旅限無(りょげむ)

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イランのエイプリール・フール 其の弐

2007-04-01 23:36:25 | 外交・情勢(アジア)
さらに、革命防衛隊が背後にいるとの見方が有力な核開発問題に絡んでも、国連安全保障理事会は24日、対イラン追加制裁決議を採択。一方、イランのラリジャニ最高安全保障委員会事務局長とソラナ欧州連合(EU)共通外交・安全保障上級代表が接触の動きをみせるなど、イラン側の保守現実派が協議による妥協点を模索する動きを捨てていないこともうかがわせている。英兵拘束事件はこうした動きを封じる効果もある。国内での影響力維持・拡大のため、革命防衛隊にとっては、非妥協的な核技術開発が利益となる。

■アルカーイダが、「米国の敵か味方か」の二分法を愛用し、ブッシュ政権も「米国の敵か味方か」と世界各国に選択を迫りました。そして、今度はイランが同じ理屈で核武装を進めようとしているというわけですなあ。残念ながら、日本政府には二分法を再考する選択の余地は残されていないようです。


イラン側はいまのところ、英政府の謝罪を要求するにとどまっている。しかし、保守現実派を含めたイラン政府にとって、革命防衛隊の顔を立てた形での解決策を見いだすのは難しく、国内的にも袋小路に陥っているといえそうだ。
4月1日 産経新聞

■敵を悪魔と呼んで後先考えずに戦争に持ち込み、目論見が外れて泥沼化したら、今度は開き直って「このまま進まねば元も子も無くなるぞ!」と同胞を脅迫する。何度も繰り返される破滅への道です。そういう理屈を使う国には原爆やら長距離ミサイルは持って欲しくはないのですが、皮肉なことにそういう国でないと核武装には成功しないのが現実のようですなあ。


ブッシュ米大統領は31日、イランが英海軍兵士15人を拘束していることについて、英兵士を「人質」と呼び、「彼らは何も悪いことをしておらず、イランは人質を解放しなければならない」と強調した。メリーランド州キャンプデービッド山荘で行ったブラジルのルラ大統領との会談後、共同会見で語った。ブッシュ大統領がイランの英兵拘束問題に関して公式の場で見解を表明したのは初めて。同大統領は「英兵はイラク領海内から連れ去られた」として、イラン領海に入ったとするイランの主張を退け、「弁解の余地のない行為」と厳しく非難。また、「この問題でイランに見返りを与えることを拒否しているブレア英首相を支持する」と述べ、無条件の解放を求めた。 
4月1日 時事通信

■小泉前首相の「迷言録」に、「フセイン大統領が見つからないからフセイン大統領が居なかったという事にはならないのと同様に、大量破壊兵器が見つからないからと言って、それが無いとは言えない」という歴史に残る暴言が有ります。今度は、ホラ話の大量破壊兵器とは違って、立派な「人質」が現実に存在しますから、小泉流の暴言を駆使する必要も無いようです。イラク戦争で最強の同盟軍となってくれたブレア政権の英国に対して、ブッシュ大統領はこれ以外の発言は出来ませんから、だんだん「人質解放」の前に、何かを仕掛けてしまいたくなるのではないでしょうか?


イランのアハマディネジャド大統領は31日、南部フゼスタン州で行った演説で、ペルシャ湾で英兵15人がイランに拘束された事件に関し、英国は謝罪せずに逆にイランに要求を出していると非難した。……同大統領は英兵がイラン領海で拘束されたと改めて主張。「ごう慢な勢力(英国)は、そのごう慢さと利己的精神構造により、イラン国民に謝らないどころか、あたかも貸しがあるかのように振る舞っている」と述べた。一方、イラン外務省は同日声明を出し、英政府がイラン側に送付した覚書を受け取ったことを確認、「検討が可能な幾つかの点を含んでいる」と指摘した。また、「英側がバランスの取れた率直な態度に改めるのを待っている」と述べた。 
4月1日 時事通信

■海上での拿捕事件ですから、目撃者や証拠を揃えての交渉は難しいでしょうなあ。互いに「再現CG映像」などを作って宣伝し合ったら、ますます話は拗(こじ)れるでしょうし、イランの強硬派の中には、領海の境界線自体を認めない勢力も居そうです。それに対する英国と米国の中には、イランの存在自体を危険視して体制崩壊を正当化する思考をしている人々が居そうなのが心配です。悲しいことに、領海・領土の問題は絶対に冗談のネタには出来ない恐ろしいものですからなあ。


……イラン国営通信は31日、駐露イラン大使が露テレビに語った話として、拘束中の15人に対する訴追手続きが始まったと報じた。ただ、大使はその後、翻訳ミスがあったとしてこの報道を否定し、情報が錯そうしている。当初の報道で、大使は「英兵に関する法手続きは開始された。容疑が立証されれば処罰されるだろう」と述べたとされていたが、その後、大使自身が報道の一部を否定し、「英兵の拘束は法的な手続きにしたがって行われているということを話しただけだ」と強調した。一方、相次ぎ公開されたビデオ映像で英兵が領海侵犯を「告白」したことに触発され、国民の間でも英国に対する抗議の動きが広がっている。
4月1日 読売新聞

■間違いなくイラン政府内に混乱と対立が存在しています。「処罰」が単なる領海侵犯ならば死刑にはならないでしょうが、これが意図的な侵略行為だったとされれば、事は重大で、戦時の捕虜として過酷な尋問やら調査の結果次第では厳しい刑罰が科される可能性も出て来るでしょう。平時の「事故」として穏便に処理するには、早急に交渉が開始されねばなりません。


1日付の英紙サンデー・テレグラフは、イラン・イラク国境水域での英水兵15人の拘束事件で、英政府が海軍幹部を近く政府特使としてテヘランに派遣、解放交渉を行う準備を進めていると報じた。特使は、海軍が今後、故意にイラン領海内に侵入しないことを確約し、全員釈放を求める計画という。同紙によると、派遣されるのは、海軍の准将または大佐。重要議題を討議する「国家緊急治安特別閣議(コブラ=COBRA)」が3月末に開催され、特使派遣を検討した。特使は、今回の事件で英兵がイラン領海に侵入しておらず、謝罪もしないとの英政府の立場を維持しながらも、今後の方針に言及するとみられる。英政府内では解放交渉が長期化するとの見方もあるが、国防省当局者は同紙に、「危機脱却の方策になり得る」と語った。
4月1日 読売新聞

