ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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TIN MEN @ 横浜THUMBS UP

2014-04-09 23:16:32 | ニューオーリンズ
4月8日、横浜サムズアップにて、ニューオーリンズからやって来た変わり者トリオ、ティン・メンを観てまいりました!!

何が変わり者かって、その編成です。メンバーはアレックス・マクマレー(g)、ウォッシュボード・チャズ(washboard)、マット・ペロン( sousaphone)の3人。リズムを担うのがウォッシュボードとスーザフォンと言うのが面白いですよね~。いかにもニューオーリンズらしいと言いますか、いや、多分この編成はニューオーリンズでも珍しいんじゃないでしょうか? しかもメンバー3人共がバンドやソロ、そしてセッションなど多方面で活躍する凄腕達ですからね。

*ここからはライヴの内容のネタバレになりますので、これからティン・メンのライヴを観に行かれる方は読まれないことをお勧め致します。



さて、この来日を実現させたバッファロー・レコーズのダグラスさん自らの紹介でステージに上がったティン・メンの3人。ステージ向かって左手にウォッシュボード・チャズ、右手にアレックス・マクマレー、中央後方にマット・ペロンという布陣。レヴァランド・ゲイリー・デイヴィスの「Sit Down on the Banks of the River」で始まったそのステージ。小気味良いアレックスのギターにチャズのウォッシュボードがチャカチャカと絡み、マットのスーザフォンが低音を支える。1曲目からブレイクが入りチャズが挨拶代わりのウォッシュボード・ソロを披露すると観客達も沸きに沸く。アレックスのヴォーカルも味があって良い!

「Jesus Always Gets His Man」、「Lonely One in This Town」、「Maybellene」、「What Tano-San Say」など、最新作「Avocado Woo Woo」からの楽曲を中心に、旧作もしくはアレックスのソロ作収録曲やカヴァーを含めた選曲は、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようにバラエティ豊かなれど、どれもがティン・メンならではの魅力に溢れた演奏の連続でした。スーザフォン、ウォッシュボード、ギターという三者三様のリズムが絡み合う彼らにしか成し得ないグルーヴ。それは一見チープなようでありながら、聴けば聴く程芳醇な味わいに飲み込まれていくような。リズムとメロディーを行ったり来たりするマットの低音ラインはもちろん、アレックスとチャズの両者による歌の味わいや、個性的なフィーリングなんかも、やはりニューオーリンズという土地が育んだものなんでしょうね。

カヴァーで印象的だったのは、カーター・ファミリーの「Gospel Ship」。軽快なノリで披露されたカントリー・ゴスペルには、ウキウキさせられましたね。あとビリー・ホリデイで知られる「He Ain't Got Rhythm」。こういうチョイスも粋ですよね~。もちろんチャズの歌声も3人の演奏も全て粋でしたけど。チャック・ベリーの「Maybellene」なんかは、アレックスの歯切れよいギターに目が釘付けでした。そして最もたまげたのがダーティ・ダズン・ブラス・バンドの「Blackbird Special」。この編成でこの曲やりますか?っていう。しかも正統カバーですよ。超高速ブラス・バンド・ファンクのグルーヴを3人だけでやってのけてしまうのです。スーザフォンが大活躍なのはもちろんですが、他のパートを一人でこなしてしまうかのようなアレックスのギターも最高でした。そしてグルーヴに“加速”と“うねり”をもたらすかのようなチャズのウォッシュボード!! もう堪りませんでしたね。まさに三位一体のグルーヴ!!ある意味、本家より濃密でした。

それにしてもチャズの存在は際立っていましたね。すました顔して凄いことやってる感がひしひしと伝わって来ました。まったく気負った感じは無く、飄々としたキャラながら、まるでリズムに命を与えるかの如く神がかったプレイの連続。彼を観ているだけで楽しくなり、そして興奮させれました。ちなみに彼のウォッシュボードは、ザディコ/ケイジャンのラブボードではなく、ジャグ・バンドで使われるようなタイプ。ウォッシュボードに空き缶とベルが付けられていて、それらを駆使して色鮮やかなリズムを繰り出していく。「Jesus Always Gets His Man」のようなアップナンバーでの切れ味にもゾクゾクさせられましたが、「He Ain't Got Rhythm」のような曲でのスウィング感も味わい深かったですね。もちろん要所要所で見せるソロも凄かったです!

