ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@SWEET LOVE SHOWER 特別編

2011-09-02 20:24:45 | ジャズ
前回、SWEET LOVE SHOWERにおける上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトのライヴ・レポを書きましたが、実は、そのライヴよりも遥かに長い時間、サウンドチェックの一部始終をも最前列で目撃してきたんです。なかなか観れるものではないので、その辺りも一応書き留めておこうかと思いまして。ですが、全てを見て来たとはいえ、話し声までは聴こえないので、その辺の想像も交えながら。


上原ひろみトリオの前のバンド、シスター・ジェットが終わり、ほどなくして、ステージに上原さんのピアノや、サイモン・フィリップスのドラム・セットなどが運び込まれる。まずサイモンさんの巨大なドラム・セットに場内がどよめきましたね。ステージ向かって左側にピアノ、中央にベース、右側にドラムという布陣できっちりと並べられる。そしてピアノの調律が始まり、ほどなくして上原さんご本人が登場。沸く観客達。笑顔で応える上原さん。そしてステージ上を観るや否や、ピアノとドラムの間を歩き始める。どうやら歩幅で距離を測っているよう。真剣な眼差しで何度か歩く。すると男性スタッフがメジャーを持って来て実際の距離を測り始める。そしてピアノをさらに左へ、ドラムをさらに右へ移動。どうやら距離が充分ではなかった模様。さすが上原さんはプロですね!

そうこうしてる間にアンソニー・ジャクソンも登場。サイモンさんもいつの間にかドラム・セットの中に収まってる。おのおのが自身の楽器のセット・アップを始める。上原さんは調律が終わるまで、他のメンバーのところへ行ったり、スタッフさんと話をしたり、終始笑顔で上機嫌な感じ。そして上原さんもピアノに座り、ポロンポロンと弾き始める。しばらく自身のピアノを確かめるように弾き続けた後、突然何かの異変に気づいたかのようにスタッフさん(調律師の方だったかな?)に声をかける。いくつかのフレーズを弾き、その響きがおかしいことを伝える上原さん。そしてある一音が原因であることを突き止めたかのように、その一音をポーン!ポーン!と弾いてみせる。確かに何かハウってるような共鳴をしていました。

ちょうどそのタイミングでステージ上に指示が入る、そしてそれに対して上原さんが手を上げ、何か言葉を発する。私には「出来ません…」と聴こえたのですが、違うかもしれません。私の想像では、サウンドチェックに入ります、という指示に対し、上原さんが待ったをかけたのではないでしょうか?そんな風に思っています。上原さんのピアノの周りにはスタッフさんが大勢集まり、ただならぬ雰囲気。グランド・ピアノの中へ向けて何本かのマイクがセットされているのですが、その位置を変えてみたり。しかし解決にはいたらないよう。

ここでまた私の想像ですが、どうやらサイモンさんのドラム・セットへ向けられたマイクとの兼ね合いの問題かもしれません。 スタッフさんがサイモンさんのドラムセットの前に集まって何やら話し合いをしたり、サイモンさんがピアノの前に来て、マイクの確認をしたりしてました。そんなただならぬステージ上の様子を、私達観客も固唾を飲んで見守る感じ。上原さんの表情からもさすがに笑顔は消え、真剣そのもの。しかし時間だけが過ぎていき、肝心のサウンドチェックはまったく行なわれない。この先どうなるんだろう?と不安がよぎる。

上原さんはアンソニーさんを何やら説得している様子。しきりにステージの後ろを指差し、何かを説明している。それを驚いた表情で聞くアンソニーさん。ほどなくして上原さんとアンソニーさんはステージ上から姿を消してしまいました…。スタッフさん達は透明のパーテーションを運び込み、ピアノの前に立てる。これでピアノとドラムの間に壁を作り、音響上の干渉を防ごうという訳ですね。もっと早く出せば良いのに~! ピアノの周りに立てるこのパーテーション、その位置を指示するのは何故かサイモンさん。上原さんはまったくノータッチ。この時、まさか上原さんはご立腹なのでは?なんて思ったり。海外ツアーなどいくつもの修羅場をくぐって来た上原さんに限って…。

そしてステージ後方からはAOEQのライヴが聴こえる。実は上原さん達が出演するMt.Fujiステージのすぐ後ろには、Warterfrontステージというステージがあり、上原さん達の直前にAOEQのライヴが組まれていたのです。しかも湖に面した小さなステージで、アコースティック調のライヴが行なわれる。おそらく、私の想像ですが、本来はこのAOEQの前にサウンドチェックを終わらせなければいけないはずが、トラブルで押してしまい、このまま強引に音出しをしてしまうと、その巨大な音がAOEQのライヴを台無しにしてしまうと。なので上原さんは、アンソニーに、後ろのステージがあるからサウンドチェックは出来ないと説明していたのではないでしょうか? ま、想像ですけどね。

