アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「平取のアイヌ民族とアイヌ研究の学者」

2017-04-20 06:00:31 | 日記

「わたしはこのころ、アイヌ研究の学者を心から憎いと思っていました。」

故萱野茂さんの著書『アイヌの碑』(1989年 朝日新聞社)の一節です。

萱野さんが山の仕事から帰ってくる度に、家の中にあったアイヌ民具が次々と姿を消していた。それは、研究者たちが持って行ってしまうから。以前にご本人から直接に伺ったことがありましたが、学者たちは空のリュックサックでやってきて、帰りには中身をいっぱいにして帰って行ったとのこと。アイヌは自分の持ち物を褒められた際に、「これはここにいるのが飽きたと言っているから、持っていっていい」と言うんだ、それをいいことに学者たちは持ち帰り、研究材料とし、果ては、博物館などに高額で売るんだ、と。

「北大のK教授などにはずいぶんかみついた」とある“K教授”とは誰だったのでしょう?その人物は萱野茂さんの留守を見計らってやってきたようです。

著書には、「村の民具を持ち去る。神聖な墓を暴いて先祖の骨を持ち去る。研究と称して、村人の血液を採り、毛深い様子を調べるために、腕をまくり、首筋から襟をめくって背中をのぞいて見る・・・」とも。さらに、写真撮影もされたと。

このように、二風谷では研究の名のもとに民具の横取り、血液採取、身体検査、写真撮影、遺骨の盗掘が行われてきたのです。その「研究材料」はどのように扱われたかを当事者は了解されたのでしょうか?そして家族はご存知なのでしょうか?

 

前回、報告しましたが、さる、3月18日に、平取町・二風谷生活館にて「平取「アイヌ遺骨」を考える会」(木村二三夫・井澤敏朗共同代表)主催で『先人たちの遺骨をふるさとの地・平取へ』学習会がありました。

(この講演録はブログさまよえる遺骨たちに掲載されています)

参加者110名と盛会でしたが、4月16日に開かれた平取アイヌ協会定期総会でも遺骨問題は審議され、同町より持ち出されたアイヌ遺骨は「地元コタンに帰ることこそが『尊厳ある慰霊』だ」として、大学に返還を求めることを決めたことが、北海道新聞の地方版で報じられました。

 

アイヌ遺骨返還へ質問状

北海道新聞 地方(苫小牧・日高)版 2017年4月18日 朝刊

平取アイヌ協会は、町内から持ち出され大学に研究目的で保管されているアイヌ民族の遺骨について「地元コタンに帰ることこそが『尊厳ある慰霊』だ」として、大学に地元への返還、再埋葬を求めることを目指し、同協会内で検討を始めることを決めた。政府は地域への返還に応じる方針を打ち出しており、同協会は近く北大などに対して質問状を送る方向だ。

********引用、以上。

紙面では、木村英彦平取アイヌ協会会長が「仮に遺骨が地域に返還されても、大学や行政の責任が消えるわけではない。将来にわたり慰霊できる環境をつくりたい」と語られたことも記されていました。平取からは北大17体、札医大10体の計27体の遺骨が持ちさられています。発掘経緯が不明な遺骨の多い北大に①遺骨返還や慰霊施設整備の費用負担 ②返還後に地元で行う先祖供養への出席 について考えをただすべく質問状を送ることを決議したようです。

 

故萱野茂さんの著書『イヨマンテの花矢—続・アイヌの碑』(朝日新聞2005)の一節に、茂さんの祖母てかってさんが自分の大切にしていた宝物であるタマサイ(首飾り)を亡くなった知人の出棺まで貸していたところ、いざ出棺の時に遺体から取り外すのを忘れ、埋葬してしまった時の話が記されています。

「まもなく気づいたのですが、どうにもなりません。埋葬した遺体を掘り起こすことは、アイヌとしては絶対にできないことだからです。祖母は何日も何日も泣いて悲しんでいましたが、遺体を掘れば祟りがあると信じ切っているアイヌですから、泣き寝入りで終わるほかありませんでした」(P.13)。 

このように信じられていたのですから、遺骨を掘って研究材料に使うなどと言う事にアイヌが関わるわけがないと思うのです。質問状でその真実が明らかにされることを願います。

さる4月11日の日本経済新聞紙面で、北海道大などが保管している身元不明のアイヌ民族の遺骨について政府は、発掘された地域のアイヌ団体などに返還する方針を固めたことを報じました。これまで北海道白老町に新設する慰霊施設に集めるとしていましたが、昨年から札幌地裁で順次和解が成立し、地域の団体などに返還が決まったことを政府は踏まえ、方針を見直したとのこと。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG30H2I_R10C17A4000000/

しかし、これはまだ、報じられただけ。アイヌ政策推進会議内の政策推進作業部会の2月、3月に開催された会議の議事内容で詳細が明らかにされないので何とも言えません。しばらく待ちましょう(それにしては議事内容が出るのが遅いし、相変わらず誰が発言しているかが不明記。これではどう言う立場で発言しているかが分からない)。

 

昨年の春の写真(今年の留萌はまだ緑は出ていません。今日も雪がチラついています)

春のテンプレート(背景)がなかなかしっくりせず、変えてみました。字は今後も大きくします。