メンバー3人が「シブヤー!」「シブヤー!」と声を張り上げて始まった「The Barber of Shibuya」。哀愁を感じるメロディーと、情緒とユーモアに溢れるアレックスの歌が最高でしたね。こういう曲でのアレックスの味わいっていうのは見応えありましたね~。

この「The Barber of Shibuya」で一旦ステージは終了し、しばしの休憩を挟んで第2部へ参ります。



さて、ティン・マンの旧作から「Jingling Down The Street」で始まった第2部。序盤に披露されたハーレム・ハムファッツの「Root Hog Or Die」から「Sweet And Slow」「You're Not The Only Oyster In The Stew」というファッツ・ウォーラー関連2連発は、TIN MEN流古き良きR&Bな感じで、そのラブリーな味わいに酔いしれました。ラブリーと言えば、続いて披露された最新作からのタイトル曲「Avocado Woo Woo」も何処か可愛らしい雰囲気に思わず笑みがこぼれてしまいましたね。

チャズとバンド仲間でもある日本在住のミシシッピ・ブルースマン、スティーブ・ガードナーがゲストに呼ばれてのエディ・ボー「Dinky Doo」。スティーヴのブルースハープが加わり、さらに賑やかな雰囲気に。ダニー・バーカーの「Palm Court Strut」、そしてファッツ・ドミノの「I'm In Love Again」の3曲を共演し盛り上がりました。この流れはニューオーリンズ色が濃くて楽しかったですね~。そこにスティーヴのハープがカントリー・ブルースのテイストを加えてのいっそうのガンボ状態がまた格別でした。

チャズが飄々と歌うスティーヴィー・ワンダーの「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours」のカヴァーなんかもありましたが、極め付けは本編ラストの2曲。まずはアレックスが「ロックンロールを~」のようなことを言ってギターを弾き始めたのですが、ロックンロールと言った割には緩いブルースのような感じ。ですがブレイクと同時に彼が声を枯らすように歌ったのは紛れもなくザ・フーの「My Generation」。しかしこれがまた可愛らしく酩酊したような「My Generation」で、これには場内も大爆笑。こういう技ありなカヴァーもティン・メンらしいですよね。さらにレッド・ツェッペリンの「Immigrant Song」。こちらは全うなカヴァー。と言ってもこの編成ですからね、TIN MEN流ロックと言いますか、スーザフォンの吠えっぷりが最高でしたね。観客達も「あああ~!!あー!」と大合唱。

曲が終わると同時に盛大な拍手が鳴り止まない。いつしかアンコールを催促する手拍子となり、大歓声の中、3人が戻ってくる。アンコールは「On The Sunny Side Of The Street」。最後にこういう曲を持ってくる辺りも流石ですね。大騒ぎした後はほっこりと終わる。なんかしみじみしましたね。

おそらく、本当ならここで終わりだったのではないかと思うんです。ですがまたしても手拍子が鳴り止まない。そしてまさかのセカンド・アンコール。アレックスは昔、意外にも東京ディズニー・シーで歌を歌っていたらしいのですが、そんなことを語り、そして歌い始めたのが彼のソロ作から「The Ballad Of Cap'n Sandy」。ストーリー・テラーなアレックスの歌に拍手喝采でした。


いや~、ホント最高でした。1部、2部共に1時間越えのフルボリューム。芳醇で、濃密で、スリリングで、そしてユーモアに溢れた演奏の連続でした。やはりニューオーリンズは凄い!!そしてティン・メンは凄い!!





この夜のセットリスト。 私もメモを取りながら観ていたのですが、それだけでは不十分でしたので、ブルース銀座さんのブログを参考にさせて頂きました。(インスト曲についてはよく分りませんでした…。)

1部
01. Sit Down on the Banks of the River
02. Oh Glory, How Happy I Am
03. Gospel Ship
04. Jesus Always Gets His Man
05. Lonely One in This Town
06. He Ain't Got Rhythm
07. Feets Too Big
08. Werewolf
09. Why Don't You Haul Off and Love Me?
10. Maybellene
11. ???(instrumental)
12. Blackbird Special
13. What Tano-San Say
14. The Barber of Shibuya

2部
01. Jingling Down The Street
02. Root Hog Or Die
03. Sweet And Slow
04. You're Not The Only Oyster In The Stew
05. Avocado Woo Woo
06. Dinky Doo
07. Palm Court Strut
08. I'm In Love Again
09. Function At The Junction
10. Signed, Sealed, Delivered I'm Yours
11. ???(instrumental)
12. My Generation
13. Immigrant Song

ENCORE
01. On The Sunny Side Of The Street
02. The Ballad Of Cap'n Sandy



ティン・メンの来日ツアーの詳細→http://buffalo-records.com/newstopics/info/TinMenTour.html
4月12(土)のYOKOHAMA JUG BAND FESTIVAL では、入場フリーの横浜VIVRE前広場にも出演予定ですよ!

ブルース銀座さんのブログ→http://black.ap.teacup.com/sumori/1511.html