仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

お供えは私向きに供える

2010年03月24日 | セレモニー
仏前への志や弔辞、お供えのお菓子などは私向きにお供えするということ。まず結論から、それは特に浄土真宗の場合は、凡夫の私を中心に、荘厳が組み立てられているからです。以前、ある雑誌に書いたものがありましたので転載します。

 過日、友人の住職とお墓のお供えの話しとなりました。その住職いわく、お墓にお花を供えるのに、手前を裏にして立花の正面がお墓側に向くように供えてある花があるとのこと。「へー、そんな人がいるんだ」と聞いていましたが、これは笑い事ではないようです。

葬儀の折に、弔辞を手前を頭にして、尊前側に向くように供えてある場合を多く見かけます。これも発想自体は同じです。お花をなぜ、参拝者側を表向きにして供えるのか。阿弥陀さまの働きは、常に私に向けられているから、それをお供えしたお花で表現すると私向きになります。このお花の向きについて、過日先輩から有り難い話を聞きました。

その先輩が坊守さんから『仏さまに供えるお花は、なぜ仏さまに向かってではなく、私向きに供えるのか』と問われたのだそうです。その方いわく『『南無阿弥陀仏』(念仏)の仏さまに供えるから』と答えたそうです。阿弥陀如来は『南無阿弥陀仏』(念仏)と称えられる仏になるという如来です。私が口にする『南無阿弥陀仏』こそ仏そのものです。その私の口に届けられている『南無阿弥陀仏』の仏さまに供えるのだから、花を私向きに供えるという理解です。

 お供えの原点に考えるとき、知人のHさんのことが思い出されます。Hさんはがん体験者で真言宗のご縁のあった方です。乳がんを患い治療、その後転移し病気が落ち着いた頃、お母さんと死別します。
 そのHさんが、ある日、新聞広告で四国四十八ヶ所巡りを見つけます。その時、「よし、お母さんに、これをお供えさせて頂こう」と思ったのだそうです。そして四国四十八ヶ所を巡り、その旅の話をして下さいました。そうしたご縁が積み重なったのでしょう。過日、真言宗で得度をしましたとのお手紙を頂きました。

 四十八ヶ所巡りをお供えさせて頂く。その行為を通して、私の信仰生活が豊かになる。私はこれが仏さまへのお供えの原点のように思われます。今日は父の命日、仏壇の前で心静かな時を持たせて頂く。それをお供えとする。今日は母の命日。今日一日、腹を立てないことを実践する。それをお供えとする。今日は祖母の命日。行譜の正信偈をお勤めし、それをお供えてする。そしてその極まりが、阿弥陀如来のお慈悲を喜ぶことです。何故にそれほど、阿弥陀如来のお慈悲を喜ぶことが重要なのかと言えば、阿弥陀如来のお慈悲を喜ぶことは、いつ、いかなる私であっても、その私を大切にできる世界がそこに開かれていくからです。

 お墓の前で、お花を飾り、供物を供え念仏を申す。お墓は私の命の源泉である先祖を追慕する空間です。その一連のお給仕やお勤めを通して、仏さまのお育てを喜び、浄土真宗のみ教えの有り難さ、浄土真宗の教えを聞く境涯に誕生し、念仏のご縁を育んで下さった先祖のお徳を讃える。そのことすべてが、仏さまへのお供えなのです。仏さまへのお供えは、私が仏さまに向かって物や心を捧げることですが、それはそのままが仏さまから私への恵みでもあります。お供えは「してあげる行為」ではなく、「させて(私が)頂く行為」、亡き方や仏さまからの賜りものなのです。(以上)

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1 コメント

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有り難うございました。 (Teko)
2010-03-24 17:48:42
今晩わ、本日は順正寺にて 心に沁みるご説法を有り難うございました。
思いがけず「光 風のごとく」の本も頂き 有り難うございました。
先生をお送りした後 部屋に戻りましたら 手提げ袋が残っていて
ご住職の所へ飛んで行き・・・お土産が・・・。
二人してお渡しするのを忘れてしまいました、本当に申し訳ありません。

後日お送りすると話されておりましたが 本当に申し訳ありませんでした。

先生のお話は身近な問題に例えてお話下さるので楽しく、解りやすく心に響いてまいります。

HPはブログのブックマーク内 Teko'sRoomです。
お忙しい事と思いますが 目に余る事がございましたらご助言頂けると嬉しいです。

これからも ブログにて先生のお人柄に触れられるのが楽しみです、宜しくお願い致します。
今日は有り難うございました。
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