フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

10月17日(水) 晴れのち曇り、夕方から雨

2012-10-18 08:24:07 | Weblog

  7時、起床。バタートースト、コーヒー、梨の朝食。朝からコーヒーを飲むことはめったにないのだが、実は、これ、昨日の夜に淹れたコーヒーである。妻が淹れてくれたのだが、飲むのを忘れて一晩リビングのテーブルの上に放置されていた。「せっかく淹れてあげたのに・・・」と妻。「でも、一晩寝かせたカレーが美味しいように、一晩置いたコーヒーも美味しいね」など言いながら、ホットでもアイスでもない常温のコーヒーを口に運ぶ私。そんな秋の朝のひととき。

  「社会理論と社会システム」の第3回のレビューシートをチェックしていて、授業の中で使っているフリップに記されたデータの数値が一箇所違っていることに気づく。すぐに受講生全員にお知らせメールを出して間違いを訂正し、コースナビにアップしてある資料の修正版を再アップする。入試当日に受験生からの質問で出題ミスに気づくというのはこんな気分なのだろう。

  11時に自宅を出る。今日は一文の社会学専修の卒業生のTさんと神楽坂でランチを食べる約束をしている。Tさんは2007年3月の卒業で、ときどきフィールドノートに登場する高知のMさんとは同じ調査実習のクラスだった。卒業後は一度別の卒業生の結婚式で会ったことがあるだけだが、在学中に私の勧めで始めたブログをTさんはいまも続けていて(途中で一度辞めたのだが、二ヶ月で再開した)、しかもそのブログは私が知っている卒業生のブログの中では一、二を争う文章力で、私は「お気に入り」に登録して、いつも読ませてもらっている。Tさんも私のブログを読んでくれているので、リアルな空間で会うのは久しぶりだけれど、互いの近況については知っているため、それほど久しぶりという感じはしない、ブロガー固有の間柄なのである。

  Tさんが予約を入れておいてくれた店は、神楽坂駅の矢来口の方から出て、新潮社のある道を真直ぐいったところにある「ブラッスリー・グー」という名前のレストラン。有名な店らしいが、私は初めてである。  

  私が先に着いて、店員さんにTさんの名前を言って予約を確認しているときに、Tさん現る。駅前からの道を歩いているときに前方を行く私が見えていたそうである。前菜(サーモンのマリネ)とメインの料理(仔羊のワイン煮)をチョイスして、さっそく話を始める。卒業後の職業経歴や、同級生の近況や、共通の知り合いのことなど。Tさんは学生の頃からよく話す人であったが、久しぶりに会って、内部から放出されるエネルギー量が上昇していることを感じた。「ドラゴンボール」に出てくる相手の戦闘能力の測定器があったら、カウンターはおそら「10000」の大台を超えるのではなかろうか。比較的最近のことだが、ロックとの出会い(とくにブルーハーツのヒロト)をきっかけに彼女の中に眠っていた「野獣」が目をさましたのだ。表現主義的個人主義という言い方が当てはまるかもしれない。自分の内部に閉じこもらず、世界と交渉し、「私」を積極的に表出し、関心のあるものの中に飛び込んでいく。「脱皮」という言葉を彼女は何度か使った。「ドラゴンボール」でいえば、悟空やベジータがスーパーサイヤ人に変身するみたいなものか。その「脱皮」は半ば無意識的なもので、人生のこの時期に、さまざまな出来事経験の蓄積を通して、起こるべくして起こったように思われる。ライフストーリー論ではこれを「転機の語り」と呼ぶのだが、ゼミの3年生の誰かにTさんのライフストーリー・インタビューをしてもらおうか。そのことを彼女に話すと、「いつでも、喜んで」と言ってくれた。そして、「インタビュアーの学生は自分がひるむくらいのおしゃべりな方であれば嬉しいです。そういう体験はあまりしたことがないので(笑)」と付け加えた。6時間くらいぶっとうしでも大丈夫とのこと。通常、インタビューには学生は二人一組で行かせるのだが、Tさんの場合は三人一組でないと無理かもしれない。

  「ブラッスリー・グー」で1時間、「キイトス茶房」に場所を移してさらに30分ほどおしゃべりをした。合計1時間半は、Tさんにとってはジョギング、いや、ジョギング前の準備体操みたいなものだったかもしれない。2時から仕事の打ち合わせが入っているTさんと神楽坂の駅前で別れ、大学へ。


じっくり煮込まれた仔羊の肉はとても柔らか

  4時半から現代人間論系の教室会議。今日は議題が多いので、あらかじめ夕食(「たかはし」の二重弁当)が用意されていたが、会議が終わったのは8時半近かった。延々4時間の長丁場であった。乗り継ぎがよければ、東京から「はやぶさ」で新青森まで行って、そこで「つがる」に乗り換えて、弘前まで行ける時間である。

  研究室で雑用を片付けてから大学を出る。10時、帰宅。会議が長引いたのが幸いして、土砂降りのタイミングを外れることができた。ものごとのプラスとマイナスは単純には計れない。