アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

映画「サンダー・ハート」

2009-12-17 06:50:16 | インポート
14日(月)に三ヶ月ぶりのチ・カラ・ニサッタの勉強会があり、札幌に行って来ました。それぞれが忙しく久々に集まりましたが、有識者懇談会の報告書を読み合わせながら、問題点を話し合いました。いろいろな視点からの指摘でたいへんいい学びとなっています。
終了後、いつもの通り会場を別にして熱い議論を続け・・・、その日はなんとカプセルに入ったのは午前3時。翌日は遅めに起きて留萌を通り越し、210キロ北上して初山別の家庭集会へ。
昨日はやっと機関誌「ノヤ」の残りの発送を完成させ、今朝は「聖なる魂」(森田ゆり 朝日新聞社 1989)の続きを読みました。内容をあまり知りませんでしたが、とても深く、色々なことを学んでいます(残りの少しは年末までおあずけ)。

アルカトラス島占拠のところでララミー砦条約(1868)のことも書かれていました。「酋長」レッド・クラウドに率いられたオグララ・ラコタ族の結束と粘り強い抵抗戦の結果、合衆国はラコタ族の居住の自由を認める条約を結びます。その後、合衆国は締結された17ヶ条の条約すべてを反故にしてラコタ族を北に追いたてますが・・・。それでも先住民族を認めて互いに契約を行なったことは当然有効であったわけで、その後の裁判では白人による不法占拠であることが認められたようです(日本ではアイヌを先住民族として認めず契約もしなかったのに比べると大きな違いです)。

島を占拠した人々は評議会を作って共同体の運営に当たります。そして長文の宣言を発表して占拠の理由と目的を謳いあげます。その中に、島内に先住アメリカ人研究センター、アメリカ・インディアン宗教センター、インディアン・エコロジーセンターインディアン芸術・技能センターなどの施設を設置する計画を述べています。さらにアメリカ・インディアン博物館も開設して、白人がインディアンに対して行なった経済的、文化的圧殺の歴史を展示すると宣言。
日本でもこれらの施設を設置したらいいですね。現在、苫小牧周辺に慰霊や文化交流を目的とするような施設の案が出されているようですが、どのような意図でどのようなものが出来るか注目したいと思います。

島占拠は1年半続き、その後も旧ナイキ・ミサイル基地占拠、DQ大学を南北アメリカ・インディアン完全自治の教育・文化センターとする運動、メイフラワー号占拠、アシュモア山占拠と、AIMの抗議行動は続きます。す、すごいっ!
抗議行動の成功のための戦術についてデニスさんは①大きな集会を開いて人々の共感を集めたこと、②争点を徹底的に明確にすること、の二つを挙げていました。なるほど。マスコミに声をかけて記者クラブで会見をしてもマスコミが取り上げないことがあります。なにがどう問題なのか明確にしてドカンとシンポジウムなどを開催して共感を得る方法は効果があるかも知れません。

キング牧師らの公民権運動と自分たちの権利回復運動の違いも述べています。公民権とは現存する立法・政治体制を改善する努力を通してインディアンも白人並みの公民権を会得しようとする概念だが、自分たちは「条約権」の立場に立つ、と。これはアメリカ合衆国とインディアン・ネーション(国)との間に交わされて合衆国によって一方的に破られた何千もの条約の履行を主張し、インディアン国を再興することだ、と。この破られた条約の回復を訴えるために行なわれたのが「破られた条約の旅」。
車によるアメリカ縦断の旅で聖地に寄って祈り、長老や祈祷師たちを訪れてはアドバイスをもらいながら、AIMの根源的な思想が次第に成熟していったようです。



今年の我が家のクリスマスカード飾り(手袋いっぱいの宝とオロロン鳥です。海岸の小石で作成)

ウンデット・ニー占拠(1973年2月)につても、当事者として詳しく書かれていました。
思わず注目したのは部族議長の独裁政治が問題にされていること。金のばらまきと暴力団導入、さらに警察との癒着。それに立ち上がったのは勇敢な女性たち。
「きょうは死ぬに良き日だ、ホカ・ヘイ(がんばろう)」の掛け声と共に、アメリカ政府の武力と経済力を後ろ盾に悪徳のかぎりをふるうウイルソン部族議長の暴力を拒否する行動がはじまります。

交易所占拠のあとにカトリック教会を占拠。出入り自由だった神父らは自主的に教会に残ったとのこと(キング牧師の後継者として知られるラルフ・アバナシー牧師も訪れて支持を表明)。
銃撃やファントムでの脅しなど凄まじいもの。スパイを送り込み、嘘のうわさをまき散らして内部の士気を落とすという心理工作もあったようです。なるほど勉強になります。

この出来事を題材にして出来たのが映画「サンダ―・ハート」(1992年 ヴァル・キルマー主演)。つながってきますね。題の「サンダー」とは1972年に殺されたオグララ族インディアン男性、レイモンド・イエロー・サンダーのことなのでしょうね。

ところで、この「サンダー・ハート」はもちろんのこと、前回に少し触れた映画「ソルジャー・ブルー」もTUTAYA(レンタル屋)さんで最近貸し出しを始めました。「ソルジャー・・」のほうは1970年代に日本でも上映されたようですが、やっとDVDになりレンタルもされるようになったのですね。ウイットマー(道北センター館長・アイヌ民族委員長)さんによると、アメリカではこの映画と「小さな巨人」によって、先住民族の虐殺の歴史が明かされたため、それまでの「西部劇」が描けなくなって、しばらく西部映画は作られなかった、と教えてくれました。


今日の午後にはアイヌ奨学金キリスト協力会の募金趣意書が印刷されて来るので、今夜と明日一日は、うちの作業所メンバーと発送作業に打ち込みます。


台湾タロコ民族の装飾品。タロコ国定公園内博物館展示物より