~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

15年でやっと「下手」~~『鼓の家』を見て~

2010年12月15日 12時14分58秒 | 見る・読む
以前ちらっと見て気になって気になって仕方なかった
「鼓の家」という番組(NHKハイビジョン ドキュメンタリー)を見ることができました。

全部を見てみると、以前感じた以上にすごい世界のお話・・・・
内容は
「亀井令子さん一家は5人全員が鼓を打つ。彼女が高校生の時に記録された『ある人生・親子鼓』の映像を交え、継承される伝統芸能の精神と家族の絆を描く。」というもので、
ここのご一家というのは次のとおり。

ご主人:能楽大鼓方・人間国宝…亀井忠雄
奥さま:歌舞伎囃子田中流家元…田中佐太郎(亀井令子)
長男:能楽大鼓方…亀井広忠
次男:歌舞伎囃子方…13世 田中傳左衛門(亀井孝之)
三男:歌舞伎囃子方…田中傳次郎(亀井雄三)

ご主人は代々お能の大鼓の家系で、奥様は歌舞伎の囃子方の家系(小鼓と太鼓)。
奥様の令子さんは、5人の兄弟(男1人、女4人)のお家に生まれられたそうなのですが、
ご長男が研究者の道を選ばれたため、跡継ぎとして厳しく教育され、男ばかりの歌舞伎の世界で生きてこられました。
ただやはり、女性であるということで、黒御簾(舞台下手のオーケストラピットみたいなもの)のなかで演奏されるのみで、舞台には出られなかったとのこと。歌右衛門さんからのご許可はあったのだけれど、ご自分であえて表には出られなかったとのことでした。

お父様の12世田中傳左衛門さんからは「とにかく男の孫を」ということで、期待どおり3人の男の子を産まれ、うちひとりはご主人の方の後を継ぐべく能の世界に入られました。
年子の3人の男の子さん、ふつうに育てるだけでも大変でいらしたと思うのですけど(かなりゲンキな兄弟だったみたいです)、みなをちゃんと後継者にされるというのはいったいどんな教育をされたのだろうか・・・・・・不思議でなりません。
というのは、ご主人もご自分も舞台人でいらっしゃるわけですので、いったん舞台が始まると、おそらく1ヶ月というような長期の公演が続くはず、ふつうに家事をされている様子がずっと映されてましたので(ゴミだし、掃除、炊事、洗濯・・・ほんとに全部)、うちのことはすべてされているご様子。
「生活がちゃんとしていないと(家族が円満でないと)いい音がでない」ということをモットーに家族の触れ合いにも心を砕いてこられたようです。


何回も繰り返しておっしゃっていたのが「12歳まででほぼ教育は終わる」ということ。
これが芸に関することなのか、一般的なことなのかよくわかりませんが、なんかわかる気がするんですよね~。
私自身、12歳までに頭と身体に入ったものを、あとの人生ではただ拡大したり縮小したり変更を加えたりして生きてる気がします。もちろんまったく変わった部分もあることはあるんですけど、この年齢までの影響というのは、有無を言わさないものだなあ・・・というのは実感。
・・・そういう意味では自分の子育てはどうなんだ??と振り返り、冷や汗しか出てこないですが(泣)。

今いろいろ「伝統芸能の御曹司」というものが取り沙汰されている最中ですが、ちょっと考えてみればです・・・
たとえば代々、〇〇というオーケストラを運営している「家」があるとしますよね。そこの座長というか音楽監督は、指揮者も兼任していて、それは世襲でしかやってはいけない。
お父さんはずっと一ヶ月公演で全国飛びまわっているのだけれど、息子(娘でも)に自分の「芸」をきっちり伝承していかねばならない。
もちろん「型」を伝承していく世界とそうでない世界、演目が莫大な世界とわりに限りがある世界・・という違いは考慮しなければなりませんけど、いったいそうなったらいつどうやって子どもに教えていくんだろうか?しかもそれが自分自身の舞台以上に重要な「務め」だとしたら??しかも奥さんもたとえばコンミスかなんかでオケの一員だとしたら?

有り得ないたとえ話ではあるとは思うのですけど、こういうたとえでも考えてみないことには、まったく想像のつかない世界です。

そういえばこういうことが番組中、2回ほど言われてました。
「(鼓は)鼓らしい音がでるまで10年かかり、思うような音がでるまで15年かかる。そしてこの段階に至ってやっと<下手になった>といわれる。」
・・・これは、こういうことだそうです。
「思うような音がでるようになるまでは評価の対象にすらならない。<下手になった>というのは、やっと評価されるレベルになってきたということ」


そういえば、私が茶道をちょろっと習っていたころ師匠に言われました。
「あなたね、10年くらいで人に『お茶やってます』なんていったら笑われるわよ。それまでは黙ってなさい」(汗)。
トータルで5年くらいはいちおう通っていたのですけど(週2回通ってたころもありました)、そんなものは『お茶』とよぶ前の段階なんですね。
ピアノは再開して今で10年ちょっとですか。思うような音も出るわけでなし、まだ「下手」の域にも達してませんね(笑)。
・・・長生きしないといけないなあ・・・