吉本ばなな『キッチン』(福武書店、1988年)
吉本ばななさん、初めて読みましたが、『キッチン』とその続編の『満月』ともに、なんだか心の温まるような、よい作品でした。
私は吉本隆明にたいしては「けっ」と思っているので、その娘ということでずっと食わず嫌いで避けていましたが、やっぱそういうのはよくないなと、反省しきり。
キッチンというところが大好きな桜井みかげは、幼少のころに両親をなくし、最近祖母が亡くなり天涯孤独になった。そこへ、祖母がよく買い物に行っていて親しくしていた花屋のバイト店員で学生の雄一が自分のマンションで暮らすように勧めにくる。こうしてみかげと雄一の父親である母親のえり子さんとの共同生活が始まる。二人はほとんど料理らしい料理をしないので、みかげが料理当番のようになる。みかげは料理がすきで、料理の勉強も独学でやっている。彼女は二人のマンションを出て独立することになる。
でも雄一の父親である母親のえり子さんはストーカーのように付きまとう客に殺されてしまう。立ち直れない雄一から久しぶりに連絡が入り、彼のマンションに行って彼に料理を作ってあげる。みかげが料理教室の先生の付き添いで伊豆を旅行している間、雄一も旅行に出る。ある晩、みかげは嫌いなものばかりが出されたため何も食べなかったことから、夜中にカツどんを食べに出る。それがあまりにもおいしかったので、雄一にも食べさせようとタクシーを拾って何時間もかけて雄一の泊まる旅館へ走る。そして彼にカツどんを食べさせて帰る。
こういうつかず離れずの人間関係というのは本当はすごく難しいものだろうと思う。だいたいが人間というのは、白黒つけたがる、とくに男女関係はそうだろう。だからこういう一緒に暮らして、みんなからは同棲していると思われているような生活なのに、じつはそうではなく、肉体関係はもちろんのこと、精神的にも恋愛関係にあるのかどうかも、自分たち自身が分かっていないような関係というのは、耐えられるのだろうか、って思ってしまう。
でもこういうつかず離れずの関係というのは、お互いのいいところが見えて、汚いところを見なくてすむ、じつは一番いい関係なのかもしれない。もちろんそこには結婚だとか子育てだとかというようなややこしい話は、割り込めない。だから、案外お年寄りの恋愛にはこういうような、つかず離れずの関係がいいんじゃないのかなと思いながら読んだのだった。案外、高齢化社会を迎えつつある、これからの恋愛のあり方を暗示しているのかもしれない。
料理の好きなみかげの形象がいい。阿川佐和子の「オペラ・スープ」の主人公もスープを作るのが大好きな女性だったが、なんだかちょっとあの主人公に似ていなくもない。料理をするって、ほんとうは面白い。私のところは共働きだし、どちらかといえば私のほうが時間的に余裕があるので、昔からよく晩御飯を作ってきた。だいたいが定番のおかずというものがあって、それはマーボ豆腐(なす)、ポテトサラダ、ひじきの煮物、きんぴらごぼう(とそのバリエーション)、鶏肉のトマトソース煮などなどで、それにいろいろなバリエーションを加えて作るのは、ちょっとした変化でずいぶん感じが変わるので面白い。ときどき新しいメニューにも挑戦したりするが、どうもうまく行かない。料理をすると、あれこれメニューの組み合わせを考えたり、材料の残りや買い物の内容を考えたりしなければならないわけで、けっこう頭を使う作業だといえる。
ファミコンなんかで頭の体操なんかするよりもよっぽどボケ防止に合っていると思うがどうだろうか?
吉本ばななさん、初めて読みましたが、『キッチン』とその続編の『満月』ともに、なんだか心の温まるような、よい作品でした。
私は吉本隆明にたいしては「けっ」と思っているので、その娘ということでずっと食わず嫌いで避けていましたが、やっぱそういうのはよくないなと、反省しきり。
キッチンというところが大好きな桜井みかげは、幼少のころに両親をなくし、最近祖母が亡くなり天涯孤独になった。そこへ、祖母がよく買い物に行っていて親しくしていた花屋のバイト店員で学生の雄一が自分のマンションで暮らすように勧めにくる。こうしてみかげと雄一の父親である母親のえり子さんとの共同生活が始まる。二人はほとんど料理らしい料理をしないので、みかげが料理当番のようになる。みかげは料理がすきで、料理の勉強も独学でやっている。彼女は二人のマンションを出て独立することになる。
でも雄一の父親である母親のえり子さんはストーカーのように付きまとう客に殺されてしまう。立ち直れない雄一から久しぶりに連絡が入り、彼のマンションに行って彼に料理を作ってあげる。みかげが料理教室の先生の付き添いで伊豆を旅行している間、雄一も旅行に出る。ある晩、みかげは嫌いなものばかりが出されたため何も食べなかったことから、夜中にカツどんを食べに出る。それがあまりにもおいしかったので、雄一にも食べさせようとタクシーを拾って何時間もかけて雄一の泊まる旅館へ走る。そして彼にカツどんを食べさせて帰る。
こういうつかず離れずの人間関係というのは本当はすごく難しいものだろうと思う。だいたいが人間というのは、白黒つけたがる、とくに男女関係はそうだろう。だからこういう一緒に暮らして、みんなからは同棲していると思われているような生活なのに、じつはそうではなく、肉体関係はもちろんのこと、精神的にも恋愛関係にあるのかどうかも、自分たち自身が分かっていないような関係というのは、耐えられるのだろうか、って思ってしまう。
でもこういうつかず離れずの関係というのは、お互いのいいところが見えて、汚いところを見なくてすむ、じつは一番いい関係なのかもしれない。もちろんそこには結婚だとか子育てだとかというようなややこしい話は、割り込めない。だから、案外お年寄りの恋愛にはこういうような、つかず離れずの関係がいいんじゃないのかなと思いながら読んだのだった。案外、高齢化社会を迎えつつある、これからの恋愛のあり方を暗示しているのかもしれない。
料理の好きなみかげの形象がいい。阿川佐和子の「オペラ・スープ」の主人公もスープを作るのが大好きな女性だったが、なんだかちょっとあの主人公に似ていなくもない。料理をするって、ほんとうは面白い。私のところは共働きだし、どちらかといえば私のほうが時間的に余裕があるので、昔からよく晩御飯を作ってきた。だいたいが定番のおかずというものがあって、それはマーボ豆腐(なす)、ポテトサラダ、ひじきの煮物、きんぴらごぼう(とそのバリエーション)、鶏肉のトマトソース煮などなどで、それにいろいろなバリエーションを加えて作るのは、ちょっとした変化でずいぶん感じが変わるので面白い。ときどき新しいメニューにも挑戦したりするが、どうもうまく行かない。料理をすると、あれこれメニューの組み合わせを考えたり、材料の残りや買い物の内容を考えたりしなければならないわけで、けっこう頭を使う作業だといえる。
ファミコンなんかで頭の体操なんかするよりもよっぽどボケ防止に合っていると思うがどうだろうか?