世界的な富豪で、10日間のアジア歴訪で3つのホテルを買収したサウジアラビアのアルワリード王子は5日、ロイターとのインタビューで、中国の消費・エネルギーセクターへの投資についても検討していることを明らかにした。サウジアラビアの投資資金はこれまでも中国に流入してきたが、銀行およびホテルセクターに限られてきた。王子は「中国には潜在的な顧客が13億人いる。数年前は1人当たりの国内総生産(GDP)が数百ドルだったが、現在は毎年増加している」とし、「彼らは車やクオリティーの高い食べ物を求めている。消費財に関連するものならすべてが重要だ」と語った。
■インド洋を制したかつてのアラビア商人達とは違って、オイル・マネーを投資して利潤を上げようとするアラブの王族がやって来るとは、明代に大艦隊を率いて国威発揚に貢献した鄭和が聞いたら、どんな感想を持つでしょう?鄭和自身が南部出身のイスラム教徒で、メッカ巡礼という個人的には宿願を持っていたのは有名な話で、インド洋沿岸の華僑とイスラム商人のネット・ワークを巧みに利用してアラビア半島からアフリカの東岸まで到達した歴史が、こうしたアラブとの縁を結ぶ遠因になっているのかも知れませんなあ。
■アラビア商人はグローバル化の先駆者で、うっかりヴァスコ・ダ・ガマという1人の欧州人に南回りでインド洋に出られる航路を教えたばかりに、全アジアが互恵関係の商業圏ではなく、一方的な収奪を目的とする植民地になってしまったのでした。因みに、ヴァスコ・ダ・ガマはポルトガル人で、欲張りな王様の命令でイスラム商人の裏を掻いてインドから香辛料を仕入れる航路を見つけようと、アフリカ大陸南端に辿り着いたのは、鄭和の大艦隊がインド洋を巡った90年以上も後の話で、欧州では大西洋を南下し続けると恐ろしい怪物に食われるか、世界の果ての大きな滝から落ちてしまうぞ!と実(まこと)しやかに噂されていたそうですが、何とか辿り着いてみると、そこはアラビア商人の貿易拠点として輝いているのでした。未知のインド洋を渡れるかどうか、思案しているヴァスコ・ダ・ガマさんに「渡れるよ」と気楽に教えてしまった人の名は、アハメッド・ビン・マジッドというのだそうです。御子孫はお元気なのでしょうか?
■これからの投資活動は大歓迎でしょうが、昔、欧州人を連れ込んだように、今度はテロリストを連れ込まないようにと北京政府も願っていることでしょう。
王子のアジア歴訪中に、王子が率いる投資会社キングダム・ホテル・インベストメント(KHI)はマレーシア、フィリピン、中国のホテルを買収したが、……中国が外国企業の出資をほとんど認めていないエネルギーセクターへの投資にも関心を示した。世界第2位の原油消費国である中国と、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアは、要人訪問や大型契約などを通じてこのところ関係を強化している。サウジアラビアの石油会社サウジ・アラムコ、中国石油化工(シノペック)、米エクソンモービル<XOM.N>は先週、製油と販売に関する合弁事業設立で合意した。……
4月6日 ロイター
■あちこちで石油採掘権を削られている日本に比べて、チャイナの石油漁りは凄まじい勢いで進められているようですなあ。でも、日本並に工業化を進め、米国並の自動車社会を本気で実現したら、世界中の石油資源が枯渇するのが先か?温暖化での滅亡が先か?という恐ろしい未来が早くやって来そうです。バイオエネルギーも開発するそうですが、その原料は家畜飼料と同じ物ですぞ!産油国と石油会社と自動車会社などは儲かるのでしょうが……。これはまったく新しい歴史の始まりですなあ。
2007年4月5日、山東省桓台県で、100人近い偽僧侶が逮捕された。彼らは少林寺の名前を騙り、高額の精力剤を売りつけていた。5日午前、桓台県の市街地に100人近い僧服姿の男たちが現れた。彼らは3~5人ほどのグループに分かれ、家々をまわった。自らを少林寺の僧侶だと名乗り、武術の演舞と寺への寄付を募りにやって来たのだと自己紹介した。その後、「少林寺秘蔵の精力剤」を販売していると騙り、高値で売りつけていた。相手にあわせて60元(約900円)から330元(約4950円)の値をつけていたという。
■さてさて、少林寺です。日本でも『少林寺』ブランドのカンフー映画が大流行しましたし、日本人の宗道臣さんが始めた格闘技の名前でも有名ですが、それぞれ別物です。達磨大師が修行したと言う伝承を独占している河南省嵩山少林寺は、大唐帝国2代皇帝太宗を助けた武勲を誇る古いお寺で、支店ブログ『五劫の切れ端』で断続的に連載中の三蔵法師玄奘さんが、インドから戻って最初に翻訳場にしたい、と願い出た山奥の静かな御寺です。それとは別に、多くのカンフー映画の題材に使われた神秘的な拳法を作ったと言われているのは福建省の伝説めいた寺の事で、日本で生まれた少林寺拳法の名前の由来となると開祖の自伝しか資料が無いので、何とも言えない模様です。まあ、どれも歴史好きには楽しい伝説がたくさん詰まっているという点では共通しているようです。つまり、詐欺師にとっても便利な名前という事ですなあ。ご用心、ご用心。
市民からの通報を受け、警察はこの偽僧侶たちを逮捕した。ある偽僧侶の供述によると、彼らはみな河南省の出身。この男は4日前に友人の紹介でこの組織に加わったという。僧服と商品の薬は組織が提供したもの。組織は偽僧侶たちに住居と食事を保証した上、毎日15元(約225円)の給料を与えたという。国際的な知名度を誇る少林寺だけに、その名を騙る偽僧侶は後を絶たないが、一度に100人もの偽僧侶が捕まったのは前代未聞だと注目を集めている。
2007年4月6日 レコード・チャイナ
■宗教と詐欺犯罪とを明確に分けるのは至難の業とも言われていますから、日本でも怪しげな集団がアルバイトを雇って托鉢僧侶に仕立て上げて荒稼ぎした事件が起こっていますし、妙な健康法やら占いやら、危ない話はいくらでも有ります。本来は煩悩を絶つ修行に明け暮れる御寺で、どうして「少林寺秘蔵の精力薬」などが開発されるのでしょう?それでは煩悩の炎が燃え上がってお坊さん達はますます苦しむでしょうに!?これはまったく「正しい歴史認識」では御座いませんなあ。お仕舞い。
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