日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

DEFA70周年「知られざる東ドイツ映画」で「引き裂かれた空」「冬よ さようなら」を観ました(2016.12月)@東京国立近代美術館フィルムセンター&「ポーランド映画祭2016」を見て

2017年01月26日 | ドイツ語・独検
DEFA70周年「知られざる東ドイツ映画」で「引き裂かれた空」「冬よ さようなら」を観ました(2016.12月)@東京国立近代美術館フィルムセンター&「ポーランド映画祭2016」を見てきました



旧東ドイツ映画はあまり日本で公開されることもないため 2作品を見に行きました

で 「旧東ドイツには アンジェイ・ワイダはいなかった... 」 というのが正直な感想です

同じような時代に 同じような国家体制の国でありながら ソ連とドイツに挟まれて大戦中に様々な過酷な目に遭ってきたポーランド(もともとカトリックの国であり 共産主義でありながら神にのみ仕えるという国民性)での 気骨あるアンジェイ・ワイダ監督のような世界的に知られる大物監督は 共産主義の優等生であった東ドイツ(プロテスタントの国であり 宣誓により上に従う国民性)では生まれにくかったのでは? 優秀な者は当時西ドイツに逃げたこともあるだろうし... とは想像ですが

でもベルリンの壁のあった時代に何回か東ドイツには行きましたので あの時代の風景や人々の様子などはとても懐かしく感じました 

7階では「戦後ドイツの映画ポスター」展をやっています(2016.11.15~2017.1.29)

ちなみに昔 栗原小巻主演の日本映画が東ドイツで公開されていたため けっこう小巻ファンがいるので 壁崩壊後に旧東ドイツの友人が栗原小巻に会いたいというので 一度通訳をしたことがあります(笑) ←その映画のタイトルを聞いてなんとかなった!!



DEFA(Deutsche Film Aktiengesellschaft)は 1912年に活動を開始したヨーロッパでもっとも古いバーベルスベルク撮影所を拠点に 戦前ドイツの映画美術・芸術を継承し 個性的で豊かな映画文化を育んだ 旧東ドイツ唯一の公式映画製作機関です 1990年の東西ドイツ統一とともに活動を終了 


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冬よ さようなら」(Winter Adé/1988年) は ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツに生きるさまざまな境遇の女性たちをとらえたドキュメンタリー 彼女たちのことばは苦労や後悔に満ち 社会主義の説く男女平等の理想に対する鋭い批判となっている 女性監督 ヘルケ・ミッセルヴィッツ監督の出世作

ツヴィッカウの鉱山で働く47才の女性  
ベルリンで広告の仕事をする42才 2度の結婚を経て新聞広告で子連れパートナーを探すにいたる 広告関連の表彰式で会場には男ばかりなのに驚き シャボウスキーが来賓として来る 

ダンス学校を夫婦で経営する73才の老婦人 若き頃のダンスの写真が飾ってある ここは東ドイツ初のダンス学校とのこと 

練炭工場で働く37才女性 金槌で一時間ごとに煙突をガンガン叩くのが仕事 煤がつまり爆発を防ぐためだ 子どもの頃は家の農作業の手伝いに追われ 弟は手伝わなくてもよかったが非行に走る 17才で家を出て結婚するも出産後に離婚 

人形の病院 子どものために人形を修理する仕事 離婚して 1981年に西に逃げた夫がいる

二人の家出娘 うるさい親から逃げるため 男友達のところに転がり込む 成績が悪くて調理師になれないという(成績で職業選択が決められていた!)

