旅限無(りょげむ)

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地雷から空母まで 其の弐

2007-04-04 20:33:54 | 日記・雑学

しかし、国連筋は「中国製について確実に言えるのは『見つかった』という事実だけだ」と強調。「不発弾とは断定できない」としたうえで、発見場所付近にあったロケット弾の発射装置などがイスラエル軍の攻撃で破壊され、ロケット弾に詰め込まれていた子爆弾が散乱した可能性もあると話している。イスラエル軍は昨年夏、ヒズボラ攻撃で自国製などのクラスター爆弾をレバノン南部に投下したが、同軍報道官は毎日新聞の取材に「中国製のクラスター爆弾を使用したことは一切ない」と説明している。一方で、ヒューマン・ライツ・ウオッチやイスラエル警察によると、紛争時、中国製のクラスター型ロケット弾113発がイスラエル北部のナハリヤなどに撃ち込まれたことが確認された。

■ナハリアはレバノン国境から20キロにも満たない所に有る海辺の町です。夜陰に紛れてゴム・ボートでレバノン領からゲリラが上陸したこともある場所ですが、今回の戦闘では国境を越えてロケットが着弾しました。普通ののどかな町ですから、被害は一般住民が受けました。中東の戦争は根深い報復の連鎖ですから、眼には眼を!の倍返しが繰り返されます。互いに市街地を標的にしてクラスター弾を投げ合うような事は止めて欲しいものですなあ。


これに対して、レバノン国会議員でヒズボラ幹部のハッサン・ホバラ氏は毎日新聞のインタビューの中で、クラスター爆弾について「我々には必要ない武器だ」と強調、ヒズボラが保有したり、使用したことはないと主張した。レバノン南部で見つかった中国製については「イスラエル軍が使用したものだ」と語った。レバノン軍で地雷・不発弾の除去を担当するムハンマド・フェフミ大佐も「イスラエル軍が使用した」と述べた。両氏はその「根拠」として「(クラスター爆弾は)誰でも闇市場で入手できる」と指摘したが、イスラエル軍による使用の具体的な証拠は示さなかった。
4月4日 毎日新聞

■何だか、旧満州で掘り返された毒ガスみたいな話で、使ったり埋めたりした者と元々の所有者と、製造元の特定は水掛論になって困難です。旧日本軍のように「武装解除」されたわけではない両者ですから、互いに使用を認めない袋小路に入り込むのは仕方が無いでしょうが、ここに「闇市場」という話が紛れ込むのは由々しい事ですぞ!何処かから流れ込む軍事資金が、闇の市場に流れて物騒な武器に化けると、相手の装備が正確に把握できずないので、互いに過剰な防衛を考えねばなりませんからなあ。しかし、そろそろ「地雷」の製造と使用を止めましょう、という国際世論が出ている時代ですから、地雷を発展させたような武器は早急に「卒業」するべき時でしょう。とは言っても、「地雷」は良い商売になるらしいですから、作っている国としては止められないのが現実で……。
 
 
不発弾が散らばり、「第二の地雷」と恐れられるクラスター(集束)弾の禁止条約を作る動きがようやく始まった。ノルウェーのオスロでの国際会議で条約交渉の開始が決まった。クラスター弾は一発の爆弾に数十―数百の子爆弾を内蔵。投下後に子爆弾が空中で飛び散り落下するため、広い範囲に打撃を与える。半面、子爆弾は不発率が高く、戦闘終結後も爆発する被害が相次ぎ、非人道兵器との批判は強い。目標とする2008年末までの条約制定をぜひ実現したい
古くは米軍がベトナムで、最近ではアフガニスタンやイラクで使った。昨夏にはイスラエル軍がレバノンで使用した。これまで16カ国が使い、確認されただけで民間人の死傷者は1万人近くに上る。子どもや農民が巻き添えになることが多く、痛ましい限りだ。

■ヴェトナム戦争からポル・ポト派との内戦でインドシナ半島には呆れるほど多くの地雷が放置され、熱帯雨林気候の降雨によって泥の中をうろうろするので危険きわまりと言われていますし、アフガニスタンやイラクにもごろごろしているそうで、世界中に1億個も未処理の地雷が埋まっているという話も有りますなあ。全部、何処かの国が製造して現地の誰かさんが買って埋めた物です。作って売った国は、単なる商売として済ましているので、後始末などする気はまったく無いようです。