サウンドチェックが行なわれないまま、開演時間が近づく。いや過ぎていたかも?この辺の記憶は曖昧…。とにかくAOEQが最後の曲「デイ・ドリーム・ビリーバー」を演奏中にあらためて上原ひろみトリオがステージに登場。大丈夫なのか?という観客の心配をよそに、上原さんはステージ後方の曇り空から光る晴れ間を見つけ、満面の笑みでガッツ・ポーズ!! それを受けて観客達もウォー!!と盛り上がる。あの上原さんの笑顔&ガッツ・ポーズが、それまでの妙な空気を一瞬で吹き飛ばしてくれましたね。そしてそんな晴れやかな空気のままサウンドチェックで1曲ジャムる。初めて聴くニュー・トリオの演奏の新鮮なこと! 間髪入れずにアーティスト紹介のアナウンスが流れ、1曲目「Desire」へ突入。この後の素晴らしいライヴについては前回書いた通り。


それにしても、色んな意味で濃密な時間をたっぷり過ごさせて頂きました。


*上の写真は、上原さん登場前の調律中の様子。そして下の写真は観客がどよめいたサイモンさんのドラムセット。






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 11.09.02 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@SWEET LOVE SHOWER


 11.05.14 上原ひろみ×熊谷和徳@ブルーノート東京
 11.04.18 上原ひろみ@丸の内コットンクラブ
 11.01.13 上原ひろみ@東京オペラシティ
 10.12.28 スタンリー・クラーク・トリオ@ブルーノート東京
 09.12.29 上原ひろみ@ブルーノート東京
 09.09.11 上原ひろみ@表参道ヒルズ

上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@SWEET LOVE SHOWER

2011-09-02 14:54:51 | ジャズ
HIROMI / VOICE

8月28日、上原ひろみさんのニュー・トリオ、ザ・トリオ・プロジェクトを観に、山中湖で開催されたSWEET LOVE SHOWERに行ってまいりました!これは、ザ・トリオ・プロジェクトの日本初披露となる記念すべきライヴです!


SWEET LOVE SHOWERは、山中湖畔で大小4つのステージにて開催される邦楽ロック中心の夏フェスです。上原ひろみさんは08年にも出ているので今年で2度目の出演ながら、ロック/ポップス勢の中にあって異色の存在。しかしそんなジャンルをも超越した圧倒的なステージで、山中湖を見事に“ひろみ色”に染めあげてくれました。

上原さんが登場するステージはセカンド・ステージながらメインと同等の大きさを誇るMt.Fujiステージ。ステージの後方が大きく空いていて、開放感抜群。本来ならそこに富士山が見えるらしいのですが、残念ながらこの日は曇り空。ステージには向かって左に上原ひろみ、中央にアンソニー・ジャクソン、右にサイモン・フィリップス。つまりピアノ→ベース→ドラムスという、上原さんのトリオ定番の並び。そしてピアノの上には赤いキーボード(nordって言うんですか?)が置かれている。これもお馴染み。私はミーハー魂を炸裂させて、ちょうど上原さんの目の前最前列をキープ。バンドメンバー本人達が実演するサウンドチェックの一部始終から被り付きで堪能してまいりました。

思うように進まないサウンドチェックに、表情が曇りがちに見えた上原さんでしたが、開始間近にステージ後方から覗いた晴れ間を見て満面の笑みでガッツポーズ! それを見て観客達もウォー!と盛り上がる。リハーサル的に軽くジャムッて準備OK。そしてそのまま本番に突入。1曲目は「Desire」。上原さんは片手でピアノ、片手でキーボードの同時弾き。そのキーボードでスカのようなリズムを繰り出しながら、観客へ向けてチラッと見せた「こんなリズムどう?」みたいな表情が堪らない! そして後半にかけて叙情的なプレイで一気に濃密な世界へ連れ去っていく。サイモンさんとアンソニーさんのリズムは流石に懐が深い上に重厚。その分厚いグルーヴに鼓舞されるように上原さんのピアノが踊りまくる。そして終盤にサイモンさんのツーバスがドコドコと唸りをあげた時、あらためてこのトリオは今までとまるで違う!と再認識。

2曲目は、上原さんのピアノが奏でる繊細なイントロからヘヴィーなグルーヴへと展開する「Flashback」。中盤からフリーキーに躍動しまくる上原さんのピアノ、縦横無尽にリズムを畳み掛けるサイモンさんのドラム、それらにまったく動じないかのようにへヴィー・グルーヴを提供し続けるアンソニーさんのベース。この曲での彼の間を活かしたベース・ラインはことのほか印象的でしたね。

