表題は脳科学者 茂木健一郎氏の著書「脳を生かす勉強法」の おわり
に、 記された見出しである。氏はNHKの司会・コメンテーターとして 各界の職
人の真髄をえぐり出す 番組とか幾多の著書を世に送っている新進気鋭の作家
でもある。音楽にも造詣が深く特にシューベルトの評伝には定評がある。美し
い旋律に聴きほれていると人生が豊かになり、クオリア、偶有性、創造性、生
命、記憶、感動―等を氏独自の脳科学の立場から敷衍する。説得力がある。
「感動する脳」の著書では<感動のない人生は生きていないのと同じである>
とアインシュタインを持ち出して解明する。だから 人生はワクワクして過ごすべ
きである、 と断定する。「脳と創造性」では“生きることはイコール創造的であ
る”と達観する。イメージやコンピュータのアナログを越えて創造性のメカニズ
ムを脳知見の立場から探究している。氏の著書の数々は脳科学の知見に裏打
ちされた理性的な援用を基にしている。若き日本のホープである。特に心が惹
かれたのは“脳は年齢、環境に関係なく成長する”という件(くだり)だ。それは
特に高齢者には福音の文言ではなかろうか! 白眉は<勉強法の真髄は3つ
に集約される>、という見解だ。勿論、脳科学の最新の知見に裏打ちされたも
のであることは言うまでもない。即ち、・・・
●1つは・・・“ドーパミン”による<強化学習>によって、脳を強化する
●2つは・・・“タイムプレッシャー”によって、脳の持続力を鍛える
●3つは・・・“集中力”を徹底的に身につける
この3つの仕組みを脳が喜ぶ様に仕掛ける事がカギになる。その方法を分か
りやすい数多の事例で解き明かしている。氏の独創性、独走性、得意分野で
の卓見が文章の隅々まで滲み出ている。読んでいて爽快であり痛快である。脳
科学の成果という知見が説得力を生んでいる。最近の私の読書分野の傾向で
もある。総じて言える事は“知のオープンエンド性の楽しさ”を知ってほしい、と
いうのが茂木健一郎氏の願いでもある、と私は思っている。・・・