たないからです。

 その同じ新聞社が「賞味期限切れだって食べられる」を載せるのでは、「あのバッシングはなんだったの?」と訊きたくなります。新聞社が「多様な意見」を持つことはよいでしょう。しかし「多様な認識」は困ります。その時々の都合に応じてころころ「変身」するようでは読者は何を信じてよいか、わからなくなります。

 一連のバッシング事件は途中から、誰かを血祭りにあげるということが主な目的になってしまい、期限問題はその口実に使われたに過ぎないという見方すらできます。その後の吉兆事件でも朝日は数日にわたって一面トップで報道しました。扱いの大きさは常軌を逸したものでした。

 読者の興味を惹くことを最優先するあまり、食品の期限に関する理解もないままの報道は、読者にその危険を過大に伝えることになりました。その反省としてこの記事を書くのはよいのですが、第三者のオピニオンという形で表明するのはいささか責任逃れの感があります。

(*1)賞味期限、消費期限は区別されるのですが、バッシング当時はかなり曖昧に使われていました。消費期限は5日以内に急に品質が悪くなる食品に適用されます。