■アクロバットみたいな外交交渉を行う方針が決まったようですが、担当するのが海軍幹部の特使となると、イラン側も革命防衛隊幹部が出て来ることになりそうです。しかし、互いの論拠となる「領海内」の問題を上手に避けて話をまとめる事など出来るでしょうか?領海侵犯も認めず、謝罪もせず、それでも拘束されている自国の兵を奪回する妙案が有るのなら、これは大いに興味を覚える話になります。でも、そんな交渉が成立するのなら、イラク戦争も起こらなかったような気がしますなあ。

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イランのエイプリール・フール 其の壱

2007-04-01 23:35:59 | 外交・情勢(アジア)
■イスラム教徒にはエイプリル・フールは無関係だと思うのですが、イランの上空は冗談とも思えない怪しい雲行きです。

国営ロシア通信は31日、ロシア軍事筋の情報として、ペルシャ湾に展開中の米軍が4月前半にもイランへの攻撃を開始する可能性があると報じた。また、複数の露メディアは、イスラエル特殊機関に近い電子メディアが露軍事筋から得た情報として、攻撃開始が「4月6日未明」の予定だと伝えた。……米軍はミサイルと空爆によって核関連施設を攻撃し、その後の状況分析次第では地上作戦を行う可能性もある。露軍事筋は、米軍が27日に開始したペルシャ湾での大規模な軍事演習によって「イラン攻撃に向けた準備は事実上、完了した」と分析、英海軍兵士15人がイランに拘束された事件が「攻撃開始の十分な根拠になり得る」と指摘している。

■有りそうな話ですが、あまりにも有りそうで俄(にわ)かには信じられない感じがします。でも、イラク攻撃を開始した時のブッシュ大統領の三流映画みたいな実に強引でご都合主義の筋書きを見せられているので、安っぽいシナリオだと笑い飛ばしてしまうことも出来ませんなあ。


イスラエルの電子メディアによると、「Bite」(かむ)と名付けられた作戦は12時間にわたって遂行される。露メディアは「イラン攻撃に関するイスラエルと米国の合意がある」などとする専門家の見方も伝えている。ロシア国防省は「架空の情報源に基づく憶測にはコメントしない」としている。
4月1日 産経新聞

■「不朽の自由作戦」などと言う古めかしく堅苦しい名前とはまったく違う「噛み付き作戦」が、イラク攻撃よりも遥かに短いシナリオを想定していると聞きますと、何度も同じ過ちを繰り返してしまうブッシュ大統領以外の政権であれば、愚劣な4月バカの戯言(たわごと)と片付けられるのですが……。他国の元首には敬意を払わねばならないとは分かっていても、ブッシュ大統領は就任した時から、米国人がジョークと現実を混同しているとしか思えないのも事実ですなあ。ですから、流れる噂が馬鹿馬鹿しければ馬鹿馬鹿しいほど、本当に有り得るかも?と心配になってしまいます。


イランがペルシャ湾のイラン・イラク国境水域で英海軍兵士15人を拘束した事件は発生から1週間を越え、長期化の様相を示している。領海侵犯の有無をめぐり英国とイランの言い分は真っ向から対立し、イランの核開発をめぐり高まった国際的な緊張は新たな“危険水域”に入った。イランにも得るものが少ないようにみえる事件の背後には強硬派の中心勢力であるイラン革命防衛隊の利害が複雑に絡んでいる。

■改革派に対する妨害や弾圧が有るとか無いとか、民主的な政体なのか独裁政権なのか、とかくの議論が有る革命後のイランですが、少なくとも、保守に対する超保守の存在は否定されてないようです。


革命防衛隊は、1979年のイスラム革命直後の5月、革命指導者ホメイニ師の指示で、イスラム体制護持とイスラム法学者の支援のために組織された。司令官は最高指導者に直接に任命され、80、90年代を通して組織は拡大。国防省管轄下の正規軍とは別に、独自の陸海空軍を保有し、3権の枠外にあって実態は不明な部分が多い。今回の事件は当初から革命防衛隊が計画し、実行したとみられてきた。

■変わった国際感覚を持っているらしい、今のアフマディネジャド大統領の出身団体であり権力基盤となっているのが革命防衛隊だと言われています。国内での支持がどんどん低下しているとも言われていますが、仮に身内が暴走したとしても制止する事は墓穴を掘ることになるので不可能でしょう。


1月にイラク北部のクルド人自治区アルビルで革命防衛隊精鋭部隊の司令官を含む5人が米軍に拘束されたことから、英兵拘束直後から革命防衛隊がその報復と5人の釈放を要求するために行ったとの見方が出た。イラン側は英兵と米軍に拘束された5人の「交換」を要求していないにもかかわらず、米国務省報道官は「交換はあり得ない」と発言。米側も事件の背景の一つが米軍による革命防衛隊員拘束であると意識していることをうかがわせた。

■ブッシュ政権内からは「ネオ・コン」一派が駆逐されてしまったようですが、イランの政権内にはイスラム革命を推し進める保守派が健在です。ネオ・コン色を脱しても、ブッシュ政権はイラク攻撃は正しかった!と言い続けていますから、イラン攻撃も正しい!と言い出しても誰も驚きはしないでしょうなあ。イラクはどんな理由が有ろうと無かろうと、攻撃しなければならなかったから攻撃したまでの事なので、今度は同じ理屈で別の国を標的にしても、政策の一貫性は保てる?という無茶な話がもう少しホワイト・ハウスで続くのでしょうなあ。

チャイナのエイプリール・フール 其の参

2007-04-01 15:48:22 | 外交・情勢(アジア)

中国は先祖の墓参りを行う4月5日の「清明節」を前に「古臭い習慣を排除し、文明的な墓参りを提唱する」として、インターネットでの墓参を勧める通知を出した。各地での交通渋滞発生、また「故人があの世で豊かに暮らせるよう」と遺族が墓前で偽の紙幣などを大量に燃やすため、環境汚染と、類焼の問題が深刻化したため。
3月31日 毎日新聞

■「偽の紙幣」とは乱暴な表現でしょう。銅銭を模(かたど)った四角い穴の開いた円形の紙を撒き散らし、山にして火を点けるのは、冥途の旅で困らないようにする大切な供物ですから、決して何処かの国がせっせと刷っている「偽札」とは違う物です。墓参りに出掛けずに、インターネット画面で供養しろ!というのは、始めから誰も従わない事を承知の上で出された官僚的な通達としか思えませんなあ。先祖供養を否定したら、民族文化の根底を揺るがして非常に危険な兆候を生み出しそうな気がします。土地不足を解消しようと、墓地を営む事を否定して、火葬と散骨を奨励しつつ、全土に伝説時代から歴代皇帝の陵墓まで、お墓の手本となる遺物が並んでいるのを単なる「観光地」だと断言するのも危険ですなあ。古代国家が出現する遥か昔から人類が編み出した死者を祀る文化は、IT時代になったからと言って簡単に変わるものではありません。在外華僑も台湾の外省人も、功成り名を成したら御先祖様の故地で供養をしようと思っているのですから、本当にインターネット供養が普及したら、それこそエイプリール・フールの冗談でしょう。