……毎日新聞カメラマンがイラク戦争取材の記念に子爆弾を持ち出そうとして空港で爆発、6人が死傷する事故もあった。これで日本でもクラスター弾に関心が集まった。保有国は日本など70カ国。自衛隊は北朝鮮有事などを想定し、数千発配備している。オスロ会議の参加49カ国のうち、日本など3カ国が条約交渉に加わらないとしたのは残念だ。会議には米ロ中など軍事大国も参加しておらず、実効性ある条約となるかは未知数だ。だが、10年前の対人地雷禁止条約と同様、NGOの積極的な動きで国際的な機運は高まる。地雷100万個を全廃した日本なのだから、廃止に踏み切れないはずはなかろう。
2007年3月21日 愛媛新聞

■この種の記事が各紙に掲載されますが、拉致と密輸で国境線が易々と破られて許せぬ国家犯罪が横行しているのですから、サダム・フセインが過去に毒ガスを実際に使用した前科が命取りになったように、因果応報で軍事的に国境線が破られる可能性を日本は捨てられませんなあ。「もうやりません」「ああ、そうですか」という訳には行きませんぞ。どんなに超人的な能力を持つ将軍様の特殊部隊でも、地雷原を作られたら海岸部での活動は大きく制約されますから、部活帰りの女子中学生が拉致されても気付かないような国の防衛策としては、地雷に変わる備えは必要なのでしょうなあ。海岸線や島嶼部をまんべんなく警戒出来ない「事情」を考えれば、飛行機から散布できる機動性は捨て難いところです。

地雷から空母まで 其の壱

2007-04-04 20:33:19 | 日記・雑学
■北朝鮮の核開発問題の核心は、世界の裏側に広がっている武器の闇市場に核兵器が流出して拡散したらエライことになる!という危機感です。結局、うやむやになったパキスタンを中心にして構築された核開発技術の闇ネット・ワークも、その全貌が解明されたとは言えない状態ですし、世界中の紛争地帯には何処から流れ込んで来るのかさっぱり分からない武器が取り揃えられていますなあ。部品の一部を除いてメイド・イン・ジャパンが刻印された武器は出回っていないのは当然ですが、国連安保理の常任理事国が製造販売している製品はあちこちで流通しているようです。武器は人類が生み出した最も高価な「消耗品」ですから、何処の国でも景気回復・経済成長の切り札にしようと国を挙げて新製品の開発に努力しているわけです。

■米国製の武器は、どんなに高くても構わないから「世界最強」を売り物にする商品が有名ですが、弾薬・砲弾に加えて通常炸薬の爆弾・ミサイル・魚雷などの「消耗品」も大量に製造販売しています。イラク攻撃の口実となった「大量破壊兵器」の輸出や横流しはしない一方で、地雷とそれに継ぐクラスター爆弾という商品は世界中で大人気です。日本の自衛隊も「事情」が有って購入しております。


イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラによる昨年夏の第2次レバノン戦争後、中国製のクラスター型ロケット弾の子爆弾がレバノン南部で発見されていたことが分かった。国連筋が毎日新聞の取材に明らかにした。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」によると、このロケット弾の実戦使用が確認されたのは初めて。国連筋は見つかった子爆弾が不発弾ではなく、もともと発見場所付近に配備されていた可能性を示唆した。関係者の間で、ヒズボラなど「非国家組織」へのクラスター爆弾拡散の危険に対する懸念が高まっている。

■パレスチナのゲリラ戦で用いられていたのは、旧ソ連製の「カチューシャ」ロケットで国境沿いに移動しながら、神出鬼没の小部隊が散発的にイスラエル領に撃ち込んでいたものです。安価で軽量で取り扱いが簡単なので、誰にでも使える武器であります。しかし、何せ旧式なので照準は不正確で威嚇や嫌がらせの効果しか無かったようです。その後、旧ソ連が肩撃ち式の対戦車ロケット砲を開発し、米軍は飛行機を撃ち落せる高性能の「スティンガー」ミサイルを開発してから、山岳地帯のゲリラ戦の様相が一変しました。この恐ろしく命中精度の良い新兵器が、アフガニスタンでの対ソ連戦で多用されて以来、あちこちに流出して販売元の米国の飛行機が狙われるという皮肉なことになっています。

■今回、レバノン戦争の現場で発見された物騒な代物は、もっと本格的な戦闘に役立つ強力な武器から発展した物と推察されますぞ。中国人民解放軍の陸軍が装備している「89式122ミリ自走多連装ロケット・システム」というの兵器が有ります。IT化に熱心な人民解放軍ですから、レーダーやGPS装置などとの連動技術も進んでいるでしょうがら、命中精度は相当に高いと考えられます。しかし、次々と撃ち出されるロケットの弾頭に、ややこしい物が載っているのは困りますなあ。さすがに、この口径では小型の核弾頭は載せられそうも有りませんが、生物兵器や化学兵器が仕込まれると恐ろしいことになります。


