読書な日々

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『「日本=百済」説』

2011年07月07日 | 人文科学系
金容雲『「日本=百済」説』(三五館、2011年)

「日本=百済」説―原型史観でみる日本事始め
金 容雲
三五館
『日本語の正体』につづいて二冊目になる。前作でも何度も触れられていたが、飛鳥時代、奈良時代、平安時代などはずっと日本の支配者は百済人だったという視点から、古事記や日本書紀などを読みといていく本。こんな刺激的で衝撃的な本は日本人には書けない、あまりにも天皇制の呪縛が強すぎるからということらしい。

うちでは昨年10月にJ-comで放送されたペ・ヨンジュン主演の『太王四神記』が録画してある。最近になってそれをもう一度見直している。それは歴史的には広開土王(好太王)のことで390年前後から410年前後までのことになる。もちろんチュシンの王とか四神の守り主というのはフィクションであるのだが、久石譲の音楽とあいまってじつに面白いので関心しながら見ている。

そこに出てくる百済は西百済と東百済に分かれているという。西百済はどうみても今の中国の山東半島あたりにあるように書いてある。しかしあんなところに百済があったのだろうかと現在の地図を広げながら、首をかしげつつ見ていたのだが、この本によると、高句麗が農耕民族であるのにたいして百済というのは海洋民族でもあり非常に行動力があったので、今の平壌から鴨緑江上流にあった国内城そして遼東半島を領土とする高句麗を挟んで黄海のちょうど奥まった地域(当時の北魏と国境を接するあたり)にも百済の分国があったと書かれている。たぶんこれがドラマで出てくる西百済なのだ。(もちろん同じころ、日本も百済の分国であった。)

それと昔チュシンという広い国土をもつ国があってという『太王四神記』の基本テーマは、どうも13世紀頃に朝鮮半島が統一されたときに作られた檀君神話がもとになっているようだ。この本では、半島が統一されたときに、それまでの各小国がもっていた神話が統合されて作られたということらしい。それは天帝のファンウォンの庶子にファンウン(ペ・ヨンジュンがこれを演じている)という神がいて、人間を救うために太伯山の頂きの神壇樹(火天会のある阿仏欄寺の地下にこれがあるということになっている)に天降った。そこの洞窟には虎と熊(キハや火天会がこの虎族で、スジニたちが熊族の子孫)が住んでいてて、自分たちを人間の姿にしてほしいとファンウンに願い出た。ファンウンはよもぎ一束とにんにく20個を与えて、「これを食べながら、百日間日光を避けてお籠もりをせよ」と命じたところ、教えに従った熊は人間の女になれたが、虎は人間になれなかった。この熊女がファンウンの愛を受けて生んだのが最初の君主である檀君王倹で、檀君はアサダルに都を定めて国を開き1500年間治めたという話である。

これをもとにして『太王四神記』は面白い物語に作られている。四神にそれぞれ守り主がいて、それと知らずに彼らがチュシンの王の生まれ変わりであるタムドクを助けて、チュシンの再興を促す。タムドクが最初に愛したキハはじつは虎族の子孫で四神を奪って天を自由に操ることを狙っている。最初はただの酒飲みで不良少女のように思われていたスジニがじつは熊族の子孫でタムドクを助けることになる。

チェジュ島に巨大セットを組んで撮影したらしいが、手法はもう映画を作るのと同じようで、とてもテレビドラマのちまちました感じではない。テレビの小さな画面で見るよりも映画館の巨大スクリーンで見るほうがよほど合っている。キハとタムドクの最後の別れの場面など、回想シーンの使い方も秀逸で、上さんと毎日一回分づつ見ているが、もうその間はふたりともすごい集中力で、一言も言葉もかわさない。それももう全部見終わってしまって、また民放の下らない番組ばかり見ることになるかと思うと(見なきゃいいんだけど)うんざり。

本の話から『太王四神記』のほうに流れてしまったが、もっと勉強してみたい分野ではある。だが、朝鮮語を勉強しないと話にならないな。それに大嫌いな古語も。


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