■爽やかな響きの有る「清明節」ですが、実際には大量の砂を運ぶ強風が吹き荒れる季節に当たっています。砂の恐ろしさは体験しない者には分かりませんが、人の無力さと文明の脆弱さを思い知るには持って来いの自然現象です。砂漠地帯に強烈な一神教が生まれるのは、恐るべき温度差と砂嵐の猛威が原因だとも言われますからなあ。どちらも、人間に「諦めること」を問答無用で教えてくれるものであります。


30日、新疆、内モンゴル、寧夏、陝西などの一部地域で黄砂が発生した。このうち内モンゴルでは視界1キロメートル以下の激しい砂嵐(黄砂ストーム)が発生するなど、各地で今春最大の黄砂に見舞われた。中国新聞社が伝えた。中国北部は現在、東へ向かって進む低気圧と寒気団の影響を受け、大風、気温低下、黄砂などに見舞われている。中央気象台は昨夜、北京、新疆の南疆盆地及び東部、寧夏北部、陝西北部、内モンゴル中西部及び東南部、華北中北部、遼寧西部などの地域に対して黄砂注意警報を発令し、住民に注意を呼びかけた。

■「視界1キロ」とは、随分と生温い数値を出したものですなあ。「1センチ」の間違いではないでしょうか?まあ、「以下」が付いているので、間違いとは言い切れないのですが……。


黄砂が発生する3月末から4月にかけては、農家にとって耕作・種蒔きを行う重要な時期。専門家は北部の地方政府及び農家に対して天気予報に注意し、予防措置をとるなど充分に警戒するよう呼びかけると同時に、一般市民に対しても家の戸締りをし、外出を控えるよう呼びかけている。
3月31日 中国情報局

■「戸締り」と「外出禁止」を呼び掛けているとは、何とも人を食った悪い冗談です。逆に、外出を命令されても不可能でしょうに!?風が唸っているのか大地が吠えているのか区別が付かない恐ろしい音が住居を包み込み、2重窓の外は昼と夜の区別も分からない砂の闇が覆う、地元の人なら数日前から雲を読んで水や食糧を蓄えて、じっと砂嵐が去るのを待つものです。それを怠ったら、猛烈に体温を奪う強風の中を彷徨しなければなりませんからなあ。北京辺りの沿岸部では、昼間でも照明を点けなければ不便だなあ、ぐらいの事で済むようですが、内陸部はそんなものではないでしょう。


中国人民解放軍の梁光烈総参謀長は27日、北京を訪れている北朝鮮の人民軍代表団(団長・安永基人民武力省外事局長)と会談し、核問題などについて意見を交換した。軍機関紙・解放軍報が28日伝えた。同紙によると、梁総参謀長は「中朝両軍の友好協力関係を発展させ、地域の平和と安定維持のためにさらに貢献したい」と述べるとともに、「朝鮮半島核問題に関する中国の立場」を説明した。 北朝鮮の核開発を主導する人民軍当局に対して、6カ国協議を通じて平和的解決を目指す考えを強調したとみられる。北朝鮮の核保有は受け入れられないとの立場を明確に伝え、核放棄へ向けた決断を促した可能性もある。
3月28日 時事通信
 
■「半島非核化」という話が、最近ではほとんど聞かなくなりましたなあ。先代の金日成さんは、朝鮮半島の(米軍保有の)核兵器を排除する目的で自国の核武装を進めました。「非核化のための核武装」というのは、悪い冗談ですが、地球の裏側からでも自由自在に核弾頭を打ち込める時代になってしまえば、何処を「非核化」しても意味は無いのですが……。すっかり恥を晒してしまった米国にわざとらしく恩を着せる目的で、こんな会談を開いているとしか思えませんが、「北朝鮮の核保有は認めない」などと言っても、それを実力で阻止するつもりなど無い事は世界中が知っているのですから、要は議長国の面子を考えろよ!と念を押したかっただけなのでしょう。

■悪い冗談の塊みたいな国になってしまった北朝鮮を相手に、「地域の平和と安定維持」を語る中国人民解放軍も、どこまで真面目にやっているのか分かりませんなあ。平和と安定が「現状維持」を意味するのなら、飢餓と貧困が放置される事を意味するでしょうし、毛沢東を見習って?盛大に核実験成功を祝った手前、親子二代の悲願達成に水を差される謂れは無い!と言い返したいところでしょうなあ。


28日付の韓国紙、中央日報は韓国国防関係者の話として、訪韓中のマイケル・ヘイデン米中央情報局(CIA)長官が27日、金章洙(キム・ジャンス)国防相との会談で、「米国は北朝鮮を核保有国と認めない。昨年の核実験が失敗したからだ」と述べた、と報じた。

■CIA長官が、ちょっと気の早いエイプリール・フール用のジョークを言っているとも思えませんが、あの地下核実験の大騒ぎ自体が冗談だったとしたら、これまた困った話です。核の危機が存在しないのなら、マカオの隠し口座の凍結を解く理由も無くなるでしょうに!?


同紙によると、ヘイデン長官は、米国がイラク戦争で情報分析に失敗した理由として、「大量破壊兵器の専門家だけで分析をしたためだ」と指摘したうえで、「北朝鮮に対する情報は米国も多く持っているが、北朝鮮の文化や情緒をよく知る専門家は韓国が多い」と述べ、米韓の緊密な情報交換の必要性を強調した。ヘイデン長官は、就任に伴う米韓の情報当局者の相互訪問の一環として訪韓。金万福(キム・マンボク)国家情報院長らとも会談し、北朝鮮の核施設の現況や北朝鮮軍の動向などについて意見交換したという。
3月28日 読売新聞

■「イラク戦争で情報分析に失敗」した理由を並べるとは、自分で身内の恥を白状しているようなものですが、軍事的な問題を技術的な方面ではなく、「文化と情緒」の分野に重点を移して分析しようと、本気でCIAが方針転換したのなら、イラク戦争も同じ流儀で正当化できることになりそうですなあ。「文化と情緒」を理由に「悪の枢軸」にされては堪りませんぞ!天下のCIAが、高学歴と書類偏重に毒されて、すっかり官僚機構の悪弊が蔓延している、との噂が多い中、長官自らがこんな事を言うために韓国を訪問しているというのは、これまた悪い冗談でしか有りません。北朝鮮から核弾頭付きのノドン・ミサイルが飛んで来るぞ!と言われたからこそ、日本政府は皇居前広場に迎撃ミサイルを置きましょう、とまで考えているのですからなあ。巡り巡って、悪い冗談を真に受けて、日本だけが右往左往しているような、実に嫌な気分になって来ます。もっと明るい気分になる痛快なジョークが必要です。

