徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

自己実現の夢

2023-09-21 21:17:02 | 音楽芸能
 5,6年ぶりに車で九州自動車道を走った。車窓から高良山を遠望しながら遠い昔のことを思い出していた。
 僕がブリヂストン防府工場に勤めていた1977年、工場建設の第一期工事が終わり開所式が行われた。その関連行事として久留米工場の吹奏楽団を招き、開所式および防府市公会堂での演奏会を開催した。
 その演奏会の前日、吹奏楽団員の一人から悩みを聞く機会があった。彼は高校時代、吹奏楽部で活躍し、その腕をさらに磨きたいと、実業団ではトップクラスの吹奏楽団を持つブリヂストンに入社した。しかし、入社後数年経過し、このまま会社員の余技として吹奏楽を続けて行くのか、はたまたプロの音楽の世界にチャレンジするべきか悩んでいた。僕はその時、何のサジェスチョンもできなかったが、演奏会では生き生きとしていた彼らが日頃そんな悩みを抱いていることを初めて知った。それ以来、高校や中学の吹奏楽部の演奏を見る度に、彼らは卒業後、どんな希望を抱いてどんな道へ進んで行くのだろうと気になるようになった。そして一人でも多くの吹奏楽部OB・OGたちが自己実現できればいいなと願っている。


チャリのはなし。

2023-09-20 22:07:37 | 音楽芸能
 先月「夏目漱石内坪井旧居」にシェアサイクルが5台ほど置かれたという話を書いた。この熊本市の観光客向けサービスのことを「チャリチャリ」というらしい。自転車のダウンチューブにも「chari」の文字が書かれている。
 ところで自転車のことを「チャリ」と呼ぶのは「チャリン」というベルの音からきているらしいが、「チャリンコ」「ママチャリ」「原チャリ」などの言葉はいったいいつ頃から定着したのだろうか。

 昨日、YouTubeマイチャンネルの「牛深ハイヤ節」にSさんという方から面白いコメントが寄せられた。曰く「裾上げて踊る、かつての散財の踊りチャリ舞の伝統が受け継がれてるのでしょうか。因州因幡、御所のお庭とか。・・・」
 「チャリ舞」という言葉は久しぶりに聞いた。お座敷芸のちょっとお道化た滑稽味のある舞のことをいう。大正6年に発行された当時芸者必携の歌本「十美人 : 芸者自慢」の中に「チャリ舞」の項目があり、20数曲挙げられているが、その中から「御所のお庭」と「背戸の段畑(なすとかぼちゃ)」を下に掲載した。
 「チャリ舞」の「チャリ」は動詞の「茶る」からきているので自転車とは直接のつながりはないが、「十美人 : 芸者自慢」の「チャリ舞」の項の少し前には「自転車節」が一項目として挙げられており、これぞまさに「チャリ舞」ともいえそうでもあり、「チャリ」つながりということで最後に「自転車節」も掲載した。


シェアサイクル「チャリチャリ」

御所のお庭

背戸の段畑(なすとかぼちゃ)

熊本自転車節

敬老の日

2023-09-18 21:01:36 | 
 今日はいまだに納得していない「敬老の日」。「敬老の日」が第3月曜日と変わったのはもう20年前のこと。かつて「敬老の日」が9月15日だった頃は、熊本市民にとって最大の祭である「藤崎八旛宮秋季例大祭」の随兵行列や飾り馬の奉納が行なわれる日。僕らが子供だった頃、年中で一番心浮き立つ日でもあった。国民の祝日である「敬老の日」が第3月曜日ということになってしまったあおりを受け、「藤崎八旛宮秋季例大祭」の日程も毎年日にちが変わることになった。
 それはさておき、今朝は家内が炊いた赤飯で母を含めた三人で祝った。「老々敬老」などと言いながら笑い合った。先日、町内会の敬老祝いが三人分届いてあらためて現実を認識したのだった。今日のNHKニュースでは「敬老行事を支える人たちも高齢化が進み、行事の継続を断念せざるを得ない地区もある」というニュースを聞き、身につまされた。

When I Grow Too Old To Dream (Perry Como)

御旅所の風景

2023-09-17 19:51:15 | イベント
 今日は藤崎八旛宮例大祭のクライマックス、神幸行列(随兵)の日。朝から新町御旅所へ。随兵の2団体の到着を待った後、能楽殿での能奉納を見る。
【番組】 
 喜多流 素謡「翁」
 喜多流 半能「高砂」…脇能物
 金春流 能「経政」…修羅物
 和泉流 狂言「太子手鉾」
 喜多流 半能「東北」…鬘物
 金春流 半能「鵜飼」…切能物

