徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

テイカカズラとアメノウズメ

2024-04-19 21:28:43 | 季節
 新坂を歩いて下って行くと、テイカカズラの甘い香りが漂ってくる。季節はもはや初夏。
 「定家葛(テイカカズラ)」の名は、式子内親王を愛した藤原定家(ふじわらのていか)が、死後も彼女を忘れられず、ついにテイカカズラに生まれ変わって彼女の墓にからみついたという伝説に基づく能「定家」から付けられたという。
 そのテイカカズラの古名が「真拆の葛(マサキノカヅラ)」。
 2023年度前期の朝ドラ、植物学者の牧野富太郎をモデルにした「らんまん」はまだ記憶に新しいが、牧野博士の自叙伝には次のような一節がある。

――かの『古今集』の歌の「深山には霰降るらし外山なるまさきのかづら色づきにけり」にあるマサキノカズラも、今日八丈島等に昔ながらのその方言が残っていたればこそそれがテイカカズラである事が判った。それ迄はこのマサキノカズラをツルマサキだと間違えていた。このツルマサキには敢て紅葉は出来ぬが、テイカカズラには濃赤色の紅葉がその緑葉間に交り生ずる。――

 マサキノカズラと言えば日本神話に、アメノウズメが天岩戸の前で踊った時に頭にまとったのがマサキノカズラだという。古事記には次のように書かれている。

――天手力男神、戸の掖(わき)に隠れ立ちて、天宇受売命(アメノウズメノミコト)、手次(たすき)に天の香山の天の日影を繋繫けて、天の真折を縵と為して、手草に天の香山の小竹の葉を結ひて、天の岩屋の戸にうけを伏せて、踏みとどろこし、神懸かり為て、胸乳を掛き出だし、裳の緒をほとに忍し垂れき。爾くして高天原動みて、八百万神、共に咲ふ。――

 繁茂力の強さから木々や柱などに遠慮会釈なしに絡みついて来るテイカカズラを「うざったい」存在と思っていたが、なかなかどうして由緒正しい植物のようだ。


テイカカズラ

御衣黄桜と気象予報士

2024-04-12 20:39:55 | 季節
 熊本城三の丸の御衣黄桜が咲き始めたのを確認してから10日経つので、その後の開き具合を見に行った。ほぼ満開となった御衣黄桜を眺めていると僕以外誰もいないその木の下へ若い男性が歩いて近づいて来た。にこやかな表情で「よく見に来られるんですか?」と声をかけられたので、「えゝよく来ますよ」と答えた。御衣黄桜と鬱金(ウコン)桜は紛らわしいですねなどと、しばらく桜談義をしながら、桜の写真を撮っていると、本人の方から「私はKAB(熊本朝日放送)の夕方のニュースで天気予報をやっています」とおっしゃる。そういえば時々見るKABの夕方ニュースで見たことがあるような気がした。「季節情報の取材ですか?」とたずねると、「そうなんです。今日の夕方に使う予定です」
 帰ってからKABのサイトで確認したら、KAB夕方のニュース情報番組「くまもとLive touch」は毎週月~金の放送。彼は気象予報士の増田叡史さんだとわかった。さっそく今日の番組に目を凝らしていると彼が撮った「御衣黄桜」や「鬱金桜」がきれいに写っていた。


御衣黄桜

御衣黄桜の季節

2024-04-02 21:30:29 | 季節
 明日は「桜流しの雨」が降るらしいので、花見は今日がピークだったかもしれない。熊本城内の桜を見て回った後、三の丸漆畑の御衣黄桜(ぎょいこうざくら)の様子を見に行った。なんと花がもう開き始めているではないか。開花がおくれたソメイヨシノを待っている間に、御衣黄桜はじっと出番を待っていたのだろう。僕はこの御衣黄桜がソメイヨシノ以上に好きだ。あの萌黄色がたまらない。
 御衣黄桜といえば、夏目漱石の「虞美人草」に登場する「浅葱桜(あさぎざくら)」は御衣黄桜のことだという(諸説あり)。「浅葱桜」はヒロイン藤尾のイメージとして描かれているが、才色兼備だが傲慢で虚栄心が強い藤尾と御衣黄桜のイメージが僕は合わないと思う。
 それはさておき、もう1週間もすれば御衣黄桜が彩なす萌黄の世界が楽しみである。