中国製子爆弾は「MZD-2」と呼ばれる型で、122ミリロケット弾の中に約40発が装てんされている。国連筋によると、「MZD-2」はレバノン南部でのクラスター爆弾の不発弾除去・処理作業で見つかった。これまでに南部地域で処理した子爆弾約11万発のうち、中国製の割合は1%以下だったという。地雷や不発弾の除去活動をしている英国の非政府組織(NGO)「ランドマイン・アクション」の報告書によると、中国製子爆弾の一部はレバノン南部のベイト・ヤフーンで、イスラエル軍が使用した米国製クラスター爆弾の不発弾などに交じって見つかったという。

■米軍があちこちで使用しているクラスター爆弾は幾つか種類が有るそうで、10個から247個の子爆弾を広範囲に飛び散らせる兵器です。恐ろしい事に親爆弾から飛び出す子爆弾にも何種類か有って、小さなミサイルになって高速で目標を撃ち抜く物や、空気と反応して発火して文字通り火の雨を降らせる物、赤外線センサー内臓で敵の戦車や大砲を殲滅する物、そして、散布後に爆発せず強力な地雷となって好きな所をあっと言う間に地雷原にしてしまえる物などが開発されているそうですなあ。戦闘が終わってから2次的な被害が出るのは、最初から地雷として散布された物ばかりでなく、数多くの子爆弾の中に紛れ込んでいる「不発弾」も、ちょっとした弾みで設計通りに仕事を始めますから、人間が戦車攻撃用の子爆弾などに触れたらエライことになります。

最近の気になる日本語 其の弐

2007-04-04 02:12:54 | 日本語

埼玉県の上田清司知事は2日、県の新規採用職員就任式の式辞の中で、仕事に対する使命感の一例として「自衛官は大変だ。平和を守るために人殺しの練習をしている。『国民の生命と財産を守るために頑張って下さい』と褒めたたえないといけない」と述べた。

■この文章を通常の言語感覚で読みますと、「自衛隊は憲法違反の人殺し集団だ!」という非常に分かり易い皮肉を込めた当て擦りとしか思えません。でも、御本人はまったく違う感覚でこの演説をやってしまったようなのですから、埼玉県民の可哀想です。


式後、上田知事は記者団に「殺傷という言葉を使えば良かったかもしれない。分かりやすくなり過ぎて、きつい言葉となった」と釈明した。防衛省の守屋武昌次官は、同日の記者会見で「自衛隊の現場は多種多様で、一つの戦闘場面に限定されるものではないということを理解してほしい」と不快感を示した。知事周辺は「地元には駐屯地もあり、自分の命を犠牲にすることをいとわない方々がいるということを言いたかったのだと思うが、言葉足らずだった」と語った。
4月2日 読売新聞

■「言葉足らず」や「説明不足」という便利な表現が愛用されているようですが、大きな文学賞を取って偉大な弟の力も借りて政治家になった都知事さんまで、この言い回しを使っているのですから、やはり日本語は病んでいるのでしょうなあ。上田知事さんが言っているように「訂正」しますと、「自衛官は大変だ。平和を守るために『殺傷』の練習をしている。『国民の生命と財産を守るために頑張って下さい』と褒めたたえないといけない」という演説原稿になるのですが、何がどのように変わるのでしょう?上田知事さんは、宮崎県の東国原知事と同じように、前任の知事さんの大きな不祥事を起こした後の選挙で出て来た人です。県政がどれほど是正されたのかは存じませんが、「言葉足らず」の意味が分からない人である事だけは確かなようです。


気象庁が天気予報で使う用語が、1日改訂された。都市部の気温が上がるヒートアイランド現象などの影響で、35度以上の「猛暑日」を新設。情緒ある言葉として親しまれた「宵のうち」は、惜しまれながら姿を消すことになった。10年ぶりの大幅改訂。同庁は約1200語すべての見直し作業を実施。今年2月から3月にかけて一般から意見を募集し、最終決定した。気温の高い日を示す言葉はこれまで25度以上を「夏日」、30度以上を「真夏日」としていたが、地球温暖化やヒートアイランド現象により都市部を中心に35度以上になる日が増えたため、新たに「猛暑日」を設けた。

■「猛暑」という言葉は今までにも多用されていましたが、こうして「猛暑日」と定められますと、若者言葉の「チョー暑い」と似たような響きを感じてしまいますなあ。上出来だった「熱帯夜」に準じて「熱帯日」としたら安っぽい感じがしますが、これまでに多用された「猛暑」が使い難くなるばかりでなく、「夏日」「真夏日」の造語自体が軽薄な造語だったことを改めて証明してしまったような印象が有ります。それを隠し通すなら、今まで通りに「35度を越える真夏日」のままで良かったのではないでしょうか?