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チャイナのエイプリール・フール 其の弐

2007-04-01 15:47:53 | 外交・情勢(アジア)
2007年3月31日、上海市にて開催された第3回中英宇宙科学技術共同研究討論会において、中国初の国産月面探査機が公開された。……上海航天局の指導下、上海交通大学・ハルピン工業大学・瀋陽自動化研究所など10以上の機関が共同研究開発したもの。今年後半に打ち上げ予定の月観測衛星「常娥1号」にあわせての発表となった。

■軍・産・学の見事な連携であります!ソ連から援助を受けていた頃の遺産に対米関係と対日関係が改善されたのを利用して、合法・違法取り混ぜて技術を掻き集めた成果?が集まっている各地の名門大学が、総力を挙げて協力している様子がよく判りますなあ。羨ましいような、ちょっと恐ろしいような……。写真はこちら


この探査機は遠隔操作で動き、6輪駆動ロッカアームで月面接触面を自在に調整しながらの走行が可能。また視覚機能を持ち、CCDカメラで捉えた前方3m以内の地形を即時に分析、3D立体地図を作成して前進ルートを自ら判断するという。これにより傾斜30度の坂道や、25cm以上の石やくぼみ、2m以上のクレーターに遭遇した場合、探査機は自分で進路を変更するとのこと。しかし中国国内の宇宙専門家からは、18万kmも離れた場所からの遠隔操作が実際にうまくいくのか、月面の昼夜の温度差(127℃~マイナス183℃)や激しい電磁波の嵐が探査機の電子コントロール系統を破壊するのではないかという心配の声も上がっている。
4月1日 レコード・チャイナ

■もしも、月面で「エンコ」してしまっても、同じ技術を応用して内モンゴルやウイグルの砂漠地帯、チベットの山岳地帯などで活躍する無人兵器には、充分に使えますなあ。砂漠の国々もたくさん売れる陸上無人兵器になりそうですし、人件費の高騰に苦しむ人民解放軍の人員削減にも、大いなる貢献が出来そうです。空中の無人兵器は、何処かの国の間抜けな楽器会社からヘリコプターを買って、ばらばらにして技術を盗めば済みそう?とは言っても、面子に懸けても月面征服三番目の地位は絶対に譲れないところでしょうから、何が何でも成功させるような気がしますなあ。そう言えば、月面に米国に次いで着陸したことになっている旧ソ連は、当時から無人月面探査機を走らせた映像が「怪しい!」と言われていましたなあ。

■人類初の人工衛星打ち上げ成功の勢いに乗って、史上初の宇宙遊泳をしたガガーリンさんは、実は「2番目」だった、などというミステリーも有りますから、強引な情報操作をする国のやる事には謎が付き物です。今のチャイナは政権批判以外の分野では、以前には考えられなかった自由?が広まっているとも言われていますから、旧ソ連とは違った態度で宇宙開発に乗り出して行きそうな気もします。でも、公共事業の受注に絡む話となると、日本の電力会社も顔色を失うような惨いことが起こっているようですなあ。


2007年3月30日、北京の地下鉄工事現場で28日に発生した崩落事故で、行方不明になっていた作業員6人全員が見つかり、病院に搬送されたが、全員の死亡が確認された。最悪の結果となったこの事故は、発生から3日経ち、関係者の証言などから驚くべき「事故隠し」が発覚した。不測の事故ではなく、人災との見方も出ている。現場責任者は事故発生直後、現場の門を閉鎖し、作業員全員を閉じ込め、さらに携帯電話も没収し、外から事故について聞かれたら「何も知らない」と答えるように指示していた。事態の深刻さに作業員の1人が出身地の河南省警察に通報、北京の警察に連絡が入り、ようやくの出動となった。

■オリンピックに向けて北京を一挙に近代都市に変貌させようと、相当に無理を重ねているようですから、この程度の惨事が起こっても不思議ではありません。違法な採掘を続ける炭鉱での事故は頻発していますし、手抜き工事の疑惑がいっぱいのマンション建設も目白押しですからなあ。それにしても、生き埋めと情報遮断による隠蔽とは、本当に日本の原子力発電所にも負けない恐ろしい手際であります。


また、工事が「孫請け」だったことが事故を招いた可能性も出てきた。約150人の作業員を束ねる責任者2人も元請からの委託で、ずさんな施工管理だった。経費削減と工期短縮のため、わずかな残業代で1日12時間労働を強いていたため、作業員には疲労と不満が蓄積していたという。
3月31日 レコード・チャイナ

■貧困に苦しむ地方から出稼ぎに押し寄せる人達は、こうした無茶な工事現場で命を懸けて働いております。人命軽視の伝統は、一体、いつになったら克服されるのやら……。核戦争になっても「半分は生き残る!」と毛沢東は言いましたが、そんな理屈で建設現場を管理されては堪りませんなあ。これは冗談では済まされない深刻な話でした。


2007年3月28日、広東省仏山市の一部レストランで、野ネズミ料理が客に提供供されているのが発覚した。仏山市衛生監督所は緊急調査にあたり、各レストランに野ネズミ料理を禁止する通知書を出した。仏山市疾制センター疾病の梁自勉(リャン・ズーミエン)・科長は、野ネズミを捕獲・調理する過程で、寄生虫やウイルスが人に感染する可能性が高い。また感染症だけではなく、雑食のネズミの体内には高濃度の科学物質が蓄積されているため、中毒症状を引き起こすリスクも高いと、ネズミ肉の危険性を解説した。

■ネズミ料理は東南アジアからチャイナの南では珍しくも無いものです。一見、「焼き鳥」みたいな串焼き料理が、実はネズミの肉だった!という恐ろしい「筆談」をした日本人の話も有りますからなあ。最近は「鼠」という字が書けない日本人も増えたので、筆談もしないでパクパク食べてしまう事も多いかも?