咲き始めた御衣黄桜


御衣黄の名の由来となった高貴な女性の表衣(うわぎ:十二単の唐衣の下に纏う)の萌黄色

さくらさくら

2024-03-27 20:00:08 | 季節
 今日は快晴だったので桜の咲き具合を確かめようと本妙寺周辺へ。桜開花宣言はあったものの、まだソメイヨシノはパラパラといった具合だった。今週末には本妙寺参道一帯のまつり「桜灯籠」が行われるがはたしてどの程度開くだろうか。微妙なところだ。
 本妙寺大本堂前の桜の木が大胆に枝落とししてあった。枯死を避けるためか、落枝による事故防止のためか、やむを得ない処置とは思うが、開花を前に残念なことだ。昨年までの美しい光景は望むべくもない。
 柿原桃畑の桃の花はだいぶ咲いた。今週末には満開になるだろう。


本妙寺塔頭・東光院のしだれ桜は今が見ごろ


本妙寺大本堂のしだれ桜も満開


柿原桃畑の桃の花は今週末には満開か


花園中尾地区の四季花壇から阿蘇のけむりを望む


過年度の本妙寺大本堂前参道の桜

2015.3.27 熊本城二の丸広場「春のくまもとお城まつり」より舞踊団花童「さくらさくら」

桜は まだかいな!

2024-03-21 22:07:21 | 季節
 昨夜は楽しみにしていた「熊本城薪能」が行われたが、尋常じゃない寒さに直前になって見に行くのを断念した。予定どおり行われたらしいが観客の皆さんはさぞや寒かったろう。
 今日は風もおさまって寒さも幾分和らいだので熊本城周辺を歩いた。当初の桜開花予想では今日あたりが開花のはずだったが、一部の早咲きの桜以外はまだ蕾の状態。2、3日後あたりに開花と思われる。毎年3月末土曜日に行われる本妙寺の「桜灯籠(はなとうろう)」は今年は30日に当たるので
絶好の夜桜見物になるかもしれない。


監物台樹木園前の道路から大小天守を望む


KKRホテル熊本玄関前から大小天守を望む


過年度の桜灯籠より

   端唄 夜桜

門出の春

2024-03-15 20:27:55 | 季節
 今日は日中20℃にも迫ろうという陽気で、桜のシーズンもすぐそこまで来ていることを感じさせた。熊本城二の丸広場周辺では振袖に袴という和装に着飾った若い女性のグループを何組も見かけた。どこかの大学か専門学校の卒業式帰りのようだ。すれ違う時、よっぽど「卒業おめでとう!」と声をかけようと思ったが、ヘンなオジサンと思われそうで自重した。彼女たちがどんな道へ進んで行くのかわからないが、それぞれの人生に幸多かれと祈りたい。毎年卒業式のシーズンになると聴きたくなる「仰げば尊し(原曲)」を今年も聴いてみた。


仲間で記念撮影をするグループ


護国神社の早咲きの桜


柿原桃畑の花も開き始めた

    Song for the close of school(仰げば尊し)

桃の節供

2024-03-03 19:53:15 | 季節
 今日は「ひな祭り(桃の節供)」。わが家もささやかなお祝いをしました。
 この「桃の節供」もともとは女の子のお祭りではなく、春を寿ぎ、無病息災を願う厄祓い行事だったそうです。古代中国の「上巳の節句」が日本に伝わったものだそうですが、「端午の節供」を男子、「桃の節供」を女子のお祭りとしたのは日本的といえば日本的といえるかも。旧暦の3月3日は、桃の花が咲く頃なので「桃の節供」となったわけですが、今年は4月11日にあたりますので、桃の開花は過ぎているかもしれません。

