傀儡

坂東眞砂子　著

鎌倉時代、武士の世にとって変わったものの至るところに戦の恨みが残り、
乱暴狼藉のあとが残る。

今様を歌い、傀儡を操る一座の一員として旅する叉香、村中が武者に殺され、
逃げのびたものの子に死なれたいぬ、西域から渡来した行者沙依拉夢、
北条に滅ぼされた三浦一族の残党。
時代の流れに翻弄され、それでも生き抜く人々。

一人ひとりの壮絶な人生が、鎌倉という地で交差して、さらなる物語を
織り上げていく。
それは歴史を変えるような大きな出来事にも絡み合って、時には哀しく
時には華やかに輝いては消えていく。

ただ生きるということがこれほど大変な時代もあったのだ。
食べるだけ、眠るだけ。どれ一つとして贅沢は求めていないのに。

沙依拉夢が探る救いの道が切ない。
どう伝えても伝わらない教えや、それを利用して高貴な者のための特別なものと
して伝えられる教え。もどかしさや方便、政治的陰謀など多くの背景があって
宗教が成り立っていくことがわかる。

ぞれぞれが再び己の道へと消えたとき、ほんのわずかだが希望の光が
加わったのが救いだ。