フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月15日(日) 晴れ

2020-03-18 08:32:39 | Weblog

10時、起床。

スコーン、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

昨夜、11時頃、紀本さんからネット句会の作品がLINEで送られてきた。全部で24句あった。各自が3句きっちり投句したとすれば参加者は8名ということになる。

 香りして見えぬ夜半の沈丁花

 白炎は真昼の辛夷(こぶし)音も絶え

 聖なる火くべる病や余寒あり

 指輪置き新妻皿を洗う春

 春眠に冷めた番茶の砂底よ

 群来(くき)来(きた)る凝(こご)る祈りを金剛石に   *「群来」=ニシンの大群が産卵のために来ること。

 手のひらに春の陽ざしの別れかな

 そこら中マスク脱いだら蝶野正洋

 豚が湧く真珠は餌だ初桜

 国病めど我ら金糸雀(カナリヤ)野に遊ばん

 ゴールドのマスクをつけてルンルン♪

 先輩の金ボタン手に春の道

 春の山コロコロ坂のチョココロネ

 雪解けに響け渋谷のマンホール

 ホワイトデー恐竜フィギュア贈ります

 「ぼんぼり」の文字は母の字ひなの箱

 冴え返る夢だけがある空席に

 洋室に雛鎮(しず)まりぬ老の家

 サラサラと砂金のごとく二月尽

 唐突に春がキャンセルされました

 ブローチで刺して玉の枝春招く

 サファイアや祖母の指輪を出す彼岸

 枝垂桜知らんぷりして鮫小紋

 春闘もネットでこなすゼロ回答

選句は午後1時ごろから始まった。一人が5句を選ぶ。天(5点)を1句、地(3点)を2句、人(1点)を2句だ。全員が一斉に「せーの!」ではなく、五月雨式での選句となった。一番早い選句者は午後1時2分、一番最後の選句者は2時12分だった。リアル句会の場合は、選句を披露するときは全員の選句が終わっているので、他人の選句に自分の選句が影響されることはない。しかし、今回のようなやり方だと、後から選句を披露する人は前の人の選句(や感想)が目に入ってくることになる。それがどういう影響を与えるか一概にはいえないが、何ならかの影響を与えることは確かだろう。自分の推す句を誰かが先に選句していたら(やっぱりいい句なんだと)自信をもって披露できるかもしれない。反対に、選句に個性を求める人は、他人が選んでいない句をあえて選ぶかもしれない。影響があるからよろしくないと言いたいのではない。要はそれを楽しむことだ。

私は7番目に投句した。選句自体は早くできたのだが、感想を付けていたらちょっと出遅れた。

たかじ選。

 天 唐突に春がキャンセルされました

現下の社会状況を詠んだ句の中ではこれが秀逸だった。卒業生、入学式、さまざまな催し、あれもこれもがキャンセルになり、それらの総体として今年の春そのものがキャンセルになってしまったようだという感覚。「唐突に」という言葉のチョイスも的確。たとえば「突然に」よりも「あらま、なんてことでしょう。びっくりだわ」というニュアンスが強く表現されれている。

 地 白炎は真昼の辛夷(こぶし)音も絶え

通常の句会であったら、これを「天」にしただろう。辛夷は散歩のときによく目にする。たしかに花は蝋燭の炎の形をしている。それが木にたくさん灯って、その周囲は静寂が支配している。思わず居住まいを正したくなる、品格のある句である。

 地 春眠に冷めた番茶の砂底よ

下句の「砂底よ」が底知れぬ魅力になっている。冷めた番茶の茶碗の底に沈んでいる茶葉(のカス)を砂に見立てたのだと解釈した。加えて、「泥(砂)のように眠る」といういい方もあることから、「春眠」ともリンクしている。「冷めた」は「覚めた」にも掛かっているように思う。春眠から覚めた人が詠んだ句なのか、第三者の視点から詠んだ句なのか、そのあたりも謎めいている。

 人 冴え返る夢だけがある空席に

この「空席」は劇場だろう。全部が空席(上演中止)なのかもしれないし、来場を取りやめた人の空席が目立つのかもしれない。「冴え返る夢だけがある」を生かすなら前者だろう。観客の不在ではなく、無念の演者たちの夢に焦点が当たっている。不在は無ではないということ。

 人 先輩の金ボタン手に春の道

今回の兼題は「貴金属」であった。その中からこの中学生のような作品を選んだ。参加者の中に中学生はいないが、皆かつての中学生だった。あこがれの先輩の制服の第二ボタンをもらって有頂天で春の道をスキップしながら下校する女子中学生(2年生だろうか)の姿が浮かんでくる。問題は、誰がこの作品の作者かである。映像に作者の顔を貼りつけるのが怖い。

