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ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

R+R=NOW @東京JAZZ

2018-09-14 23:37:28 | フェス、イベント
少し前の話になりますが、9月1日、NHKホールで行われた東京ジャズにて、ロバート・グラスパー率いる、R+R=NOW のライヴを観てまいりました。現行ジャズシーンの精鋭が集うスパー・ユニットです。メンバーは以下の5名。

ロバート・グラスパー(key, rhodes)
テラス・マーティン(sax, vocoder,key)
クリスチャン・スコット(tp)
デリック・ホッジ(b)
テイラー・マクファーリン(key, electronics)
ジャスティン・タイソン(ds)

凄いメンツですよね! ヒップホップとジャズを繋ぐ新世代の旗手ロバート・グラスパーを筆頭に、カマシ・ワシントンやサンダーキャット達と共に西海岸の新しいシーンの中心的存在テラス・マーティン、ブレインフィーダーから作品をリリースする天才テイラー・マクファーリン、さらにニューオーリンズからクリスチャン・スコットですよ! そしてリズムを担うのはロバート・グラスパー・エクスペリメントでそれぞれグルーヴを担ってきたデリック・ホッジ(b)とジャスティン・タイソン(ds)ですからね。

私も、このライヴを楽しみにしていたんですよ〜!


SEにヒップホップが流れるなか、メンバー達が登場。ロバート・グラスパー自らによるメンバー紹介に始まり、ジャスティン・タイソンが淡々とリズムを刻み始める。もう、最初のビートから訳分かりませんでしたね。テンポも拍子も掴みずらい。まるでディレイで遅らせたように刻むスネアが独特の揺らぎを醸し、そこにデリック・ホッジのぶっとい低音が絡み、ロバート・グラスパーのエレピが隙間を埋めていく。しかもこれ、ジョー・ヘンダーソンの「Afro-Centric」ですよ。格好良い!! 同じ日の夜の部に出るハービー・ハンコックに敬意を表して、って感じですかね? なかなか捻りが利いてて良いですね。ちなみに東京ジャズのオフィシャルサイトにてこの日のセットリストが発表になっているのですが、以下のような感じ。

01. Power to the People
02. Respond
03. Been on my mind
04. How much a dollar cost
05. Taylor time
06. Perspectives
07. Postpartun
08. Message of Hope
09. Resting Warrior


1曲目は同じジョー・ヘンダーソンでも「Power to the People」になっていますね。そうだったのかな〜。もうすでに記憶が曖昧ですいません。ちなみにこの1曲目から4曲目の「How Much A Dollar Cost」まで切れ目無しで演奏されました。いやとにかく、ジャスティン・タイソンとデリック・ホッジのリズム隊が凄い! あくまでもジャズらしいクールさを保ちながら、これ全部アドリブなんじゃない?って思わせられるぐらいフリーキーで、さらにどっぷりとした黒さが香るっていう。堪りませんでしたね〜。そこにロバート・グラスパーの鍵盤や、テラス・マーティンのサックスなどが立体的に絡み合っていく。もちろんクリスチャン・スコットのトランペットも!!

私、ロバート・グラスパーとテラス・マーティンはそれぞれのライヴを観たことがあったんですが、クリスチャン・スコットを生で見るのはこの日が初めてでした。なのでとても楽しみにしていたんです。何せマルディグラ・インディアンの家系に生まれた、ドナルド・ハリソンの甥っ子ですからね。ステージ中央でトランペットを構える堂々とした姿は、ニューオーリンズ音楽ファンとしてやっぱり嬉しかったですね。特に「Respond」でのソロは美しく、そして熱かった!

テラス・マーティンも思いのほか熱いサックス・ソロを吹いていました。かと思えばヴォコーダーで彩りを加えたり。やっぱりエレクトリックなグラスパーにはヴォコーダーが似合いますね。そのテラス・マーティンが居るからなのかは分りませんが、彼がプロデュースしたケンドリック・ラマーの「How Much A Dollar Cost」。印象的なホーンリフでマジか!!って思いました。もちろんラップはありませんけど。クリスチャン・スコットの空間を切り裂くようなトランペットが印象的でした。

テイラー・マクファーリンは、ヒューマン・ビートボックス的なソロ・コーナーがあったり、彼の曲「Postpartun」をやったりと、見せ場はあったものの、ユニット全体のなかでどういう役割をこなしていたのか、正直、私にはよく分りませんでした。すいません…。まあ、テラス・マーティンもサックスとヴォコーダー以外に色々やっていたんでしょうけどね。グラスパーだってただ鍵盤を弾いてただけではないでしょうし。その分らなさっていうのが、高いプロデュース能力を持った人達が集まったプロジェクトならではのレベルの高さで、そこが面白いところでもあるんですけどね。

後半もクリスチャン・スコットの「Perspectives」以降、ラスト「Resting Warrior」まで、途中、デリック・ホッジのソロを挟みつつ、ほぼ切れ目無しで演奏されたのではないでしょうか。ある意味、長〜いジャム・セッションを聴いているような感覚にもなりましたね。「Resting Warrior」では多分ロバート・グラスパーだと思うんですけど、親指ピアノようなプレイをしていましたね。この曲のスタジオ録音版を初めて聴いた時、すぐに電化マイルスが頭を過ったのですが、案外、アフロからの影響も濃いのかな?なんて考えてみたり。(よくよく考えてみれば、1曲目が「Afro-Centric」だったという点も興味深いですね。あれはマイルス・デイヴィスの電化と同時期の69年にジョー・ヘンダーソンがハービー・ハンコックの参加によりエレクトリック・サウンドを取り入れた作品からの曲ですし)。それにしても、デリック・ホッジのベースは格好良過ぎですよ!!あとこの曲はジャスティン・タイソンのドラムソロもありまして、これも凄まじかった!!

今回のライヴはとにかくリズム隊にやられました。特にデリック・ホッジ。数年前にブルーノートで彼のソロ公演を見た時、そんなに感銘を受けなかったんですけど…。でもこの日のデリック・ホッジはヤバかった!!


それにしてもR+R=NOW、私にとってはこの夏、フジロックのケンドリック・ラマーに始まり、ソニックマニアのブレインフィーダーナイト、サマーソニックのカマシ・ワシントンにチャンス・ザ・ラッパー、その他色々体験してきたブラック・ミュージック・ジャーニーの最後を締めるライヴだったのですが、流石はロバート・グラスパーでしたね。しかもこのなかにカマシ・ワシントンなどLAのシーンとの橋渡しとなるテラス・マーティンが居たり、ブレインフィーダーと繋がるテイラー・マクファーリンが居たり、っていう多角的なリンクも感じられ、さらにニューオーリンズの血も入ってる。6人の感性が引力のように引き合いながら調和している、そういう磁場。それがグラスパーらしいクールネスに貫かれているからなおさら凄い!!

このメンバーでのライヴが日本で観れたこと、これは幸せでしたね!!