アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

アイヌ民族と格差・貧困問題

2009-10-05 20:02:24 | インポート
さっぽろ自由学校「遊」の2009年後期講座が始まりますね。
アイヌ民族関連では2つの講座あります。
ひとつの講座は「アイヌ民族のこれから~奪われた権利の回復に向けて~」で、明日の6日から
月1回火曜 18:30~20:30 全6回です。
案内説明は以下の通り。

http://www.sapporoyu.org/modules/sy_course/index.php?id_course=203

2008年6月の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める」国会決議を受けて設置された「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の最終報告書が2009年7月に発表されました。これから、新たなアイヌ民族に関する政策策定に向けての具体的な動きがはじまっていきます。この講座では、懇談会の報告書の内容を評価・検討しながら、奪われたアイヌ民族の権利をどのように回復していけばよいのか、具体的に考えていきたいと思います。


第一回目はジャーナリストの中村康利さん(道新勤務)が、「アイヌ民族と格差・貧困問題」をテーマに話されます。
中村さんは少し前、「アイヌ民族、半生を語る-貧困と不平等の解決を願って」(自由学校「遊」)を出版されました。
同書には二十名近くのインタビューとその分析に裏づけられて、差別と貧困がアイヌ民族を追いやっている現状が記されています。
インタビューの際のみなさんの生の声が心に刺さります。


すこし乱暴ですが、中村さんの本からインタビューのあとのまとめを抜き書き引用させて戴いきます。

1:現在、収入の少ない社会人の多くは、子どものころ、主に生まれ育った家庭の経済事情によって進学が阻まれ、高校を卒業できず、十分な学歴を得られなかった。(P.162)
2:こうして高校を卒業しなかったり、高校を卒業しても安定した仕事に着く機会を逸したりした人たちは、いわゆるホワイトカラーやブルーカラーの正社員として働くという安定した生活コースにすすむことが出来なかった。(P.162)
3:多くの場合、収入の増える機会が少ないと将来の生活を見通すことはたやすくない。それどころか生活の安定を損ねる失業や解雇の危険と隣り合わせになっていることもある。その中でアイヌ民族向けの職業訓練を受講しても、安定した就業機会はなかなか訪れそうもない。(P.163)
4:結局、社会人として独立した後、収入を得ようと働こうとする場合、結婚相手を探す場合、子どもを進学させようとする場合、いずれの場面でも貧困は不利をもたらすといえる。そして、多くの貧困は、生まれ育った家族から引き継がれていた。教育や就業の機会に恵まれない中、本人や家族は苦境を乗り越えようと懸命に努力を続けたものの、個人の努力だけではそこから抜け出すことは難しい。(P.163)
5:アイヌ民族向けの修学資金は、十分とはいえないが、子ども達に高校や大学進学のチャンスを与える有効な手段であると考えられる。一方、アイヌ民族向けの就業支援は、十分な収入を得る機会を提供しているとは言い難い。親の生活が安定しづらいならば、子どもたちの進学機会を高めることにも結びつきづらい。(P.166)


この状況の打開をどうするかについては「貧困対策のあり方」で展開されていますが、ここでは省略。
みなさん買ってお読み下さい。
明日は楽しみです。


暑寒別川に鮭がのぼってきています