 「新熊本市史」には熊本市における「ひな祭り」の民俗について次のように書かれています。
祭り
 旧暦の3月3日は、桃の節供ともいわれた。3月1日ごろから坪井、広丁、唐人町あたりに雛市が立っていた。一般的に長女の初節供のときには特別のお祝いをするが(嫁の実家から雛人形を贈る、ひし餅やふつ餅(よもぎ餅)をついて配るなど)、その他のときは、内祝い程度である。
 明治のころは旧暦で行われ、上巳(じょうし)の祝といって草の餅をこしらえ、初節供の家では「初ひな」と称し、ひなを床狭しと陳列した。まつりの2、3日前になると、各町に「ひな店」がでたが、坪井広丁などには、数軒の小屋をたて、ひな店を出し日夜売り出した。また餅つきの音も聞こえ、桃桜の花売りも徘徊した。秋津町沼山津には、千代紙で作った人形をひなまつりに川に流すという古い形を残した習俗があった。もともと桃の節供は家族や家のけがれを払うためのみそぎの行事であった。

   写真は柿原の桃畑ですが、3月下旬にはこのような開花が見られると思います。



   桃の節供にふさわしい映像を選んでみました。

今年の花見は早いかも…?

2024-02-20 19:39:28 | 季節
 昨日、熊本も「春一番」が吹いたと報じられました。そして今日は気持悪いくらいの暖かさ。予報されていた雨もほとんど降らず、日中は気温が22℃にも達し、まるで4月中旬以降のよう。この分で行くと、3月20日という桜開花予想もだいぶ早まるかもしれません。ただ、桜の名所である熊本城は桜の老木の伐採が進められており、今年はちょっぴり寂しい花見になるかもしれません。
 過年度の桜の風景を並べてみました。










▼東都上野花見之図・清水堂(歌川広重)
 東京在勤中、何度か花見に訪れた上野の山は花見の名所。この絵は上野の山の華やかな花見風景を描いた歌川広重(1797-1858)の「東都上野花見之図」です。下の「長唄 元禄花見踊」にも唄い込まれた「清水堂」下あたりの風景が描かれています。



▼長唄 元禄花見踊
 この唄が作られたのは明治時代に入ってからですが、上野が桜の名所となったのは、三代将軍徳川家光の頃で、元禄時代(1688-1704)には、数ある江戸名所の中でも随一の人気を誇っていたそうです。豪華絢爛な時代の空気がよく表現されています。

2024年2月12日 桜の馬場城彩苑わくわく座 舞踊団花童&はつ喜

春の調べ

2024-02-09 22:07:07 | 季節
 今日は夏目漱石の誕生日。ちょうど1年前、「夏目漱石内坪井旧居」が7年ぶりに再公開された。それからあっという間に1年が過ぎ、ふたたび訪れた春をたしかめに野辺を散策してみた。吹きわたる風はまだ冷たさが残るものの、木々のそよぐ音や鳥のさえずりは春の訪れを喜ぶ歌のようにも聞こえる。

  三味線に冴えたる撥の春浅し(夏目漱石 大正初期頃)


成道寺川のせせらぎ


八景水谷の水辺で泳ぐマガモ


咲き始めた河津桜を横目に通り過ぎるくまモンラッピング電車


2014.4.6 水前寺成趣園能楽殿 水前寺まつり
  笛 藤舎元生
三味線 松野孝子
  筝 井上洋子
  唄 杵屋六花登・宇野民子
小 鼓 中村花誠・今井冽・鬼塚美由紀
大 鼓 今村孝明
蔭囃子 上村文乃
立 方 舞踊団花童

厄除け虎くぐり

2024-02-03 22:23:22 | 季節
 今日は節分。加藤神社の節分祭が行われた。神事の後、参拝者は虎口をくぐって厄除けを行なう「厄除け虎くぐり」をし、本殿に参拝し福豆をいただいていた。
 毎年この日は虎口をくぐることにしている。「虎穴に入らずんば虎子を得ず、か」なんてわけのわからないことを考えながらくぐると、気のせいか年々くぐるのが窮屈になってきたような気がする。参拝した後、家族人数分の福豆をいただいて帰った。