2003年に広東省ではSARSが大流行し、政府の関係部門は再度の感染病を防ぐために必死だ。しかし「空を飛ぶものは飛行機以外、四つ足のものは机以外」全部食べると言われる広東人の食習慣を変えることはなかなか難しいようで、今回のような事件は後を絶たない。
4月1日 レコード・チャイナ

■人類の食文化は、餓死との戦いという面と美味の追求という面との鬩(せめ)ぎ合いの中で発展したものですから、悪臭を放つ発酵保存食を筆頭に、独特の臭いと味が際立って他の場所とは違う料理が有ります。「ゲテ物」などと呼ばれては、地元の人達は心外でしょうが、世界中を高速で人々が移動する時代ですから、疫病や感染症の危険が有る食文化には適切な制限と対策が必要です。しかし、10億人を越える人口を相手に清潔な水と衛生的な住環境を提供するというのは、生易しい事業ではありません。それを賄える水資源、電力、燃料、そして食糧が足りない事は北京政府が一番知っているでしょう。飢えが先か疫病が先か、はたまた頻発する暴動が内乱状態にまで発展するのが先か?「量が質に転換する」ヘーゲル流の弁証法が近い将来に再び証明されるかも知れませんなあ。

チャイナのエイプリール・フール 其の壱

2007-04-01 15:47:21 | 外交・情勢(アジア)
■歴史と文化の違いは、笑える事と笑えない事との違いにも反映します。ジョーク、洒落、コメディ、冗談、場所が変われば笑いも変わり、何が可笑しいのかさっぱり分からない事も有れば、当人は大真面目なのに他の人から見れば滑稽に思える事も有ります。「エイプリール・フール」の本場、欧州では通常の報道番組の時間帯に、大真面目に大規模なホラ話を放送することで有名ですし、随分前には『火星着陸』を偽造した本格的なドキュメント番組が制作されて、それを真に受けて日本でも結構な商売をして稼いだ人達も居たようですなあ。間違っても、「中東大戦争勃発!」などという悪い冗談は扱わないで欲しいものです。チャイナ絡みのちょっと笑える?かも知れない話を拾ってみました。

青蔵道路の西寧市~ゴルムド(格爾木)市間で、あるものがドライバーの目を引いている。2007年3月30日にレコードチャイナのカメラマンは実際にそれを目にした。それは、交通事故に遭った車が高く吊り上げられている光景だ。証拠写真はこちら。車の下に掲げられた看板には、「交通ルールを守れ、命を大切に」と書かれている。地元の運転手は、「交通安全を呼びかけるためにこれを設置した。壊れた車は道行くドライバーへの警告となるだろう」と話している。

■青海省ばかりでなく、チャイナ全土にはなかなか笑える警告や表示が見られるのですが、分かり易さを優先させた直截な表現が特徴です。大草原の真ん中、道路沿いに並ぶ木製の電信柱の脇に「電気盗むな!」の大看板が立っているのは味わいぶかいものが有りましたなあ。勿論、直線道路が多い無人地帯には、「安全運転」の看板がぽつぽつと立っていますが、それに従う運転手は居ないでしょうなあ。


2005年の統計によると、中国の自動車保有台数は世界のわずか1.9%だが、交通事故による死亡者数はすでに世界の15%を占めており、世界有数の交通事故の多発生国となっている。最近では中国の自動車産業も盛んで、販売量でもアメリカに続く世界第2位となっている。こうした状況から、中国での交通事故による死亡者の数はさらに増えると予想されている。壊れた車による警告が、果たして人々へのショック療法となるかどうか。
4月1日 レコード・チャイナ

■無人地帯では速度違反と積載重量制限無視が横行し、無惨な残骸と穴だらけの路面が印象的です。市街地に入れば信号無視の歩行者と自動車の対決が日常茶飯事ですから、保有台数の増加よりも交通事故の増え方の方が多くなるのは当然のような気がします。急速にエンジン性能が上がったバイクや車に「交通安全」を訴えても、誰に聞いてはくれないでしょう。そこに携帯電話の爆発的な普及が重なっていますから、速度超過に前方不注意の相乗効果が生まれますなあ。強制的にエンジン回転を制限する装置でも付けないと、暴走ブームは収まらないのではないでしょうか?確か、チャイナは国際免許の仲間に入れて貰っていないはずですが……。

■技術の進歩は医療の世界でも目覚しいものが有ります。『金瓶梅』の伝統?が有るお国柄ですからなあ。


近年、福建省福州市でDNA鑑定が流行しているという。1996年には1年間でわずか7件だった鑑定数が、昨年は1000件を超えた。福州市では1996年からの累計でおよそ4000件の親子鑑定が行われたという。鑑定希望者のほとんどは、妻に隠れてこっそりとやって来る父親だ。妻の間との子が本当に自分の子かどうかに疑いを持ち、鑑定を依頼するのだという。日本なら、そんなことを言おうものなら考えすぎだと笑われそうだが、中国では皆大まじめ。事実、鑑定したうちの3割以上で親子関係にないとの結果が出ており、福州市の父親たちの心配の種がなくなることは当分なさそうだ。
4月1日 レコード・チャイナ

■「3割」が本当なら、これが多いと思うか、案外と少ないと思うか、それは文化の違いということになるでしょうなあ。最強のオス猿がハーレムを作っている野性の猿社会でも、案外と「他人の子」を産んで澄ましている雌猿が居るとの研究を読んだ覚えがありますが、知恵で勝る人間となりますと更に事情は複雑でしょうなあ。そこに強烈な男尊女卑思想が根付いていたりすると……。他人事だと笑ってばかりは居られないかも?

中東再編? 其の四

2007-04-01 11:08:21 | 外交・世界情勢全般
 
政府は31日、安倍晋三首相が4月下旬から予定している中東諸国訪問について、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)など5カ国とすることで最終調整に入った。首相は各国首脳と、混迷するイラク情勢やイランの核問題などをめぐり意見交換する。中東歴訪には日本経団連(御手洗冨士夫会長)による財界訪問団が同行することも固まった。政府関係者が明らかにした。首相は大型連休前の4月26、27両日に、就任後初めて訪米し、ブッシュ大統領と会談。米国から直接、中東に移動し、サウジアラビア、UAEに加えてカタール、クウェート、エジプトの計5カ国を訪れる。5月3日に帰国する。 
4月1日 時事通信

■イラクにもイランにも立ち寄らず、断末魔のブッシュ大統領と最初に会談してから、大西洋を越えてサウジに飛んでエジプトで終わる歴訪に、一体、どんな意味が有るのか分かりません。経団連会長を同行させてどんな商談をするつもりなのでしょう?それ以上に、日本政府は「4月下旬」まで、ペルシア湾では何事も起こらない、と判断しているのが不思議ですなあ。何事かが起こってしまった後の歴訪なら、「戦費」の割り当てと新たな自衛隊の派遣についての要請を受けて歩くことになり兼ねませんぞ!何事も起こらない内に、穏当な話し合いの必要性を訴えて歩くべきでしょうなあ。またまた後手に回って最悪のタイミングでの歴訪となりそうな予感がします。