 3年ぶりに行われた昨年の神幸行列は台風の影響で10月に延期され、能奉納の演目も大幅に変更となり、能や半能は行われなかったので今年は随分久しぶりに御旅所能奉納を見た気がする。個々の演目についてはまた別の機会に。
 能を見た後、薬師坂を登り、漆畑を通り抜けて帰ったが、馬追い勢子たちの昼食と休憩所になっており、いつもは寂しい三の丸に人が溢れているという不思議な光景を見た。


喜多流 半能「高砂」後シテ住吉明神 狩野了一


喜多流 半能「東北」後シテ和泉式部の霊 友枝雄人


御神輿も御旅所に鎮座、夕随兵の出発まで静かに待つ


熊本城三の丸漆畑は馬追い勢子たちの休憩所と化す

まつり囃子

2023-09-16 21:02:49 | イベント
 ラフカディオ・ハーンが
 「それは気違いじみた大祭で、おかしな飾りをつけた馬をひきまわし、ボシタリ!ボシタリ!と
  叫ぶ。これは朝鮮出兵前に加藤清正が八旛様に唱えて以来の記念すべき掛け声・・・」と言い、
 種田山頭火は
 「熊本は今日が藤崎宮の御神幸、飾馬のボシタイ/\の声が聞えるやうな気がする、熊本は第二
  の故郷、なつかしい・・・」と言った。
 明日はそのまつり囃子が熊本の街に響き渡る。

 46年前に他界した僕の祖母は、明治16年、藤崎宮にほど近い一番被分町(現在の水道町)に士族の子女として生まれ育った。西南戦争で焼失した藤崎宮が藤崎台から井川渕に遷座したのは明治11年だが、本殿が整ったのは明治17年という。祖母は新しい藤崎宮とほとんど同じ時代に生まれ、生きてきたとも言える。幼い頃から「お八旛さん」と呼び、産土神として藤崎宮を篤く崇敬してきた祖母にとって例大祭は特別な大まつりだったのである。そのせいか、毎年、飾馬奉納順位が鳥居基に次ぎ二番目の水道町には僕は特別な思い入れがある。


水道町の飾馬奉納


藤崎八旛宮例大祭 ~飾馬飾卸~

2023-09-15 18:07:10 | イベント
 熊本に秋の訪れを告げる藤崎八旛宮例大祭も今日が三日目。熱中症警戒アラートが発せられる中、「飾馬飾卸(かざりうまかざりおろし)」が行われ、今年飾馬を奉納する57団体が次々と鳥居をくぐった。楼門前で団体ごとにお祓いを受け、明後日行われる神幸行列への参加認定証を受け取り、気勢をあげて鉦太鼓ラッパの音と「ドーカイ ドーカイ」の声も高らかに暑さをものともせず街へ繰り出した。






妖しい美術図書

2023-09-14 21:05:50 | 美術
 今日は散歩を兼ねて久しぶりに上通の熊本市現代美術館へ。美術図書が並べられたギャラリーを見て回っていると、とある本棚の隅に、まるで僕を誘うかのように置かれた図書が目についた。手に取って室内のテーブルにつき表紙を確かめてみた。「甲斐荘楠音の全貌」とあった。名前はどこかで聞いたことがあるような気がした。表紙を開け、ページをめくっていくと、主に女性を描いた日本画集のようだ。しかし、上村松園とも鏑木清方とも明らかに違う画風である。女性をただ美しく描こうとしているのではない。女の情念をおどろおどろしく描いているように見えた。その画風に引き込まれ、つい時間の経つのも忘れて見入っていたが、キリがないのであらためてもう一度見に来ようと思い美術館をあとにした。
※甲斐荘楠音(かいのしょう ただおと)



 帰り道はいつものとおり「夏目漱石内坪井旧居」の前を通る。せっかくなので庭を一回りして帰ろうと裏口から入った。縁側前の百日紅の花が綺麗だったので写真を撮っておこうとコンデジを構えると、縁の下に二匹の野良猫がいることに気付いた。猫たちは慌ててどっかへ消えたが、ふと「吾輩は猫である」を思い出した。漱石の小説は東京の千駄木に住んでいた頃の設定のようだが、ひょっとしたらここ内坪井に住んでいた頃も小説と同じような光景が見られたのかもしれないなと思った。