ツヴィッカウ国立公園の管理人夫妻は子だくさん 前の仕事は三交代できつくとても安かったため転職 子どものものを買うともう金がなくなる なんでも物価が値上がりしてしまった ベルリン750年祭を祝うベルリンの街に行く

地下鉄の運転手の女性 女性の運転手はとても多い 私も昔ドレスデンで市電に乗った時に女性の運転手だったが とても多いと当時聞いた覚えがある 社会主義の国であり女性も労働が推奨されていた 保育も手厚かったし贅沢をしなければ十分暮らせた(生活物資の物価が低く抑えられていた)

ホーネッカーが登場するZKの女性の日の祭典 

電車の中の4人の少女たち 結婚への夢と不信を語る Doppelname(夫婦別姓)がいいなという少女 

結婚60周年を祝う老夫婦 ひ孫まで数十名の親類縁者が集い 祝う(東ドイツはホームパーティーが盛んだった) しかしこの妻は 妊娠してしまったから結婚した 夫は子供が3人もいるのに浮気したので結婚は後悔してるのよ と夫のいない所で述懐する

魚工場で働く中年女性たち 50も過ぎれば男はいらないと豪語 若い頃もっと勉強していればこんな工場で働かずもっといい仕事につけたのにと言う 

地方議員も務めながら子供たちの施設を経営する独身の55才の女性 仕事に情熱を注ぐあまり結婚から遠ざかっていたが3人の子どもがいる 今は友情で結ばれた男性はいる  
子供たちには自分のようには生きてほしくないと語る 人生は戦いよ と 

電車の中でのインタビューが多かった 白黒作品

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引き裂かれた空」(Der geteilte Himmel/1964)

クリスタ・ヴォルフの同名小説の映画化 ドイツ分断・ベルリンの壁のテーマを扱い 東ドイツではプレミア上映後に上映禁止となる コンラート・ヴォルフ監督 1964年白黒作品

ベルリンの壁が建てられる前に出会った女子学生と 10才上の男性との恋のゆくえがつづられる 世代が違うということは 彼が違う考え方を持っているということ 
将来を嘱望される科学者の恋人マンフレートは西に移り 恋人リタもスーツケースひとつで彼を追う けれど「ここ(西)には何もない 格差がくっきりと見える場所だ 外国でないだけにかえってつらい」と 住んでいた東に帰り 恋は終わる...

東の人々は貧しくとも助け合って生きてきた 西ではお金持ちとそうでない人がくっきりと分かれる 彼女の大学のクラスメートは 両親が西に逃げたことを3週間も隠し続けて 大学を追われる... 当時は壁ができたばかりで 西に逃げる人がまわりに続出していた 


知られざる東ドイツ映画」祭は こちら


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「追悼 アンジェイ・ワイダ監督特集 ポーランド映画祭2016 Poland Film Festival 2016」(2016.11.26~12.16)を見に行きました@シネマート新宿





HPで冒頭に 2016年10月9日に亡くなられたアンジェイ・ワイダ監督の自宅の庭でのインタビューがあり 実に感慨深いものがあります 
「世代」「地下水道」「灰とダイヤモンド」「大理石の男」「鉄の男」皆見ました 
20代の頃にドイツで知り合った 戒厳令下の祖国から逃げてきていたポーランドの女の子と「灰とダイヤモンド」の話をしたっけ...

映画祭で見たのは「戦いのあとの風景」(1970) これも「灰とダイヤモンド」を彷彿とさせるシーンがあります 遺体が安置された冷たい部屋の中で 残された主人公が悶えつつ述懐するシーンなどがそれ 

この作品の冒頭でのチャイコフスキーの「春」の爽やかなヴァイオリンの音色が響く中 第二次大戦終戦直後に ナチスの強制収容所から解放された囚人たちが雪の中に駆け出すシーンは鮮やかに記憶に残っています (昔見ました)
彼らはその後米軍下の難民収容所に移送され 主人公(ダニエル・オブリフスキ)はユダヤ系の娘と知り合いますが... この娘が火のように熱く獣のように強いです 
やがて運命は...

今年で5回目を迎える「ポーランド映画祭」は ワイダ作品10本の他若手監督たちの最新作も上映されていました 監修: イエジー・スコリモフスキ

ポーランド映画祭2016は こちら


*情報をいただきました東京ドイツ文化センター様に心よりお礼申し上げます
(日伊協会に行くと すぐそばなので必ず立ち寄っています♪)

1961年8月13日に ベルリンの壁が作られたが これは旧東ドイツが自分のカネで作った 旧西ドイツに壁を作るカネを請求してなどいなかった...($・・)/~~~


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