 
ペロシ米下院議長(民主党)が来週、超党派議員団を率いてシリアを訪問することが判明し、ホワイトハウスは30日、異例の強さで非難して訪問中止を求めた。ブッシュ政権はこれまで拒否してきたシリア、イランとの対話に慎重に乗り出したばかりで、頭越しの積極外交が対シリア政策に打撃を与えるのではと懸念している。
3月31日 時事通信

■次期政権を狙う民主党は、さっさと外堀を埋めて「ブッシュの戦争」を形骸化してしまおうという強引な選挙運動を中東の現場で始めてしまいそうです。ブッシュ一家と商売仲間だったサウジさえも取り込んで、イラクからの撤退を実現する危険な賭けに出たとも言えそうです。これほど何が起こるか分からない中東に、1ヵ月後に出かける計画を立てている安倍総理は、トンデモないババを引き当てる心配が有りますなあ。小泉政権が積み上げたブッシュ政権との蜜月関係を捨てて、早々に民主党と手を結んで立ち回るわけにも行かないのですから、「絶対に引かない!」と言うブッシュ大統領の主張に何処までも付いて行かねばなりません。それにしても、15人の英国兵が「拉致」された事に対する欧米諸国の動きと、日本から北朝鮮に拉致されてしまった「民間人」に対する態度の違いには驚くやら、情けないやら……。


米国務省は30日、イランの核開発・ミサイル製造にかかわっている同国の軍需企業「防衛産業機構」の資産を凍結すると発表した。昨年12月に採択された国連安保理の対イラン制裁決議などの下で、同機構は既に制裁を加えられているが、国務省は締め付けを徹底するため、先に採択された新たな安保理決議に沿い、重ねて制裁対象とした。 
3月31日 毎日新聞

■北朝鮮への締め付けを急に緩めてしまったのは、イランに対する締め付けを強調するための準備だったのではないか?と勘ぐりたくなるような動きです。もう「悪の枢軸」は消え去って、イランだけが諸悪の根元だ!との演出効果を狙っているかのようですなあ。


ペルシャ湾で英軍水兵15人がイラン当局に拘束された事件をめぐり、英国を非難するイラン国民の声が拡大している。相次ぎ公開されたビデオ映像で英兵が領海侵犯を「告白」したことに触発された動きで、事件解決の新たな障害となる恐れも出てきた。国営イラン放送によると、テヘラン大学で30日に行われた金曜礼拝には、欧米批判の発言で知られるアフマド・ハタミ師が説教に立ち、「1インチでも国境を侵害した者は、激しい怒りを受けねばらない」と警告。礼拝を終えた数千人は、こぶしを挙げて「英国に死を」「我々は英国の侵入を糾弾する」などと叫びながら、市中心部をデモ行進した。
3月31日 読売新聞

■何かとデモ行進をして気勢を上げるのがイスラム流なのですが、先に手を出したイランはちょっと分が悪いようです。既に、拿捕された兵士の姿を撮影したビデオ映像が放送されてから、英国の方でもイラン憎し!の機運が生まれているようです。第2次大戦前のヒトラーと同じ立場にイランが置かれているようなものです。庭先で物騒な脅しを続ける米軍には手を出さず、米軍に開戦の口実を絶対に与えない!と自制していたのに、革命防衛隊が「同盟軍」の英国に手を出してしまいました。「英国を救うために」という国際信義の問題にすり替えて、米軍が正面から攻撃を仕掛ける可能性が高まりましたなあ。


欧州連合(EU)は30日、ドイツ北部ブレーメンで非公式外相協議を行い、イラク駐留の英軍兵士ら15人がイラン当局に拘束された問題が解決しない場合、EUとして、2週間以内にイランに「対抗措置」を講じることを決定した。兵士拘束問題をめぐっては、国連安全保障理事会が29日、「深刻な懸念」を表明したが、EUは事態解決に向け、さらに踏み込んだ姿勢を見せた。各国外相は、同問題が単にイランと英国との2国間問題ではなく、イランとEUとの問題であるとの認識でも合意し、ソラナEU共通外交・安全保障上級代表にイランとの交渉を一任した。

■英国という触媒がEUと米軍を結び付けてしまいましたなあ。


ソラナ代表はこれを受け、イランのアフマディネジャド大統領と近く、直接交渉する意向を表明した。EUはこれまで、イスラエルに強硬な姿勢をとる同大統領との接触を極力避けてきたが、ソラナ代表は記者会見で、「(イランの対応は)間違っている。国際社会の一員になりたいという国がとるべき対応でないとのメッセージを明確に伝える」と強調した。
3月31日 産経新聞

■「領海侵犯」と「核の平和利用」という真っ当な事を、少々癖の有る言い回しで主張しているイランに、誰かが「物の言い方」を教えてあげねばならないのですが、このまま言語習慣の違いが作り出す溝がどんどん広がって、緊張と相互の憎悪が高まって行くと、「イラン政府転覆」という恐ろしいシナリオが提出されてしまいそうです。

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中東再編? 其の参

2007-04-01 11:07:36 | 外交・世界情勢全般

米上院本会議は29日、対テロ戦の戦費を認める一方、来年3月末をめどにイラク駐留米軍の撤退完了を求める法案を民主党の賛成多数で可決した。下院では撤退期限を来年8月末とする法案がすでに可決されており、両院を主導する民主党は一両日中に法案の一本化に着手し、ブッシュ大統領に承認を迫る構えだ。ブッシュ大統領は拒否権を行使する意向で、最終的に法案は成立しない見通しだ。しかし、期限を明示した米軍のイラク撤退法案が上下両院で可決されたことで、約3万人の米軍増派を掲げるブッシュ政権に対する政治的圧力がさらに強まるのは避けられない。上院本会議での採決は賛成51、反対47。法案はイラクやアフガニスタンでの戦費など、1220億ドルの補正予算案を認めるのと引き換えに、来年3月末までに米軍がイラクから撤退するよう求める内容だ。
3月30日 産経新聞

■「補正予算」が認められなければ政府の機能は停止します。クリントン時代に一度起こったパニックが再び起こるわけですが、ブッシュ大統領が欲しい「戦費」は、対テロ戦争を「継続」するための費用の事で、議会が認める「戦費」は「撤退」の費用ですから、任期中の撤退は有り得ない!と言い張っているブッシュ政権が妥協する余地は無いでしょうなあ。世論に乗っている議会も「継続」せざるを得ない事態になれば、主張をころりと変える可能性が有りますから、予算獲得のためにも、もっと大きな戦争を誰かが始める可能性が高まるというわけです。


