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徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

ラフカディオ・ハーンと民俗芸能

2025-03-28 22:39:38 | 民俗芸能
 先々週、熊本城ホールで行われたNHK朝ドラ「ばけばけ」関連イベント「小泉八雲を変えたKUMAMOTO」を見に行ったが、昨夜その時の録画映像がNHK総合で放送された。さすがによくまとまっていてよい復習となった。
 ラフカディオ・ハーンは、民俗学的研究の中で、民族芸能も数多く収集しているが、今日はそれらの中で代表的な三つの芸能を掲載してみた。

♪ ライザ・ジェーン
 1876年、ハーンはアメリカのシンシナティでジャーナリストとして新聞記事を書いていたが、ミシシッピー川やその支流の港湾労働者が歌っていた「ライザ・ジェーン(Liza Jane)」を採集した。この歌は南北戦争前から南部の黒人奴隷たちが歌っていた一節のフォークソングだった。他にも多くのフォークソングを収集している。
ハリー・ベラフォンテとグロリア・リンのデュエット

♪ 因幡大黒舞
 明治24年(1891)の春、ラフカディオ・ハーンは、松江で最も信頼を寄せた西田千太郎とともに松江市南の「山の者」の部落を訪ねた時、「大黒舞」を見て、その民俗芸能としての価値を認識した。そしてその歌詞「俊德丸」「小栗判官」「八百屋お七」を採集し、「三つの俗謡」と題して発表している。
 「大黒舞」は室町時代から江戸時代にかけて旅芸人たちが大黒天の祝舞として各地を門付けして巡り、その名残が各地に民俗芸能として残っているといわれる。音源も映像も残っていないので音楽的に近いと思われる隣の因幡国の「因幡大黒舞」を添付してみた。
立方:花童みこと・花童あやか

♪ 銚子大漁節
 ハーン著「日本の古い歌(Old Japanese Songs)」の中には千葉県民謡の「銚子大漁節」の英訳が「SONG OF FISHERMAN」として紹介されている。しかし、ハーンは銚子を訪れた形跡はない。それではどうやって「銚子大漁節」を採集したのだろうかという疑問を銚子市観光商工課に問い合わせてみた。文化財担当者からの返事では、「ハーンが銚子に滞在した記録はない」というハーンの孫・小泉時氏の談話が残っているので間違いない。それではどうやって採集したかというと、明治33年にハーンが「日本の古い歌」に載せた大漁節は「十とせ」を欠いており、その2年前、明治31年に出版された大和田健樹著「日本歌謡類聚」に収録された大漁節も「十とせ」を欠いていることから、ハーンは「日本歌謡類聚」をもとに翻訳したのではないか、とのことだった。
立方:ザ・わらべ(くるみ・あやの)
地方:本條秀美社中/中村花誠と花と誠の会

女性神楽師

2024-10-30 22:42:14 | 民俗芸能
 今日夕方のKKTくまもと県民テレビの「news every.くまもと」で全国的にも珍しい女性神楽師を紹介していた。その名は稲田奈緒子さん。もともとポップス系のダンサーとして活躍し、現在、地元の子どもたちにダンスを教えているという。
 今日は金峰山神社の秋の大祭で初めて男性神楽師との二人舞に挑む様子が映された。野出神楽保存会のメンバーということだが、ここの神楽は剣や弓、御幣などを使って舞う採物(とりもの)神楽と呼ばれる種類のもので、熊本市の無形民俗文化財に指定されている由緒ある神楽だそうだ。
 普段、女性の神楽としてはいろんな神社の巫女舞を見ているが、野出神楽のような民間の里神楽は熊本県だけでも160ほどあるらしい。
 そもそも神楽の始まりは記紀に書かれた「天岩戸開き」で、天照大神が岩戸にお隠れになってしまった際の、天鈿女命(アメノウズメ)の神懸りした舞が起源とされている。そんなことを考えていると必ず思い出すのが、柳田國男の著書「妹(いも)の力」。太古の昔から女性には霊的な能力が備わり、「けだかく」「さかしい」存在であったという。女性は本来的に神楽を舞う能力を備えていて、稲田さんのようなケースもごく自然なのではないか。番組を見ながらそんなことを考えていた。


稲田奈緒子さん