合わせて「熱中症」も追加。北海道などで昨年頻発した竜巻・突風災害で知られるようになった竜巻などの強度を示す「藤田スケール」も加わった。「宵のうち」を無くすことについては「情緒ある言葉だから残してほしい」「好きな言葉」などと反対意見が多く寄せられた。しかし、夜のもっと遅い時間帯を表すとの誤解もあるため、分かりやすい「夜のはじめ頃(ごろ)」への変更を決めた。
4月1日 時事通信

■一体、何処の誰が「夜のはじめ頃」を提案したんだ!?不健康に夜更かしが一般化したからと言って、「宵闇迫れば…」の歌詞を聴いて深夜と思う日本人が増えたのでしょうか?京都の「宵山」も「夜のはじめ頃・山」にするのか?夢二の『宵待ち草』はどうするんだ?「まだ宵の口」とは言えなくなるのか?「こ宵」は夜中のイベントでしか使えなくなるのか?どうも話が逆立ちしているようですなあ。文科省の中央教育審議会にでも、国語審議会にでも怒鳴り込んで、「宵」も知らない日本人を増やすなあ!と騒げば、国民は啓蒙されたり感動したりしたのではないでしょうか?嗚呼、「夜の始め」が広まれば、「夜の終わり」が早暁・早朝・朝ぼらけ・夜明けに取って変わられるのでしょうなあ。


松岡“還元水”大臣の事務所費問題。松岡は国会のトイレで「辞めなきゃいかんのかなぁ」と嘆息し、安倍は若手との昼食会で「ご迷惑をかけている」と謝っているが、国会では相変わらず「法に従って適切に処理」の一点張り。ところが、19日の参院予算委員会で菅義偉総務大臣が松岡擁護のこんな珍答弁をした。
「お茶やジュースは消耗品費だが、ミネラルウオーターは光熱水費。ミネラルウオーターはお茶やジュースとは明らかに違う」
政治資金収支報告書を所管する担当大臣がミネラルウオーターなら事務所の光熱水費に計上しても問題なし、との見解を示したのだから、もうムチャクチャ。……野党議員は来年の収支報告書にミネラルウオーター代の名目でガッポリ計上してみれば面白い。ところで、ミネラルウオーターでお茶をいれた場合は消耗品なのか光熱水費なのか。菅大臣、アタマは大丈夫か?
3月23日 日刊ゲンダイ

■既に松岡発言問題では、有りもしない「事務所」に、有ると言っていた「還元水生成機械」など存在していない事が報道されてしまっているそうです。菅総務大臣は『あるある大辞典』のデータ捏造問題に関しても、なかなか面白い事を言っているのですが、国語辞典に出ている「光熱費」に一字加えて「光熱水費」とした上で、その「水」の一字を拡大解釈して見せたわけですから、テレビ業界でも同じ手法を使えば恐ろしい過剰演出が可能になりますぞ!時節柄、地方自治体の選挙の季節でもありますから、御当地の方言を含めて、正確で味わい深い日本語を使える人に投票したいものですなあ。

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最近の気になる日本語 其の壱

2007-04-04 02:12:20 | 日本語
■必要な事を言葉で伝えるには、無駄を省いて順序良く遺漏の無いように工夫しなければなりません。そこで「言葉を選ぶ」「文を練る」「推敲を重ねる」という作業が不可欠になるわけであります。その反対に位置する言語文化が「即興(アドリブ)」というもので、これは当意即妙と評されるような名人芸に出来る人は非常に少ないわけでして、日本ではほぼ絶滅に瀕しているような状態であります。古くは「狂言」、江戸時代の遺産として「古典落語」などが有りまして、やはり、テレビがその凶暴性を発揮してしまったと申しましょうか、狂言では変な宗家が出し物よりも実生活の方が面白い見世物になり、名人でもない(失礼ながら…)ご老体が体調不良で引退するネタを大袈裟に取り挙げたりして商売にしている一方で、ろくな演芸番組を放送もしないのですからなあ。

■田中角栄さんが大臣だった時代に、電波法に従って免許を大盤振る舞いしてテレビ放送局が雨後の筍(たけのこ)のように誕生した歴史も、ロッキード騒動の時に御本人が「免許なんか出さなきゃ良かった」と悲しい皮肉を言ったことも、覚えている人が少なくなった昨今であります。納豆・蜜柑・味噌汁…そんな物を万能の特効薬みたいに放送した番組が有ったと大騒ぎしているようですが、もっと怪しげな番組は吐いて捨てるほど有るのではないでしょうか?米国文化を最も濃厚に浴び続けたのがテレビなのですから、エイプリル・フールの洒落っ気も真似すれば良いと思うのですが、結局、文化的にレベルの低い視聴者を相手に、高級なジョークを放送したら後が面倒だ、と言う便利な言い訳を使って楽しいパロディ番組を作ろうとしていないのではないでしょうか?