 新坂を登り始めると、山側の法面にくずの花が咲いていた。辺りに甘ったるい香りを漂わせている。近年はこの一帯のくずの繁茂が凄まじい。日頃、外来植物が在来植物を駆逐するのではと心配しているが、日本からアメリカに渡ったくずが繁茂し、アメリカでも困っているそうな。


新日本風土記 ~うたう九州 長崎、佐賀、熊本の旅~

2023-09-13 20:03:20 | テレビ
 2ヶ月待たされたBSプレミアム「新日本風土記 ~うたう九州 長崎、佐賀、熊本の旅~」を昨夜やっと見ることができた。長崎・佐賀・熊本は民謡、わらべ歌、歌謡曲、Jポップまで幅広い「うた」の宝庫ということで、ジャンルを問わずいろんな「うた」と人々の生き様が映し出された。
 個人的には日頃、ご好誼を賜っている本條流直門師範の本條秀美さんが「おてもやん」と「田原坂」を唄っておられる映像を拝見できて嬉しかった。できればフルコーラス聴きたかったのだが……。
 今回は「うたシリーズ」の第4弾ということなので、今回の肥前・肥後以外の九州編をいずれまたやるのだろう。ちょっと1時間に詰め込み過ぎの感もあったが、「おてもやん」や「田原坂」や「五木の子守唄」など1曲でも1時間番組ができるほどのエピソードがあるので、また別の機会があればいいのだが。ともかく1時間を九州の「うた」で楽しんだ。


田原坂公園の美少年像

「新日本紀行」思い出の2本

2023-09-11 22:20:50 | テレビ
 明日のBSプレミアム「新日本風土記」で「うたう九州 長崎、佐賀、熊本の旅」がやっと放送される。当初7月18日に放送される予定だったが、九州北部豪雨災害のため延期されていたもの。どんな内容になっているか楽しみだ。
 この「新日本風土記」の前身が「新日本紀行」で、ちょうど僕が高校生の頃から放送が始まったので、かなりの本数を見ているはずだ。しかし、内容はとなるとほとんど憶えていないが、再放送があると「あゝこれ見たな」と思い出す場合が多い。そんな中で妙に印象深い放送が二つある。一つは8月23日のブログ記事でも触れた1976年9月に放送された「おわら風の盆」。そしてもう一つが1975年5月に放送された「都をどりのころ~京都・祇園」である。それまで興味もなかった京都祇園の舞妓さんに興味を抱いた最初だったかもしれない。そしてその番組で忘れられないのが、新人舞妓さんがお見世出しを前に男衆に連れられて関係先を挨拶回りをする場面。初々しさとともになぜか哀れさを感じさせた。その舞妓さんの名前も憶えていなかったのだが、10年ほど前に放送された「新日本風土記」で、今では祇園の名取芸妓としてトップに君臨しているまめ鶴さんだと知った。そしてまめ鶴さんは今年3年ぶりに行われた「都をどり」でも現役芸妓のトップとして舞台を務められた。※右の写真はまめ鶴さん

第七景と第八景にまめ鶴さんの姿が見える

初秋の無常観

2023-09-10 19:22:41 | 
 今日は日差しもだいぶ和らぎ、涼しい風も吹いて来たので熊本城二の丸から三の丸にかけて歩いた。

  • 足場の取れた監物櫓
     新堀橋のたもとまで来ると数日前に通った時と何か様子が違う。「あ!足場が無くなっている!」と気付いた。石垣や建物の復旧工事で随分長い間、監物櫓の周りに組まれていた工事用の足場が無くなっていた。見映えがよくなったのはもちろんだが、櫓の向こうの樹木園が再開されるのもそう遠いことではないことが嬉しい。


  • チアダンスでひと息
     二の丸広場を通り抜け、護国神社の前を通って三の丸方面へ。藤崎台球場ではプロ野球独立リーグ・九州アジアリーグの火の国サラマンダーズの試合日のようで、球場前広場ではチアガールのSallysや地元のダンスキッズたちがファンにパフォーマンスを披露していた。しばらく拝見、ひと息ついた。


  • また来ん春の種になるべき
     三の丸の漆畑周辺を歩く。春に美しい萌黄色の花を楽しませてくれた御衣黄桜の枝を見上げながら、この葉もやがて枯葉となり、次の若葉と世代交代し、再び美しい花を咲かせる季節に備えるのだろうなぁという感慨に浸った。


  • 八日目の蝉
     漆畑を歩いていると数えきれない程の蝉のむくろを見る。どうしても角田光代の「八日目の蝉」を思い出してしまう。するとNHKでテレビドラマ化された時、主題歌として使われた城南海が唄う「童神」が頭に浮かんできた。世の無常を感じる。