
「名もなく貧しく美しく」(1961年)

■「婚約三羽烏」(1956年)
僕が初めてスクリーンで小林桂樹という俳優を見たのがこの映画だった。戦前に作られた映画のリメイクだったらしいが、三人の若いサラリーマンの恋模様を描いた作品で、その中の一人を演じたのが小林桂樹だった。三者三様のキャラクターの違いと、それぞれの相手役の女優との組み合わせが面白かった。他の二人、宝田明と小泉博よりも小林桂樹に共感を抱いたことを憶えている。
■「田舎刑事 時間よとまれ」(1977年)テレビドラマ
渥美清の田舎刑事シリーズの1本で、僕はテレビドラマ史上、傑作中の傑作だと思っている。小林桂樹が演じたのは殺人犯である過去を消し、別人として有力者に成り上がった男の役だった。渥美清との鬼気迫る対決が印象に残るが、人のよいサラリーマン的なイメージを払拭する快演だった。「夢千代日記」などで有名な早坂暁が書いた脚本は、まるで松本清張を思わせる迫力があった。
あなたがスクリーンに登場するだけで、えも言われぬ安心感を抱いたものです。永い間ありがとうございました。合掌。