ヌマンタの書斎

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EVシフトへのブレーキ

2023-07-21 09:14:26 | 経済・金融・税制

昨今、マスコミが顕著にアピールしていたEV車シフトの動きがおかしな事になってきた。

欧州最大の自動車メーカーであるVW(フォルクスワーゲン)社が、再びガソリンや軽油を燃料にする車種の販売にシフトしつつあるのだ。BMW社やアウディ、ダイムラーなども追随の動きを見せている。

もちろんEV車を見限ったと明言している訳ではない。しかし、電気料金の高騰や寒冷地におけるEV車の利用の難しさなどの現実的な視点から、もはやEV車一辺倒ではいられなくなったようだ。ただし、私が調べた限り、この動きは労働者サイド(組合など)から出てきているようなので、会社の経営陣がどの程度本気なのかはわからない。

私からすると、予想通りの展開に過ぎない。

元々欧州のガソリン車廃止の動きは、EU委員会を中心とした政治的なものだ。彼らが口にはしない本音を私が邪推すると、極端で急速なEV車へのシフトには二つの目的がある。一つは原油の枯渇を睨み、先手を打つことで産油国主導となることを防ぐこと。

もう一つは、本来自動車後進国であった日本などアジアのメーカーによるハイブリッド指向を潰し、自動車産業の主導権を取り戻すことだ。海外を主戦場と考えるホンダなどは、早々にこの日本車排除の動きに素直に従い、EV車展開を進めた。

一方、国内の労働者及び下請け企業を大量に抱えるトヨタは、EU委員会主導のEV車推進に不快感を隠さず、独自路線を追求する姿勢を見せつつ、EV車展開も視野に置く多角的な経営戦略を打ち出した。

マスコミを巻き込んで原油多消費型の車を排し、EV車への流れを作ろうとしたEU委員会だが、困った事態に陥った。主導権を握るはずのEV車の開発、販売を共産シナがその巨大な国内市場をベースに強引に推し進めてきた。バッテリーに必要なレアメタルも含めて、シナがEV車を主導しかねない状況になってきた。これでは話が違うと、欧州の自動車メーカーが不平を言い出した。

更にEV車推進の先進国であるノルウェーにおけるEV車の実態が徐々に明らかになってきた。国を挙げてEV化推進をするノルウェーではあるから、かなり参考になる。ただ、ノルウェーの人たちは、厳しい寒さのなかで生きていくうえで、現実的な対応をしている。一家族でEV車を一台、これは決まりきったルートを走る通勤用とし、もう一台はハイブリッド車を選び旅行などに活用している。

やはりEV車は充電がネックであり、国策でEVステーションを多数設置したノルウェーでさえ決して十分ではないのが実情だ。しかも冬場には想定されているよりも電気の消費が多く、バッテリーの性能も十分ではないのが現実だ。しかし、車の維持費に関しては、EV車は優秀との声もある。

ところが、ウクライナ戦争の煽りを受けて電気代が高騰すると、ドイツやポーランド、バルト三国では悲鳴が上がった。欧州屈指の産油国であるノルウェーはともかく、ロシアからの天然ガスを燃やして電気を作っていた欧州の国々は、電気代の高騰に音を上げた。

ドイツのVW社がEV車一辺倒からガソリン車への多角化を言い出したのも無理はない。これは原発で電気を賄うフランスでさえ、その電気代の高騰には頭を痛める。特に貧困層においては顕著であり、これが現在のフランス暴動の一因だとする報道もある。

これは非常に重要な情報だ。原油が近い将来枯渇し、値上がりすることは既に決定事項でもある。EV車はその点で賢い選択肢であるが、やはり万能ではない。天然ガスはまだ200年は持つとされているし、石炭も十分にある。

自動車は現代文明の必需品であることを思えば、決してEV車の可能性は排除すべきではない。しかしEV車だけに頼ることのリスクもあることがはっきりした訳だ。

ところがマスコミの報道を見ていると、相変わらずのEV正義論というか、日本自虐論がまかり通っている。これでは適切な判断ができない。もちろん、まともなことを言っているマスコミもあるのだが、だからこそ厄介だ。

私でもけっこう迷うが、現時点では日本においてはEV車購入の価値はないと断じたい。ただし郵便局の配送とか、新聞配達とか限定的な利用ならば良いかもしれませんね。最終的には、ガソリンの小売価格次第だと思います。

仮にリッター200円ならまだハイブリッド車に利があるでしょうけど、リッター1000円ならばEV車は当然に選択肢です。まぁそうなればLPG車、燃料電池車、水素エンジン車なども本格的に実用化されると思いますけどね。

コメント
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