哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

毒薬少女に想う(週刊新潮今週号の「人間自身」)

2005-12-10 18:52:45 | 哲学
 池田晶子さんの週刊新潮連載「人間自身」今週号は、「毒薬少女に想う」という題でした。主なところを要約しつつ抜粋します。

「高校生の少女が母親を毒殺しようとした事件、定石通りに精神鑑定に送り、病名がつけられて、ありきたりの解釈で理解したようにして、おしまいにされる。そのようにして納得できるのは、その事柄の本当の不可解さをわかっていない、驚いていないからである。
 現代の我々は、浅薄な科学的解釈や大量の情報流通によって、何もかもわかると思っているから、理解不能な出来事に出会うとありきたりの解釈に逃げ込む。しかし、このような事件が何だったんだろうかという不気味な思い、わからないことへの驚きと畏れは、非常に大事なものである。この理解不能性に端的に驚き、理解不能を理解不能と理解し、なお理解しようと試みる。人間とは何か、と考えるのである。」

 確かに現代の我々は、問題や謎があれば解けるはずと思っています。今現在解明されていない、科学や医学の問題や謎もいずれ解明できるという人類の進歩を、いまだに信じています。
 池田さんのおっしゃる「理解しようと試みる方法」は、浅薄な科学的方法を超えるものでしょうが、本文の末尾には「あれらの事件は精神医学よりもむしろ文学によって扱われるべき」とありますから、とりあえずは文学の世界に理解可能な解釈が潜んでいるのかもしれません。