哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

鶴見警察のシンドラー?

2010-09-03 23:17:17 | 時事
 昨日だったかNHKのニュースで、関東大震災時におきたデマによる朝鮮人虐殺事件のとき、300人の朝鮮人を警察署にかくまった警察署長の話が紹介されていた。恥ずかしながら知らなかったのだが、webで検索すると杉原千畝やシンドラーと似た話として結構知られている話のようだ。

 そのとき鶴見警察は1000人の日本人に囲まれ、300人の朝鮮人を差し出すように迫られたのだが、その警察署長は体を張って守り、あきらめさせたそうだ。今となっては、警察署長の行為は誰からも英雄扱いされるだろうが、そのときは1000人の反対意見の日本人に対して、もしかしたら自分の命さえも失いかねない異常事態の中で、たった一人で自分が正しいと信じる行為を貫いたわけだ。もしこのような事態に自分が遭遇したとしたら、果たして同じ行為ができるだろうか。

 この話で思い出したのは、黒澤映画の「七人の侍」の1シーンだ。うろ覚えだが、侍たちが敵方の野武士を1人捕虜にしたところ、村の農民たちが殺された家族のかたきとしてこの捕虜を殺そうと引き渡しを迫る。侍たちは始めはなだめようとするのだが、農民たちの強い要求に最後は屈してしまう。

 多数の主張に迎合することはやさしいが、自分が正しいと信じて抵抗し続けるのは何と困難なことか。いや、正しいことが何かわかっている人にとって、これを困難とは決して言わないのであろう。正しいのだから、たった一人であっても何もひるむことはないのだ。