年明け一発目のSyrup16g全曲レビューです。本年もまたよろしくお願いします。
前回が優しい曲だったので
今回もその流れに続いて、「サイケデリック後遺症」をレビュー。
儚くも美しく、そして切実でもある一曲。この曲もずっと触れたかった一曲であります。
サイケデリック後遺症 アルバム「delayed」収録
この曲は他の曲にも増して抽象的な詞ですからレビューを書くのも色々思う部分は多いんですけど
個人的な解釈だと、この世の中に存在する物事や事象って全て曖昧で不確かだと思うんです。
何もかもが流動的で目に見えなくて、形も定まらないし一定でもない
触れれば消える事もしばしばで
永遠に心が休まる事なんて実はないんじゃないか、と思うくらい。
一秒前の出来事ですら、
あれは夢だったんじゃないか、幻覚だったんじゃないかって感じちゃう程に
確かなものなんて本当はどこにもなくて、探しても見つからない、だからこそ求めるんじゃないか、っていう。
【手を上げて 届こうとして さあ出来たでしょう それだけで】
しかし、サイケデリックで不確かで不安だからこそ
確かなものを、
消えないものを
そんな「確実」を求めるのも人間の本質だしそこが美しいと思える瞬間もあって。
そこに向かって少しでも頑張ろうとしたこと
誰かに届こうとしたその想い自体は
確かな事だし
永遠に消えない事柄なんだ、って不確かの中に存在する確かさを確認させてくれるような歌詞になっていて。
一つの餞のような曲ですよね。
どうしても開かない扉があるのに対して
諦めるのではなく
必死に開けようと頑張った、それでも届かなかった事実
それ自体は単なる幻想に過ぎなかったけれど
手を上げたって事実は変わらない訳ですから、それが一つの指標にもなり得る訳で。
自分で自分の糧になるべき勇気は作り出せてた裏付けにもなってるんじゃないかと。
【子供に還る】
一見儚い思い出をしんみりと歌ってるかのような
おぼろげな音像が目立つ曲ですが
本質的にはペーソスに浸る為の曲では全然なくて
むしろそこにあった気持ちや感情を思い返して、また前に進む為の曲のような・・・
そういう印象が個人的にはあるのです。もちろん浸る事も重要ですけど、
何気にその「次」も浮かんでくるような、そんな楽曲だとも私的には強く感じられるのが本音ですね。
認めてもらって浄化して、またゼロに戻る的な。その構成の絶妙さにカタルシスを受ける一曲です。
ミドルテンポの、ポップスにも近い柔らかい音色と
虚ろで儚げなボーカルが絡み合うこれまた絶品のサウンドを味わえる曲でもありますね。
白昼夢って言葉と、この時期にも何気に合うんじゃないかと。
前の曲と併せてじっくりと聴いて欲しい一曲でした。