11時過ぎに、
「東横線が動き始めました」
渋谷の駅に向かう、その途中で、ビルの端に「メノーラ」を見つける、メノーラとはユダヤ教の聖具、七枝の燭台、トーラ(モーセ五書)とともに重要なモノ、あの暗さの中で、どうして発見できたのか、異常な精神状態だったのかもしれない。
あの夜の日本人は立派だった、渋谷の駅はヒトの海だったが、誰一人として列を乱さない、みな、前の人の後に続き、電車に乗る、
「ゴットン、ゴットン」
いつもよりは大分おそい、それでも運転手は、一生懸命、
「これが、日本人なんだ」
駅を降り、自転車置き場から自転車を引き出し、鶴見川の土手に上る、対岸の灯りが光っている、沈み込むようね景色だ、
「まるで、ちがった世界だ」
その時、この宇宙とは別の宇宙があり、なにかの拍子に、それが重なることがあるのでは、という思いが浮かんだ。