全員(投句をした8名に選句のみの4名を加えた12名)の選句の結果を紀本さんが集計してくれた(2時59分)。

19点 唐突に春がキャンセルされました 月白

 本日の特選句。月白さんの作でしたか(私はてっきり紀本さんかと思いました)。渺さんと私が天、こかよさんと明子さんが地、立夏さんと港さんと恵美子さんが人。7名が選ぶというのはなかなかないことである。それだけみんなの気持ちを代弁する作品ということだろう。

16点 春眠に冷めた番茶の砂底よ 港

 花さんと恵美子さんが天、渺さんと私が地を付けた。「砂底」はお茶っ葉が沈んだ茶碗の底と本人が解説してくれた。彼女は前回の句会で初参加して特選を獲得したが、それがビギナーズラックでなかったことを証明する作品である。 

15点 冴え返る夢だけがある空席に 立夏

 こかよさんと紀本さんが天、蚕豆さんが地、私が人を付けた。私の感想はすでに述べたが、どなたも「これはたぶん(演劇人の)立夏さんの句」と思われたようである。

14点 香りして見えぬ夜半の沈丁花 月白

 立夏さんとまゆこさんが天、こかよさんが地、蚕豆さんが人を付けた。香りが先行して沈丁花に気づくというのは普段よくある体験で、オリジナリティーはないけれども、調べが端正で美しい。そこに品格を感じる人(立夏さん)もいる一方で、エロさを感じる人(こかよさん)もいるところが面白い。上品とエロさはきっと両立するのでしょう(知らんけど←大阪人風)。

13点 「ぼんぼり」の文字は母の字ひなの箱 まゆこ

 蚕豆さんが天、渺さんと恵美子さんが地、渺さんとこかよさんが人を付けた。箱に中味が何か書いてある。衣替えの時など、そうしないとわかんなくなっちゃうから。ここではそれが「ぼんぼり」で、母の字であると。かなり昔にかかれたんでしょう。母、娘、孫娘へと受け継がれる雛飾り。家族の物語がきれいな調べで詠まれています。

11点 洋室に雛鎮まりぬ老の家 渺

 男性の句でしたか。月白さんが天、蚕豆さんと港さんが地を付けた。「鎮まりぬ」は雛が洋室に鎮座しているという意味だろう。静かに目を閉じているのかもしれない。小さな女の子の姿はそこにはない。女の子が小さかったとき、一家は和風の家に住んでいたのだ。長い年を経て、その女の子はいま老年期を迎えてマンション暮らしだ。そういう家族の物語。妻の雛人形を夫の渺さんが詠み、それを妻の月白さんが天に選んだというところが素晴らしい。これはインサイダーとはいいません。(何て言うのかって? それは急に言われてもね←梅沢名人風)。

10点 雪解けに響け渋谷のマンホール 港

 まゆこさん、明子さん、紀本さんが地、こかよさんが人を付けた。雪解けというからにはその前に雪がかなり積もっていたわけだが、渋谷にそんなに雪が積もったことありましたっけ? ファンタジックな句として読むならば、そのマンホールにはきっと大きなカエルが棲んでいるに違いない。冬眠から目覚めたカエルくんが東京を救うのだ。村上春樹の世界です。

8点 枝垂桜知らんぷりして鮫小紋 紀本直美

 渺さんと月白さんが地、蚕豆さんと港さんが人を付けた。紀本さんはいつも句会に着物でいらっしゃるので、「この句の作者は・・・」と予想した人が多かったのではないかしら。ちなみに「鮫小紋」とは写真のような図柄である。「枝垂桜」と「鮫小紋」の関係は・・・それをくどくど説明するのは無粋というものだから、「知らんぷり」を決め込むことにしよう。

8点 白炎は真昼の辛夷音も絶え 渺

 港さんが天、私が地を付けた。私の感想はすでに述べたので、港さんの感想を紹介しておこう。「前半の明るさを後半で昇華している感じが好きです」とのこと。加えて、彼女には中国に帰省している「辛夷ちゃん」という学友がいることも天を付けた理由の1つという。

6点 手のひらに春の陽ざしの別れかな たかじ

 私の句。まゆこさんと恵美子さんから地をいただいた。この手のひらは、「さよなら」と降っている手のひらです。定年退職される同僚の先生との個人的な送別会のときに詠んだ句ですが、卒業式が中止になって、私は教え子たちに手を振ることができなくなってしまった。