アンソニー・ジャクソンは、アル・ディ・メオラ、リー・リトナー、ミッシェル・カミロ、ロバータ・フラック、チャカ・カーンなど、数々のアーティストの作品に参加して来たその道の大家。彼は6弦ベースを操ります。ちなみに彼は上原さんの1st作「ANOTHER MIND」と2nd作「BRAIN」にも参加していたので、意外と上原さんとの付き合いは古かったり。もちろんサイモン・フィリップスのソロ作にも参加しています。そのサイモン・フィリップスと言えば、再結成ザ・フーやTOTOのドラムを務めた名ドラマーですが、私にとってはそれよりもっと以前、70年代後半から80年代にかけての、ジューダス・プリースト、マイケル・シェンカー、ゲイリー・ムーアなどの諸作に参加した、ハード・ロック界の名セッション・ドラマーというイメージ。もちろんフュージョン的なものも含めて多彩な活動をしてきた方ですが、その基盤はロック畑なイメージですよね。で、やっぱり今回のトリオの胆は、アンソニー&サイモンという、明らかに上原さんより格上のミュージシャンと組んだトリオであることと、サイモンさんがロック系のドラマーであることでしょうね。

もちろん、上原さんのリーダー・プロジェクトですから、全ての主導権は上原さんにあり、彼女が全体を引っ張っていたことは間違いないでしょうが、それと同時に、アンソニー&サイモンの深いリズムの海の中で、その波に抱かれるように、思う存分、彼女ならではの表現力を発揮していたように思います。またソロ・ピアノでの活動により、さらに深くなった上原さんの表現力やドラマ性のようなものを、アンソニー&サイモンの重厚グルーヴがさらにドラマチックに引き上げているようにも感じました。

そして特筆すべきはサイモンさんのドラム! ツーバスを絡めながら雪崩のように押し寄せるタム回しの迫力たるや! やはりこれはロックの音圧ですよ。これまでのマーティン・バリホラやレニー・ホワイトとはまるで違います。どちらが良いかという話は別にして、上原さんの音楽として新しい境地に踏み込んだことは間違いないですね。これはCDで聴くよりライヴを観た方が遥かに顕著。例えば、マーティン・バリホラと上原さんの絡みは、それぞれの間合いを詰め合うようなスリルが有りましたが、サイモンさんと上原さんのそれは、もっと力と力のぶつかりあい。上原さんのサイモンさんに押し負けない程の逞しさは、やはりソロ・ピアノ活動で培われたものなのかもしれませんね。

さて、ステージは3曲目「Now or Never」。新作の中でも上原さんならではのハネたリズムが最高の1曲。この曲、大好きなんですよね~。上原さんも楽しそうに、そして表情豊かに弾きまくる。途中、ベースと鍵盤の掛け合いが延々と繰り返されましたが、それぞれユーモアのあるフレーズの応酬で観客を沸かしてくれました。上原さんは得意の「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のリフを組み込んだりしてましたね。

ラストは「XYZ」。デビュー作「ANOTHER MIND」からの曲。最新作以外の楽曲をこのメンバーの演奏で聴けるのも嬉しいですし、その選曲が上原ひろみ史上最も激しい曲の一つであることにさらに狂気! まあ、凄いですよ!超絶技巧を鬼気迫る勢いで弾きまくる上原さん、隙間を全て埋め尽くすような勢いで攻め寄せるサイモンさん、そしてその両者を重低音でがっちり掴んで放さないアンソニーさん。これはもう、プログレです!!

終了後、「ありがとうございました!」と、一言の謝辞を残した意外、MCはまったく無し。とんでもない密度と、風のような爽やかさで、あっという間に突き抜けたおよそ30分。野外ならではの開放感、トリオの醸す緊張感、上原さんの天真爛漫さ、すべてが最高! 上原さんは相変わらず立ち上がって弾くは、肘で鍵盤を叩くはと、アグレッシヴなパフォーマンスを繰り返し、顔芸と呼びたくなる程の豊かな表情で感情を爆発させてました。もう、ホント、素晴らしい!

やっぱ、ロックフェスで観る上原さん、最高です!!!



そしてこのニュー・トリオの瑞々しい完成度と、一段と頼もしくなって日本に戻って来てくれた上原さんに拍手!

この後、このトリオは、東京JAZZへの出演、そしてジャパン・ツアーと続きますが、一大旋風を巻き起こすこと間違いないでしょう!


*写真は今年3月にリリースされた、上原ひろみの最新作にして、アンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップスとのトリオ・プロジェクトによるデビュー作にも値する「VOICE」。





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