体が硬くなった年配者はくぐるのに苦労する方も多いようだ。

   この行事は朝鮮出兵時の加藤清正公の虎退治伝説にちなんだもの。

加藤清正朝鮮国ニテ猛獣ヲ退治スルノ図(珍齋呂雪 繪)

長唄 加藤清正公

春隣(はるとなり)

2024-01-13 19:13:15 | 季節
 午後、入院中の母を見舞いに行く。経過は順調のようだ。入院した当初はCCUだったが、その後病室を三度変わり、現在は東側が開けた4人部屋。病窓からは熊本城数寄屋丸や本丸御殿、そして熊本市役所の上層階部分などが見える。

  病窓の 向こうに古城 春隣

 本丸御殿中庭やその右側の熊本市役所ビルを眺めていると、12年前の春、本丸御殿中庭で行われた「桜の宴」の風景が目に浮かんだ。今思えば、あの時の風景は二度と見られないものだったのかもしれない。
 帰りに護国神社の梅の花を見に行った。早咲きの梅はもう花開いていた。

2012.4.7 熊本城本丸御殿中庭 ~桜の宴~ ザ・わらべ「肥後の花娘」※右後方に市役所ビル


護国神社の早咲きの梅の花

忘年会シーズン

2023-12-16 19:47:26 | 季節
 昨日は年末の親戚挨拶回りをした。ある親戚の家を訪れるとちょうどご主人がほろ酔い気分で帰って来られた。同級生仲間と忘年会をやったのだという。そう言えば家の外での忘年会などとはすっかり縁遠くなってしまった。会社員の頃は温泉旅館に泊りがけの忘年会もよくやった。那須勤務時代の塩原温泉や鳥栖勤務時代の嬉野温泉、熊本勤務時代の菊池温泉などが思い出深い。宴会ではコンパニオンを呼んだりして飲めや歌えの乱痴気騒ぎになったこともある。そんな宴席でよく聞いたのがお座敷唄の定番「お座敷小唄」や「芸者ワルツ」など。11年前にYouTubeにアップした「こわらべ」が踊る「お座敷小唄/芸者ワルツ」を久しぶりに視聴していたら、当時、急いでアップをしたと見え、画質の粗さが気になったのでリマスターして再アップした。

お座敷小唄/芸者ワルツ

実りの秋

2023-10-02 21:21:14 | 季節
 今年も実りの秋を実感したくて七城町や菊鹿町の田園風景を見て回った。菊池川中流域に広がる田圃は黄金色に染まって壮観だ。コースの最後はやはり菊鹿町の「番所の棚田」まで足を延ばした。途中、好きなスポット「上内田神社」周辺の風景を見ようと畦道に車を停めた。2年前、同じ場所で高齢の農夫のおじさんと出会い、世間話をしたことを思い出した。当時84歳とおっしゃっていたので現在は86歳のはず。まだお元気に農作業をしておられるだろうか。
 最終目的地の「番所の棚田」は彼岸花が盛りを過ぎていたこともあって、毎年見ている目には随分寂しい風景に見えた。今年もまた休耕田が増えたようだ。農家の高齢化や後継者不足の厳しい現実と棚田というハードな耕作環境を聞いているのでやむを得ないとは思うが、14年前初めて訪れた時、この世のものとは思えないほど美しかった黄金と真紅の鮮やかなコントラストの棚田が鮮明に思い出され、年々、美観が衰えていくのが残念でならない。


上内田神社(山鹿市菊鹿町上内田)の鎮守の杜


今年の「番所の棚田」(山鹿市菊鹿町矢谷)

盆踊り やがて寂しき・・・

2023-08-22 22:14:24 | 季節
 残暑と言うにはあまりにも猛烈な暑さが続く。それでも朝晩には秋を感じる瞬間がある。夏まつりのシーズンも終わりに近づき、わが町内の校区夏まつりも今週末に行われるが、それがシーズン最後になるのではないだろうか。他府県では「おわら風の盆」など9月のまつりもあるにはあるが。

 今年の夏はまつりやイベントには一切行かなかった。それでもゆく夏のメランコリックな気持には変わりがない。やっぱりユーミンの「晩夏」を聴きたくなった。

(竹中邦彦氏撮影)