■視聴者をバカにしている一方で、かつては「大本営発表」をし続けた罪やら、米軍の占領時代に「米国万歳」をやり過ぎた恥ずかしさやら、そのまた反動に悪乗りした「安保反対!」や中国万歳、北朝鮮万歳と続いてしまった思い込みの強い報道したを総括もせず、行け行けドンドンで走って来たツケが溜まってしまったのでしょうなあ。欧州諸国が年に1回、見事な花火のように打ち上げるテレビと新聞を使った大ホラ祭りを、日本のマスコミが本気でやったらどうなるのでしょう?一つ残らず、何処かで見たり聞いたりしたネタのような印象を撒き散らしてしまうような気がしますなあ。最近の筑紫哲也さんの番組にはその兆候が濃厚の模様ですが、丹念に検証したわけではありません。少し遅れて出て来た田原総一郎さんはどうでしょう?

■今年のエイプリル・フールはいろいろと考えさせられる、妙な年のようです。ついでながら、重箱の隅をつついて見ようと思います。


千葉県市川市のマンションベランダで3月26日夜、大手英会話学校「NOVA」講師で英国人のリンゼイ・アン・ホーカーさん(22)が他殺体で見つかった事件で、ホーカーさんと市橋達也容疑者(28)=死体遺棄容疑で指名手配=が一緒にいる姿が同月25日朝、東京メトロ行徳駅前の喫茶店の防犯ビデオに写っていたことが2日、行徳署捜査本部の調べで分かった。……
4月3日 産経新聞
 
■裁判官を呆れさせているという「監禁皇子」の2代目みたいな、お医者さん夫婦の息子がカネと暇を持て余して、歪んだ趣味の外人好みの欲望と妄想を追及したとしか思えない猟奇的な事件が起きてしまいました。日本だけでなく世界に恥を晒した千葉県の警察は、まともな記者会見も開かないまま、汚名を雪ごうと頑張っておられるようですが……。長身の男が裸足で逃げ出して1週間、似顔絵だの写真だのと騒いでいても、専門家の捜査員が目の前で取り逃がし、背負っていたザックまで毟り取っているのですから、面通しは簡単でしょうなあ。容疑者に殴り倒された警察官は、夜も眠れないでしょう。同情するしかありませんが……。

■会見報道が無いので、千葉県の警察がどんな「言葉」で痛恨事を表現しているのかはまったく分かりませんが、どのマスコミも一斉に報道した上記の記事は、ちょっと立ち止まって考えると、やはり変です。「防犯ビデオ」に犯人(容疑者)が写っている?それなら「防犯」には、何の役にも立っていない事になりますから、「監視ビデオ」と呼ぶべきでしょう。テレビ業界が飛びつくような「衝撃の瞬間」も、やはり「防犯ビデオ」に記録されて報道されますなあ。犯罪の発生率が低下しているから「防犯」なのか、設置した人の願いが「防犯」なのか、犯罪に対する抑止力などという寝言を言う前に、暇とカネを持て余している若い肉体の上に載っかている脳みそに、どんな刺激的な情報が流し込まれているかを検証した方が良いでしょうなあ。人間の頭脳には妄想を無限に膨らませる容量がたっぷりと組み込まれているのですから、オウム真理教が愛用した手法で特定の映像を集中的に編集して日常的に観続ければ、現実は簡単に妄想の下敷きになって押し潰されます。

■残念ながら、マス・メディアはあらゆる妄想の持ち主に向かってでも、無差別に「情報」を送り続けねばなりません。最近も、お尻を丸出しにして名を売った女性がテレビ業界から「引退」するとて、ちょっとした騒ぎになっていたようですが、変質的に女性のお尻を好む者も有り難い視聴者の1人でしょうし、CMでもバラエティー番組でも、やたらと白人女性を映し出すテレビの画面を常軌を逸した興味を持って観ている視聴者も居るわけですから、ややこしい映像は、ややこしい場所に出掛けて手に入れるようにしておかないと不味いのではないでしょうか?『あるある大辞典』で学習したテレビは、これからは小まめに言い訳がましいテロップを、これでもか!というほど流すのでしょうなあ。