アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

200体?20体?

2012-11-28 20:39:34 | インポート
手元に今日(28日)の北海道新聞、朝日、毎日の各紙面があります。
昨日(27日)の午後4時に北大が「記者懇談会」を開き、公開した内容が記事になっています。
朝日の記事を紹介します。以下、引用。

アイヌ遺骨問題 20体分を個人特定 北大来春までに報告書
(朝日新聞 2012年11月28日) 
北海道大学が昭和初期から戦後まで、研究目的としてアイヌ民族の墓地から遺骨を掘り起こしていた問題で、北大は27日、保菅する遺骨約1千体のうち約20体分について個人の特定ができたと発表した。今後、親族らに返還する考えで、具体的な返還先や返還方法について検討を進める。残る遺骨も特定作業を続ける。
遺骨をめぐっては、9月にアイヌ民族の子孫3人が返還を求めて札幌地裁に訴えを起こし、30日に第1回口頭弁論が予定されている。三上隆副学長は「遺骨を受けるべき人であれば返還したい。裁判所の判断に従う」と話した。
三上副学長と玉木長良医学部長によると、遺骨収集の経緯を含めて来年3月までに報告書をまとめて公表する予定だ。
北大は遺骨の取り扱いについて、1982年に北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)の要請に応じる形で納骨堂を建設。35体分を協会側に返還したが、その後は研究者不在で、そのまま保管されていたという。遺骨掘り起こしについては、「(遺族から)何らかの承諾を得たと考えられる」とした。
2008年にアイヌ民族を先住民族とする決議が衆参両院で議決されたことを受け、北大は2年前から、保管する遺骨と副葬品の整理を進めている。三上副学長は、「返還可能な状況を整えることを目的にしている」と話した。
 遺骨約1千体のうち、約200体の頭骨と四肢骨が一致し、約20体が残存資料などから個人が特定されたという。副葬品は刀や漆器、首飾りなど80種類あり、総数は数百点から数千点に上るという。



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記事内容からいくつもの疑問が沸いてきます。
盗掘して持ち去った先祖の遺骨を返してほしいと遺族が訴えているにも関わらず、まるっきり無視ししてきた大学側が、「返還可能な状況を整える」ために、「2年前から」、「保管する遺骨と副葬品の整理を進めている」と、よく言えたものです。そうであるならなぜ返還要求をしている方たちにその説明をしなかったのでしょうか。
また、遺骨掘り起こしについて、「(遺族から)何らかの承諾を得たと考えられる」と、「盗掘」を否定するニュアンスの発言をしていますが、それらを裏づける資料や根拠があるのでしょうか。「考えられる」ではすまされないことです。
2年の年月をかけて、1000体弱の遺骨のうち、「約200体の頭骨と四肢骨が一致し」た、ということは、うわさでは聞いていましたが、頭骨と四肢骨をバラバラに「保管」していたということなのか? 
そうであるなら保管・管理責任問題も発生するのでは? 当時の研究に必要な頭骨のみを別にし、あとはばらばらに箱に放り込んだということなのか?(まさに研究「材料」としか考えていない)。
200体、20体ではなく、すべてを丁重にお預かりしていなければならないはずです。
それをどのように一致させたのか?これも噂の通り、やはりDNA鑑定をしたのか? 
(そうであるなら極めて個人情報であるDNA鑑定の認可は遺族にきちんととったのか?少なくとも返還要求している遺族に説明と同意が必要ではないか)。
さらにその頭骨と四肢骨が一致した200体の内、「約20体が残存資料などから個人が特定された」というがその「残存資料」とは何か? 
今まで開示文書研究会の開示請求によってすでに開示された情報の中にそれがあるのか? 
「副葬品は刀や漆器、首飾りなど80種類あり、総数は数百点から数千点に上るという」というのも、今まで公開されていた資料以外の、「副葬品」がそんなに多数点でて来たということか? それはどこから出てきたのか? 
それらの「副葬品」資料をなぜ北大は今まで開示してこなかったのか?

確か北大は国から大学内に保管されているアイヌ人骨を調査し報告するように要請を受けています。その締切は朝日新聞記事(2011/11/15)では今年の12月。その報告も待つばかりですが、北大内の遺骨収集の経緯のまとめもどのように仕上がるのか。

最後にもう一つ。「今後、親族らに返還する考えで、具体的な返還先や返還方法について検討を進める」とありますが、過去の「遺骨返還」は、直接にご遺族に訪ねず、任意団体のウタリ協会に訪ねただけです(しかもその組織のひとり一人に確認を得なかったケースもあるのではと危惧します)。そして、返還に伴う補償もなく、ただ返すよというだけだったと聞きます。ですから、20体は遺族が認定されているのですから速やかに遺族に連絡し、遺骨収集(承諾済?盗掘?)や保管の経緯、そして、返還に伴う補償を提示するべきです。

ところで、北大から開示された2種類のアイヌ民族人骨発掘台帳を精査して遺骨数の違いが見つかりましたが、遺骨数がそうとう膨れ上がるのでは? 
これらを裁判の中でも明らかにしていく必要があるでしょう。いよいよ第1回口頭弁論は明後日。
みなさんの傍聴をお願いします。

アイヌ遺骨返還訴訟の第一回口頭弁論
11月30日(金)1:30から7階701号室にて(城野口ユリさんの意見陳述)
2時10分頃より3時頃まで、弁護士会館5階Aの部屋(北1条西10丁目)にて、裁判の報告会
ぜひ傍聴をお願いします。

参考・さまよえる遺骨たちブログ http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/


留萌は連日雪です。


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