政府は30日午前の閣議で、7月に期限切れとなるイラク復興特別措置法の期限を2年間延長する改正案を決定した。イラクの治安悪化が続く中、政府はクウェートを拠点に多国籍軍や国連の物資・人員を輸送する航空自衛隊の駐留継続が必要と判断した。政府・与党は最重要法案の一つとして今国会中の成立を目指しているが、民主党は特措法廃止を求める構えで、イラク支援のあり方などを巡る与野党の激しい対決が予想される。

■アフガニスタンでの戦闘を継続するためにインド洋では海上自衛隊が給油を続け、イラクでは航空自衛隊が「よく分からない」物を空輸して居ます。その間にペルシア湾が挟まっていて、そこで米軍が大規模な軍事演習を繰り広げているわけです。この状態のままで「2年間延長」をろくな調査も議論もしないままで決定してしまって良いのでしょうか?イラク戦争の「4年目」という節目に、米英のマスコミは決死の現地取材を決行してドキュメンタリー番組を制作していますが、日本のテレビも新聞も、遠巻きに他人事みたいな又聞き報道をしているだけです。勿論、現地に駐留している英国軍が厳重に警備してくれているからこその決死の取材だったようですから、陸上自衛隊が撤退してしまった日本から取材陣が乗り込んでも、外国の軍隊や傭兵会社に守られての取材になりますから、マスコミも怖くて近寄れないでしょうし、政府の調査団も入れないというわけです。

■となれば、誰も正確な情報を持たないまま、国連や米国政府の「要請」と、イラクの現政権からの「感謝」だけを理由にして「2年間延長」を決定するしかないのでしょう。でも、「2年後」のイラク情勢を誰が予想できるのでしょう?


同法は03年7月、イラク戦争後に自衛隊による復興支援を行うため、4年間の時限立法として制定された。翌04年1月、同法に基づいて陸上自衛隊がイラク南部のサマワに派遣され、給水や公共施設の復旧などにあたった。昨年7月に陸自が撤退した後は、クウェートとイラク南部のタリル空港との間で輸送活動をしていた空自が、活動範囲を首都バグダッドと北部アルビルに拡大し、現在まで駐留を続けている。昨秋の米国中間選挙で与党・共和党が敗れたのを受け、米国の超党派組織がブッシュ大統領に対し、08年3月までに米軍部隊を段階的に撤退させる提言を出したことから、政府内では一時、延長幅を1年とすることも検討された。だが、ブッシュ大統領が1月、2万人を超す部隊の増派を柱とするイラク新政策を発表。政府は「現地の情勢を見極める必要がある」(政府関係者)として、最終的に2年延長を決めた。政府は法改正に伴い、これまで原則1年ごとに行ってきた基本計画の延長を「6カ月ごと」に改める方針だ。
3月30日 毎日新聞

■「現地の情勢を見極める」のは誰なのでしょう?どんどん流動的になって行く「情勢」に対して「2年間」は長過ぎるような気がします。その後は「半年ごと」に延長する事にしても、何の保険にもならないでしょう。性質(たち)の悪い官僚の作文としか思えませんなあ。

中東再編? 其の弐

2007-04-01 11:06:58 | 外交・世界情勢全般
■昔通りの「欧米列強による山分け」談合が進んでいる証拠に、アラブ諸国が急に「一致団結」を演じ始めています。

サウジアラビアのアブドラ国王が米軍のイラク駐留を「不法な占領」と批判したことから、サウジを中東の主要な同盟国に位置づける米国に波紋が広がっている。両国間では最近、パレスチナ政策などをめぐり不協和音が目立ち始めているだけに、米国はイスラム世界の盟主サウジの真意を測りかねている。アブドラ国王はリヤドでのアラブ連盟首脳会議で28日、「イラクでは不法な占領と宗派主義の下で同胞の血が流れている」と発言。これに対し、ペリーノ米大統領副報道官は29日、「多国籍軍の駐留は国連安保理決議に基づき、イラクの要請を受けたものだ」と反論し、国王の認識に疑問を投げかけた。

■裏から手を回して傀儡政権を樹立し、その正式な?要請に応じる形で表玄関から武力介入するのは、大昔から続いている伝統的な国際謀略で、冷戦時代には裏と表が極限まで近付いて米ソの「代理戦争」が火を噴きましたなあ。イラク戦争に「解放戦争」の美名を与えたのは、米国内に逃げ込んだ亡命イラク人が並べ立てたウソと本当を混ぜこぜにした証言と要請でした。そのほとんどがウソだったとバレてしまっても、サダム・フセインを生き返らせることも出来ないし、旧体制を復活させるわけに行きません。最後に残る正義は「国連安保理決議」だけとなりますが、開戦には反対で戦闘終了後の駐留には賛成、などという矛盾した決議をしている会議に大義が有るかどうか……。国連 VS OPECなどという元も子も無くなる対立には至らないでしょうが、アラブの盟主・聖地の守護者というサウジの立場を軽く扱っていると、「敵の敵は味方」というアラブの論理に足元をすくわれる危険が増して行きますぞ!


米政府の困惑ぶりは同日のイラン問題をめぐる議会公聴会でも露呈した。バーンズ国務次官は国王発言について「少し驚いた。通訳の間違いの可能性もある」と述べ、サウジに説明を求める考えを表明した。28日付の米ワシントン・ポスト紙は、4月17日にホワイトハウスで予定されていたブッシュ大統領招待の晩さん会を、アブドラ国王が明確な理由なしにキャンセルしたと報道。執筆者のコラムニストは、サウジの対米姿勢の変化を「ブッシュ大統領の国内での地盤沈下が外交能力もむしばんでいることの兆候だ」と指摘している。

■国内での支持率が下がれば新たな戦争を起こして強引に愛国心を呼び覚まして熱狂させる、使い古された嫌な方法ですが、イランが米国海軍を「騙まし討ち」しただの、サウジが「背後から一突き」しただの、これまた何処かで聞いたストーリーが作られたら、全土で盛り上がっている反戦・厭戦気分も吹き飛んでしまうかも知れませんなあ。


中東ではサウジが外交面で主導的な役割を担う動きを見せている。先のパレスチナ統一政府発足で、イスラム原理主義組織ハマスの条件を穏健派のアッバス自治政府議長に受け入れさせたのもサウジだ。3月初めにはイランのアフマディネジャド大統領がサウジを訪問。米国はこうした動きを歓迎していない。イラク情勢泥沼化を受けた中東政策の見直しから、ライス国務長官はパレスチナ和平への関与を強め、過去4カ月で4度も中東を訪問。大きな外交戦略として中東を「穏健派」と「過激派」に再編し、穏健派を政策推進の原動力に活用する方針だ。その中核であるサウジから実際に距離を置かれれば、米国にとって事態は一層深刻になる。
3月30日 毎日新聞