5点 春の山コロコロ坂のチョココロネ たかじ

 私の句。明子さんから天をいただいた。天か、とちょっと驚く。われらが主宰の紀本直美さんの代表作(出世作?)「どの道もさくさくさくらミルフィーユ」をオマージュしながら、現下の社会状況をジブリ風に詠んだのだが、「春の街」と都会的(渋谷的)なファンタジーとして詠んだ方がよかったかな。

5点 サラサラと砂金のごとく二月尽 たかじ

 これも私の句。港さんから地、月白さんと紀本さんから人をいただいた。兼題の句だが、「サラサラ」とするか「さらさら」とするかで迷って前者にしたが、「サラ金」を連想させたかもしれない。

4点 国病めど我ら金糸鳥野に遊ばん 渺

 立夏さんが地、まゆこさんが人を付けた。立夏さんの感想に「カナリヤは炭鉱で毒ガス検知器として使われていた時代があり、カナリヤの鳴き声は経済リスクや不安の予兆を告げる声のメタファーとなっているはずです」とあり、作者の渺さんが「深い読みですね。炭鉱のカナリヤの含意まで読んでいただき嬉しい!」とリプライしていた。

3点 群来来る凝る祈りを金剛石に 蚕豆

 立夏さんが地を付けた。この難解な句に地を付けましたかと、正直、そっちに驚いた。

3点 ブローチで刺した玉の枝春招く 港

 紀本さんが地を付けた。これも難解な句。ブローチで指を射してしまって、血の玉がぷっくり浮かんで来て、そこから竹取物語の「蓬莱の玉の枝」に連想を飛ばし、ブローチで着飾って出かける予定に恋の実る予感がすると妄想している句だそうだ。わかるか!(笑)

2点 指輪置き新妻皿を洗う春 まゆこ

 立夏さんと明子さんが人を付けた。ご自身のことを読むことの多いまゆこさんだが、これはそうではあるまい。だってすでにお子さんがいるもの。しかし、まだ新婚気分なのかもしれない・・・。

2点 先輩の金ボタン手に春の道 月白

 まゆこさんと私が人を付けた。そうか、月白さんでしたか。「今度着ていきます(セーラー服を)」とのこと。そ、それは、楽しみです・・・。

2点 サファイアや祖母の指輪を出す彼岸 まゆこ

 渺さんと恵美子さんが人を付けた。お祖母さんのお墓参りにお祖母さんのサファイアの指輪をはめていくという光景。声に出して読むと「サファイアや」はちょっと言いにくい。「サファイアの」とすれば滑らかだが、散文的になってしまうかな。

1点 ホワイトデー恐竜フィギュア贈ります 蚕豆

 紀本さんが人を付けた。蚕豆さんの句とは誰も思わなかったようだ。ある意味、してやったりですね。でも、紀本さんはインサイダー的にご存知だったはず。

1点 春闘もネットでこなすゼロ回答 蚕豆

 明子さんが人を付けた。紀本さんが「今回は川柳っぽい句が多かった」と感想で言っていたが、この句はたしかに川柳っぽい。世評風刺ということ。

以上、今回の入選句でした。

集計結果を受けて、多くの参加者は選句の感想を述べ始めた。私は選句と感想を同時にアップしたので、しばらくはみなさんの感想を眺める側に回る。昼食はまだとっていない。昼食をとりがてら散歩に出る。

公園では子供たちがたくさん遊んでいる。そうか、今日は日曜日なんだな。

「HITONAMI」に行く。

遅い昼食だから軽めにしておこう・・・と考えながらメニューを眺める。

鱈の粕漬け焼きをメインに、じゃがいものコロッケ、あんかけ玉子焼き、高野豆腐と野菜の煮物。

豆乳カフェオレをアイスで。アイスで注文するのは初めてだが、さっぱりとした口当たり。

バナナいちじくケーキ(ミニサイズ)。初めて注文したが、甘すぎず、しっとりとして美味しい。

結局、しっかりした昼食になった。店を出たのは4時半を回っていた。

夕食はそれから3時間後。「軽めでいいよ」とお願いしおいたが・・・。

芽キャベツと卵とエリンギの炒め。

ローストビーフと蕪のサラダ。和風のドレッシングでさっぱりと。

ネット句会(感想の述べ合い)は日付をまたぐ頃まで続いた。次回の句会の日程は未定。おそらく6月になりそうだが、はたしてリアル句会はできるだろう。

深夜、ウォーキング&ジョギング(4キロほど)。

2時半、就寝。

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