(1)安倍元首相は「モリ・カケ・桜疑惑」、菅前首相は「原稿棒読み・会見拒否」が通り相場だったが、首相就任2か月の岸田首相はさしずめ「朝令暮改の行き当たりばったり内閣」のありがたくない(国民の方がもっとありがたくない)レッテルを貼られそうだ。
(2)オミクロン変異株対策では外国人の原則入国禁止にあわせて日本人も一律入国禁止措置(航空予約の中止)を発表して、政府は日本人が帰国できない批判を受けて一律入国禁止を取りやめて日本人の航空予約を始めたところ、今度は政府がコロナ対策のため取り決めた1日の入国者の上限をオーバーすることがわかり再度日本人の新規航空予約を中止したが、その日の夜には岸田首相の判断で日本人の帰国に配慮する方針に落ち着くという1日で政府の方針が二転三転するというドタバタだった。
(3)続いて政府の18才以下の子ども家庭への年内現金5万円給付、来年春クーポン5万円配布はクーポン発行に900億円の余分な経費がかかる指摘に自治体から来年春までのクーポン配布が間に合わない声もあり、岸田首相は方針を変更して年内一括現金10万円給付を認めるとした。
市場消費効果を狙ったクーポン発行だったが、対象国民からは何にどう使っていいのかわかりにくい使い勝手が悪いとの声も多く、政府のあっけない方針変更の10万円給付だ。
(4)岸田政権になって初めての本格的国会論争の予算委員会だが、野党からこのてん末を問いただされると岸田首相はこれもあっさりと非を認めてあやまり、野党の指摘に同調するという始末だ。
これまでの政権、政府は方針に不備、不足があってもブレないことにこだわって野党の追及はつっぱねて押し通すことが多く、野党も厳しく政府の姿勢を質すことで一定の存在感を示してきたが、岸田首相のあっさり非を認めての方針変更には野党も「攻めにくい」(報道)といわれる。
(5)岸田首相はこれまでの保守思想の強い自公連立政権と違って、新しい資本主義、成長と分配の好循環というリベラル(liberal)色の強い理論、政策を打ち出して野党の理念、政策と共通するところもあり、野党としても国会での対決、論争に追及の決め手を欠く。
しかし、国家、社会、国民の利益、権利に責任を持つ岸田首相、政権が打ち出した理念、政策を野党、自治体、国民から不満、反発を受けてこれに非を認めあっさりと取り下げ、修正、変更するとなると岸田首相、政府の判断、能力、資質、ガバナンスがどうなのか、これでいいのか不安、不信を招くものであり、野党の「攻めにくい」で済む問題ではない。
(6)安倍元首相、菅前首相の何があっても曲げない、聞く耳を持たない、数の力で押し通す姿勢も問題だが、岸田首相、政府のすぐにあっさりと同調して方針、政策を変更、修正するという岸田首相の政治力(political power of premier kishida)、ガバナンスは信頼、信任、負託に値しないものだ。岸田首相のガバナンス、リーダーシップが問われる滑り出しだ。