アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「アイヌ政策のあり方と国民的理解」報告書

2011-09-20 10:52:08 | インポート
日本学術会議の地域研究委員会人類学分科会というところが、9月15日付で、「アイヌ政策のあり方と国民的理解」という報告を出したとUさんから案内を頂きました。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-h133-1.pdf

内容は「アイヌの人々の抱えている問題」(「アイヌ民族」とは言わない意図があるのか?)の歴史的背景を解説し、国連先住民族宣言、日本政府のアイヌを先住民族と認める決議、有識者懇談会の報告を紹介。そして、その流れにそった提言をしています。が、歴史的なふり返りはほぼ有識者懇の報告以上のものではありませんでした。同会議のWEBページを見ると会自体が政府所轄の下で設立されていますからしかたないのでしょう。

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。 http://www.scj.go.jp/ja/scj/index.html

つまり、有識者懇の報告でも批判されていた明治以降の国の政策の反省がなく今後に活かせていない内容となっています。

この報告書のアイヌ遺骨研究問題の部分を引用します。
「またアイヌの遺骨が研究目的で収集されたが、中には無断で持ち出されたものもある。現在、大学などに保管されているそれらの遺骨の適正な保管や返還を求める声がある。」(要旨の2)

上に加えて、最後の「新たな政策展開に向けて」部分をまとめると、「現在アイヌ民族や文化の研究者は数が少な」いことがアイヌ文化の知識普及にも障碍となっているのだ。だから、「これまで行われてきた人類学・文化人類学、社会学、文学、歴史学、言語学、法律学、音楽学等の分野でのアイヌ研究もさらに振興される必要があり、またその他の分野でもアイヌ研究への視角をもつべきである」と、アイヌ研究の推進を述べています。
さらに、「アイヌの人々の中からアイヌ研究者を育てることは急務となっている」とも加えられます。(6新たな政策展開に向けて (3)アイヌ文化研究の促進と展示 より)

はじめの「要旨」の「2現状及び問題点」で、アイヌの人骨の収集の問題や適正な保管・返還の問題を挙げながら、何の反省もなく、研究の推進ばかりが提案されています。さも、アイヌ研究が停滞しているがゆえに問題なのだから、研究推進を進めるべきだという考えに納得がいきません。日本の人類学がどれほどひどいことをしたかは植木哲也さん著『学問の暴力』に詳しく書かれていますが、反省と共に徹底的な調査と謝罪、返還の努力をするべきでしょう。


海岸を散歩中のキツネ


もうひとつ気になることがあります。「要旨」のまとめの部分を引用します。

日本の近代化の過程において不利益を蒙ったアイヌの人々への対策や保障は本来全国民の理解のもとに進められる必要がある。一層の国民的理解に取り組むために、地域研究委員会人類学分科会では、平成23 年3月6 日に公開シンポジウム「今、アイヌであること―共に生きる政策をめざして」を実施した。このシンポジウムには3名のアイヌの人々が参加して9月号の「学術の動向」にも寄稿している。さらに人類学分科会としてもこの『報告』を提出することとなった。

上記に言及されている法政大学を会場に行われた公開シンポジウム「今、アイヌであること―共に生きるための政策をめざして」の内容や講演要旨は以下にUPされています。http://race.zinbun.kyoto-u.ac.jp/event_report/20110306.html

このシンポジウムの中で、大きなスクリーンにアイヌの人骨の写真が映し出され、「このアイヌは病気だった、そのせいで脊椎が固まってしまったんだ」と解説する場面があったとのこと。参加されていたアイヌ民族のPさんは会場で思わず「泥棒、ちゃんとアイヌのコタンにそれを返せ」と叫んだとご本人から伺いました。このシンポのどの講演か、なぜアイヌ人骨が映し出されて個人情報を差別的に公表したのか、はなはだ疑問です。その後、このことが問題になっていないことも・・・。


アイヌ解放同盟の結城庄司さんは1972年の第26回日本人類学民族学学会連合会の演壇に実力で上り、公開質問状を読み上げてアイヌを「研究と解剖の客体」と位置付けてきたことを非難したことは知られています。これをきっかけにアイヌ関連の研究家が減ったというようなことをどこかで聞いたことがあります。その時の手書きの質問状のコピーが手元にあります。後日紹介しましょう。


琉球時報(9月19日)に霧社蜂起のニュースが出ていました。「暴動」表記は気になりますが。
前篇「日の丸」と後編「虹の橋」の2部からなる5時間の超大作なのですね。
セジャック民族の言葉で「セデックバレ」は「真の人」とのこと。セデックは人間という意味でしょうか。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-181807-storytopic-1.html


昨日の夕方の暑寒別岳


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