風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

リオ五輪第五幕・国の力

2016-08-22 00:45:17 | スポーツ・芸能好き
 昨日、海外出張からの戻りで半日移動している間に、陸上男子4×100メートル・リレーで、日本チームが「銀」メダルを獲得したという嬉しいニュースがあった。前回・ロンドン五輪での「銅」メダルは、メディアは遠慮して触れないが言わば棚ボタだっただけに、今回、実力でもぎ取った「銀」メダルには価値がある。アメリカをも抑えたのだから感動的ですらある。一人ひとりは決勝に残れるほどの飛び抜けた実力がなかったが、美しいと言っても良いほどのスムーズなバトン・リレーの技術力はボルトも認めたほどだし、一定レベル以上の4人が集まり、層の厚さを見せつけた形だ。
 体操男子団体金メダルや競泳男子800メートル・リレー銅メダルの健闘のときにも書いたように、私には「団体戦」に特別の思い入れがある上、高校時代に陸上部で、一つ上の代の先輩が大阪大会4×100メートル・リレーで優勝しインターハイにも出場した種目として身近に見ていただけに、感慨は一入である。ニュースや名場面として繰り返し放映されるたび、泣けてしまう・・・。実は桐生も、「個人種目より、リレーが好き」と言って憚らない。「なんで好きなのかな。4人が力を合わせてやるワクワク感とか、バトンをもらうまでのドキドキ感とか」と言うが、個人の孤独な戦いを基本とする陸上競技であるからこその独特の連帯感については、以前にも書いたように、よく分かる。洛南高校陸上部監督によると「桐生は冷静に走ると良くないが、興奮状態で走れば本来の強さが出てくる。その走りができたのではないか」と言われるが、そうなるであろうこともまたよく分かる。
 この競技で、中国は日本に対してライバル意識を剥き出しにしていたようだが、民族意識を前面に出すのは、中国や韓国くらいではないだろうか。実際、金メダル・ランキングを見ても分かるように、上位を占めるのは、“移民”大国の先進国であり、更にはせいぜい人口が多い国だ。まだ全ての競技が終わっていないが、1位:米国(43個)、2位:英国(27個)、3位:中国(26個)、4位:ロシア(17個)、同:ドイツ(17個)、6位:日本(12個)といった具合だ。
 以前、北京五輪のとき、海外駐在していた徒然に、国別に金メダル獲得数と一人当たりGDPとの相関をグラフ化したことがある(http://blog.goo.ne.jp/sydneywind/d/20080827)。その時には十分に説明し切れなかったが、例えばカヌー競技で日本人初の銅メダルを獲得した羽根田卓也さんが高校卒業後、カヌーの強豪国スロバキアに単身渡って修行しているように、日本人だけでなく、発展途上国の人が、練習環境の整った先進国で修業し、挙句、国籍まで取ってしまう場合も多いのではないかと想像する。こうしてスポーツや文化に予算を投入できるのは経済大国の証しでもあり、オリンピックという晴れの舞台で金メダルを獲得出来るのは国力の証でもある。比較するのは恐縮だが、韓国メディア自身が言うように、韓国が7種目(アーチェリー、フェンシング、射撃、重量挙げ、柔道、テコンドー、バドミントン)に偏る中で、先ほどの欧州諸国が強いカヌーや、世界的に人気のテニスでもメダルを獲り、万遍なく多くの種目でメダルを獲得する日本の健闘は、やはり特筆すべきだろう。もっとも2020年の東京五輪が決まって、その効果が先行して表れた面もあったかも知れない。
 昨今のシリアやイラクさらに北アフリカからの欧州への移民が問題になり、その反動として英国でEUを離脱する動きがあったように、民族と国家のありようは永遠の課題である。国家の威信など、本来はどうでもいいはずだと私は思うのだが、国家という近代の理性的枠組みのもとでも、民族問題が切り離せないのが人間の性(サガ)である以上、オリンピックは戦争に代わり格好の民族主義高揚の場面として自国の活躍を誇り、同時に世界の協調を確認する、欠くべからざる機会なのだろう。
コメント (2)
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