■サウジが米国との距離を広げて行って限界を超えたら、英米軍が目の敵にして居るイスラム過激派が、アフガニスタン国境の山岳地帯からサウジに「義勇軍」として駆け付ける悪夢のような展開も心配されますぞ。イラク占領に失敗した米国は、アフガニスタンとの間に位置するイランにも戦火を広げて、対テロ戦争を単純な構図に描き直そうとしているのかも知れません。チェチェン問題を一気に片付けたいロシアも、西アジア一体がどろどろに溶解するような事態になれば、どさくさに紛れて恐ろしいクリーン・アップ作戦を断行する好機と考えるでしょうなあ。

■イラク内戦の裏で暗躍しているイランとシリアを分断して、シリアの手足を外交的に縛り上げておいて、イランを実力で叩き潰せば、パレスチナ問題も一挙に解決する、そんな短絡的な事を誰かが考えているような流れですが、そんな身勝手な解決策で伝統的なイスラム地域を再編成されては堪りませんから、イラク問題もパレスチナ問題も、自らの手で解決して見せる!という声が大きくなるのは当然の事でしょう。


サウジアラビアの首都リヤドで開かれたアラブ連盟首脳会議は29日、イスラエルの占領地撤退などと引き換えにアラブ諸国が対イスラエル関係を正常化するとの中東包括和平案を確認、イスラエルに受け入れを求める「リヤド宣言」を採択し、閉幕した。アラブ主導和平案に対する国際社会の後押しを得る狙いがある。
3月29日 毎日新聞

■パレスチナ自治政府の予算を握っているのは、資金援助を続けているアラブの産油国ですから、ファタハ系の後ろ盾となっているサウジと、ハマス系を援助しているイランが手を結べば、米国が失敗を繰り返している中東和平が裏側からまとまってしまう可能性があります。イランが手打ちに応じれば、シリアもそれに同調せざるを得なくなり、イスラム諸国の力だけでイラク戦争の後始末が行われる道筋が見えれば、イラクの内戦も呆気なく幕となるかも知れませんなあ。

中東再編? 其の壱

2007-04-01 11:06:26 | 外交・世界情勢全般
■「バカと鋏は使いよう」とは申しますが、本来は軍事力は万が一に備える「寄らば、斬るぞ!」の威嚇と抑止が目的なのですが、常に切れ味を実際に試しておかないと気が済まない物騒な国が有るというのが困ったところであります。「バカの一つ覚え」という恐ろしい諺も有りますし、「毒を喰らわば皿までも」という慣用句も有りますなあ。先日、亡くなった植木等さんの「分かっちゃいるけど、止められねぇ」という歌は、他愛の無い酔っ払いの飲み過ぎを自虐的に笑う内容ですが、止められないのが戦争となると笑っていられませんなあ。

ロシア軍情報当局者はこのほど、イラン国境付近で米軍の活動が極めて活発になっているとの情報を現地から得ており、米軍がイランに対する陸・空両面による軍事作戦の準備を進めているとの見方を示した。ロシア通信が伝えた。同当局者は、ペルシャ湾に展開されている米軍兵力が2003年のイラク開戦時以来の規模に達しているとし、「米国防総省は最低限の犠牲でイランを屈服させる方法を模索している」と指摘した。 
3月29日 時事通信

■「満を持す」という慣用句は、矢をつがえた弓の弦を限界まで引き絞っている様子を表わす言葉です。イランの東、アフガニスタンと西隣のイラクでは、「大規模掃討作戦」が同時進行中で、南に開いているペルシア湾では米国海軍が大規模な演習中です。刀の柄に手を掛けたとか、弓に矢をつがえたという状態ではなく、もう矢が飛び鉄砲がぶっ放なされている段階です。イランの北に延びる長い国境線を挟んで、状況の変化をじっと見ているエネルギー大国のロシアは、対テロ戦争自体は自国内の独立派を叩き潰すためにも大賛成で、イラクに続いてイランまで産油量を減らすような大騒ぎが起これば、原油と天然ガスの値段が急騰しますから、これも内心では嬉しい儲け話に聞こえるでしょうなあ。


ブッシュ米大統領は28日、ロシアのプーチン大統領と電話協議した。イランの核開発問題で、イラン側に国際社会への協力姿勢を求めることで両首脳は一致した。電話協議は米側からの要請で行われた。ロシア大統領府によると、両首脳は、国連安保理が採択したイラン制裁新決議について「イラン側に国際原子力機関(IAEA)や国際社会との協力を求める深刻な政治的シグナルを送った」との認識で合意に達した。一方で米国が計画している東欧へのミサイル防衛システム配備に対し、プーチン大統領はロシア側の懸念を改めて表明。ブッシュ大統領は、この問題でロシア側と詳しい協議を行う用意があると表明したという。
3月29日 毎日新聞

■プーチン大統領にとっては、米国が東欧諸国に並べ始めたミサイル迎撃システムの拠点が、確かに「対イラン」用の欧州防衛が目的だとは分かっていても、照準をちょっと変えたら、ロシアから西に向かって放たれるミサイルが、すべて無駄に迎撃される悪夢にもなりますから、「ロシア発のミサイルはフリーパス」にするような、奇怪な相談をしているのでしょうなあ。ロシアのエネルギー政策が居丈高で傍若無人なものになった場合、欧州はロシアと敵対する可能性も有るのですから、ロシアの飛び道具を封じる切り札に使われる可能性は消えないでしょう。

■イランに対する「国際社会の協力姿勢」というのは、日本政府流に書き直せば「対話」よりも「圧力」を意味しているはずです。核開発とミサイル技術に莫大な資金を投入しているイランは、どうやら台所は火の車のようで、ロシアに支払うべき債務が借金になっているそうで、ソ連時代から「高利貸し」体質を持っているロシアが、イランの国家資産にぺたぺたと差し押さえの赤札を張り始めたら大変ですぞ。欧州の分断は解消されましたが、冷戦時代から続いている中東地域の縄張り争いがいよいよ「手打ち」となれば、ロシアがイランの北半分を削り取り、ロシア帝国時代からの宿願だったカスピ海沿岸を丸ごと手に入れる事が出来ます。イランの南半分をイラク南部にくっ付けて英米が取れば、やはりフランスはイラク利権に口を挟んで来るでしょうし、そうはさせじ!と北京政府は中東の現状維持を建て前にして、イランとイラクに確保している利権を守ろうとしそうですなあ。