ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

踊る大捜査線 THE FINAL

2012-11-08 14:57:00 | 映画

馬鹿だって気が付くことはある。

自民党政権が崩壊し、民主党政権が樹立した背景には、世の中が変わって欲しいとの大衆の願いがあったと思う。愚民と馬鹿にされようと大衆にだって、なんとなく分ることがある。

戦後半世紀を経て、日本の政治が世の中の変化に十分対応していない。そのことを肌で実感するからこそ変化を望んだ。それが3年前の衆議院選挙における歴史的な民主党の勝利であった。

だが、民主党は大衆の望みよりも、これまで長年にわたり支持してくれた少数派の考えを実現しようとした。多数の大衆の望みよりも、依怙地な少数派の意見を実現しようとしたが故に、支持を失い参議院選では負けて、与野党逆転を招いた。

おかげで予算案以外の法案が、国会を通過できずに政府の機能は大きく衰えた。本来発揮されるべき震災被害からの復興もままならず、また国際関係の信頼をも大いに損なう失政が続いた。

おかげで四年前より株価は下がり、不動産取引は活気を失い、消費は低迷した。現場(大衆の生活)を分かっていない民主党ゆえに、その失政すら理解できずにいる。当然であろう。

なにしろ民主党の議員先生は現場に出てこない。有権者という名の大衆が何を望み、何に失望し、何に怒っているのかが分からない。相変わらず、国会前で騒いでいるような一部の少数意見(声だけはデカイ)にしか耳を貸さない。

これでは次の選挙で負けるのは当然だ。だが、困ったことに、これは野党である自民党も同じこと。私の目の届く範囲でも、驚くほど政治家先生は有権者の集まる場所に出てこない。民主党は当然だが、自民党も同様だ。

これでは民意は分かるまい。

こんな時に頼りになるのは、やはり霞が関の官僚たちであった。過去形で語らねばならないのが辛い。何故なら、現在の霞が関には現場の情報は十分には伝わっていないからだ。

霞が関の快適なオフィスで、全国から集計された情報に目を配るキャリア官僚たちだが、彼らは気が付いていないらしい。自分たちの下に寄せられる情報には、肝心の情報が欠けていることに。

エリートたるキャリア官僚の権限は絶大だ。彼らの作る政策が法案化されて、国会を無造作に通過して、全国の行政機関がそれを実施する。だが、近年その政策が上手く機能しないことが多い。

原因は簡単だ。誰だって最初から完璧なものは作れない。何度も修正されて、ようやく法案として国会に上がる。この修正が甘い。いくら目的が正しくても、それを現場で実施できなければ意味がない。

例えば姉歯建築士による不正構造計算事件を受けて、現場での審査が厳格となる法案が作られた。しかし、現場との意見調整が不十分で、結果的に建築審査は多く遅れて、建設不況を引き起こす羽目に陥った。

末端の行政機関で対応しきれない改正法案を作ったキャリア官僚が原因だが、彼らに悪意はない。ただ、知らなかっただけだ。現場の官僚たちは、こうなるかもしれないことを知っていたが、それを伝える場所がなかった。

明るい会議室の席で、自分たちの人事権、予算権を握る上級職のした仕事にケチをつけることなんて出来やしない。昔だったら官官接待の場で、酒を交えての世間話でやんわりと欠陥を指摘できた。でも、今はそれが出来ない。だから現場の意見が十分、上に伝わらない。

これは建設省だけでなく、ありとあらゆる官庁で起きていることだ。世の中の仕組みが変わって欲しいと願っているのは、愚かな大衆だけではない。実際に官庁で働く真面目な役人たちの間でも、似たような願望は強く息づいている。

これは私が仕事中にする様々な役所の人との雑談の際に、この現場と上層部のギャップについて話を振れば、ほとんどの人がその通りと頷いていることからも実感している。

変わって欲しい。この願いに応じてくれる政治は、いったい何時になったら実現するのだろうか。

ところで表題の映画は、元々はTVドラマであったようだが、私はまったく観たことがなかった。ただ、人気があったらしいことは知ってた。特にCMで主人公が「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ」と叫んでいたのを、良く覚えていたからだ。

よりにもよって映画、しかもTHE FINALと銘打った作品が最初だというのだから、私も相当ひねくれている。だから人間関係とか、過去のエピソードなんぞ、まったく分からなかったが、映画だけならそれ相応に楽しめた。

多分、TVドラマを観ていたファンならば、私よりも楽しく映画を観れたのだろうと思う。その意味で、私はちょっと損をしているのだろう。とはいえ、TVの前でボーっと時間を潰すのが大嫌いな性分なので、今さらTVを観たいとは思わない。

でも、まあ、少し見直しましたよ、このドラマ。二時間ちかく、私は退屈せずに済んだのは確かですからね。

コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする