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風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

シブコ渋滞

2019-09-20 21:58:55 | スポーツ・芸能好き
 ゴルフ稼業もなかなか忙しくて大変だ。4日間の日程の場合、月~水と3日間休むだけで次の大会へ、今週はしかし4日間休んで今日からデサントレディース東海クラシックが始まった。今日の初日は黄金世代の同級生、渋野日向子(シブコ)と原英莉花と新垣比菜との三人組だったものだから、和気藹々、大ギャラリーを引き連れてのラウンドだったようだ。
 先週のシブコは、全英を制してから初の西日本での、地元・岡山に近い神戸の大会初日に、国内女子ツアーでのオーバーパーなし記録を「29R」に伸ばして歴代単独トップに立ったが、記録はそこで途絶えてしまった。それなのに記者からの質問にはいつも通りの笑顔でハキハキと答えて、やはりタダモノではないと感じる。週末となった三日目以降は、周辺の道路が混雑する「シブコ渋滞」や、コースに向かうバスを待つ「シブコ行列」も起きたと報じられた。
 一体、私を含むオジサンたちを中心に、これほどまでに注目を集める魅力は何だろうかと思う。
 地元のゴルフ練習場でも、すぐにオジサンたちと仲良くなるのだと、本人はオジサン・キラーを自称していた。スマイリング・シンデレラと呼ばれる笑顔を向けられると、明るく幸せにしてくれるし、ついデレッとしてしまうのもよく分かるが、海外メジャーで優勝しようが、変わらない、大物らしくない、話しかけ易い雰囲気に包まれているのは事実だろう。全英女子では、ホールからホールへニコニコと最大限の愛嬌を振り撒きながら移動し、クラブを握るや表情は一変、集中してささっと仕事を片付ける、手際の良い仕事師振りがまた颯爽としていてカッコイイのだ。そしてインタビューを受けるとシブコ節である。こうしてルーキー・イヤーであるにも関わらず、プロとしての完成度が高いのは見事だ。いや、完成されているのではなく、天性のものだろう。
 「プロフェッショナル」とは、英語では「職業としての」というほどの意味だが、アマチュアと違って技量がずば抜けていることに加えて、客商売だからファンを楽しませることにも秀でていなければならない。その意味で、イチロー(最近メディアは「さん」付けにするが、気持ち悪いので、商標として呼び捨てにする)は技量が優れているのはもとより、インタビューも個性的で、私たちを存分に楽しませてもくれた。それを彼なりに計算しているようなところもあった。松井秀喜も同じスーパースターだが、インタビューは優等生的でイマ一つどころかイマ二つくらいだったのとは対照的だ(が、キャラクターはクソ真面目でもなんでもなく、お茶目だ)。シブコもまた、技量が並はずれている上に、ファンを楽しませてもくれる。ゴルフが楽しい!(今でもソフトボールの方が好きらしいが)と思わせてくれる。断筆(ならぬ断クラブ)宣言中の私にも、ゴルフって良いよなあ・・・と思わせてくれる。
 岡本綾子さん(私たちの世代にとっては世界のアヤコさん、だ)から、先週末、次のような見立てが伝えられた。「渋野さんはもう、いっぱいいっぱいでしょう。初優勝した5月の頃の歩き姿と比べて、今は背中が丸くなっているし、さすがに体が疲れています。今年最初、3月にツアーに出た時は一人もギャラリーがつかなかったのが、それが今は大勢になっているのですから。体を休めることもままならないでしょう。でもそれが“騒がれる人”の仕事。岡本綾子もそれを30年やってきたわけですから。時代は繰り返されるということ。乗り越えていくしかありません。途中下車はできませんからね。」 シブコ自身も全英から帰国後は「顔バレするし、プライベートはなくなったかな。ひっそり生きていきたかったのに」とジョーク混じりに戸惑いを漏らしたらしい。しかし今日は5バーディー(2ボギー)を奪って上々の滑り出しに、「久しぶりに良い気分。楽しくできた。回るメンバーが良かったのが一番大きい」と語ったそうで、良かったね。
 指導する青木翔コーチは「シブコはまだまだ下手くそ。やることはたくさんある」と話していて、本当にこれからが楽しみな、ゴルフ界の至宝だ。
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マラソン・グランド・チャンピオンシップ

2019-09-16 13:08:26 | スポーツ・芸能好き
 東京オリンピックのマラソン日本代表選考レースMGCが行われた。瀬古さんが「日本一小さいマラソン大会だが日本一エキサイティングなレースになる」と期待を込めていた通り、四強の大迫傑(現・日本記録保持者)、設楽悠太(前・日本記録保持者)、井上大仁(アジア大会の金メダリスト)、服部勇馬(福岡国際の優勝者)を含む男子30人、女子10人の実力者が勢揃いし、最後までもつれる白熱した展開になった・・・と言っても、男子の30Km過ぎたあたりまでしかテレビ観戦せず、その後、外出してしまったので、残念ながら肝心の終盤戦を見ていない。YouTubeに、TV画面を外からビデオで撮ったらしい最後の8分映像が載っていて、辛うじて堪能した。
 東京オリンピックが(もっと言うと日本記録更新で1億円ボーナスが!?)モチベーションに繋がっているのか、最近の男子マラソンには少し動きが出ており、名前を覚えていなくてもなかなか有望な選手がいて、結果として、私には馴染みのない中村匠吾が優勝した。気温が30度近い暑さの中で2時間11分28秒は見事だった。2013年の箱根駅伝3区で駒大2年だった中村は、四強の内の三人、大迫(早大)、設楽(東洋大)、井上(山梨学院大)と同区間で対決し、同学年の井上には勝ったものの先輩2人に敗れて区間3位に終わっていたそうだ。今回、リベンジが叶ったことになる。
 テレビ観戦中にはぶっちぎりだった設楽悠太は、普段の振る舞いから「宇宙人」「異端児」と呼ばれる通り、また事前の会見で大逃げと予告した通り、この高温でも帽子やサングラスや飲み物でも暑さ対策をしているようには見えず1キロ3分ペースを刻むという異次元の走りでハラハラドキドキ楽しませてくれたが、25キロ過ぎからペースを落とし、37キロ過ぎで2位集団に吸収され、最後は14位に沈んだ。
 私が一番期待していたのは、大迫の走りだった。ここ一年半で二度の日本記録に沸いたとは言え、大迫の2時間5分台ですら世界で伍して行くのは難しい。3000mと5000mでも日本記録を持つほどのスピードにもう一段の期待をしたいところだが、今回の内定を逃がしてしまった。
 残る1枠は、MGCファイナル・チャレンジとして、国内の指定3大会(福岡国際、東京、びわ湖毎日)で、大迫がもつ日本記録2時間5分50秒を上回る最速タイムの選手が内定することになり、該当者がいなければ、今回3位の(そして日本記録保持者の)大迫が切符を手にするという、出来過ぎの展開となった(笑)。瀬古さんのマラソン経験者らしい弁が面白い。「設楽は事実上、30キロまでしかレースをしていないし、井上に至っては10キロほどだろう。体は回復する時間はある。一方の大迫は42キロを全力で走り切った。回復まで時間がかかる。もし、私が大迫のコーチなら、東京五輪本番のことも考えて(ファイナルに出ずに)『待て』と言うね」・・・果たして大迫は日本記録が更新されないのをじりじり待つ決断が出来るだろうか。設楽や井上は当然のことながら狙って来るだろう。こうなると3枠しかないのが実に気の毒だが、こうした敗者復活の楽しみを残してくれた。長丁場であればこそ準備がモノを言うマラソンで、そもそも一発勝負のオリンピックに向けた選考レースを、一発とは言わないまでも1.5発勝負として、とりわけ今回はほぼオリンピック通りのコースで気温や湿度などの条件もそれに近い中で実施したのは、理に適っていると思う。
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なおみ劇場

2019-09-02 00:03:03 | スポーツ・芸能好き
 韓国に対して言いたいことが山ほどあるが、韓国にかかずらうのは余りにいまいましいので(苦笑)、今日もスポーツ・ネタ。
 先ずはシブコが、ニトリ・レディースで4打差の5位に終わり、今季国内3勝目はならなかったが、連続オーバー・パーなし記録を「28」ラウンドまで伸ばし(全英女子オープンまで含むと実に「32」)、2013年のアン・ソンジュの記録に並んだ。ここまで来るのに、時差ぼけや疲れもあっただろうに、若さ故、とは言い切れないタフさと安定感は本当に素晴らしい。来週はオヤスミで、新記録は2週間後の日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯にかかる。「並んだからには新しい記録を作りたい」という言葉に期待したい。
 しかし、今日はシブコではなく大坂なおみが主役だ。
 全米オープン第6日、3回戦で、主催者推薦で初出場した15歳の新鋭ココ・ガウフと対戦し、僅か1時間5分、6—3、6—0でストレート勝ちし、ベスト16に駒を進めた。ポイントは、試合後、号泣するガウフに歩み寄り、「あなたは頑張った。コートでのインタビューを一緒にやりましょう」と声をかけたことに始まる。一度は断ったガウフだったが、大坂が再度「一緒にやりましょう」と誘うと受け入れて、前代未聞、敗者も交えたインタビューとなった。
 ガウフは「きょうの試合は本当に彼女(大坂)がすごかった。この試合から学ぶことが沢山ありました。この機会を本当に有難うございます。なおみ、今日は有難う」と涙ながらに話し、大坂も目を潤ませてガウフと抱き合い、「先ずココ(ガウフ)のチームと家族に敬意を表します。前から知ってる私たちが努力をして今、この舞台にいるのが本当に嬉しいです。私も成長できた試合。スタンドの皆さんからの声援も素晴らしかった。ココが相手だったから今日はいい集中力が出せました」と笑顔で答え、「今日のお客さんは殆どがココを見るためにやって来た。(一人で)シャワーで泣くよりも、みんなと話した方がいいと私は思った」とインタビューに誘った理由を説明した。スタンドの観衆が大歓声を送ったのは言うまでもない。
 その後のインタビューで、(自分と重ね合わせた?と聞かれ)「ココが悲しげにコートから歩き去るのではなく、顔を上げて欲しかった。彼女はまだとても若いけど、とりまくメディアはとんでもなく多い。心配なの」、(試合に集中できていた?と聞かれ)「メインコートでナイターを殆どしたことがなかったけど、雰囲気は全然違うわね。昼間と夜では観客の雰囲気も違った。誰もがこの試合に夢中だったんじゃないかな。私も彼女がどのようにプレーするかを見たかった」、(ココにアドバイスは?と聞かれ)「アドバイスなんてないわ。みんなの道はそれぞれ違う。彼女が何を経験してきたかを知らないで、アドバイスはできないから」・・・コーチが変わり、メンタルを不安視されて来たが、なかなかどうして、この心の余裕としなやかな強さと言ったら、ない。
 どこかのメディアが「なおみ劇場」と呼んでいたのでタイトルに無断借用したが、シブコの神がかりの笑顔と、ショットを打つ時こそアスリートの顔に戻って集中して小気味よくプレーし、歩き始めるや笑顔で観衆とハイタッチする、そのオンとオフの切り替えの絶妙さにギャラリーが魅了されたことに、まさか感化されたわけではなかろうに(!?)と思わせる、大坂なおみの一皮剥けた、プレッシャーを突き抜けた先の境地に一歩足を踏み入れたと思わせるような、それでいて実は本来の大坂なおみらしさを取り戻しただけなのかも知れない、連覇への夢をつい託したくなるほどの「なおみ劇場」なのであった。
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シブコ節

2019-08-31 13:37:35 | スポーツ・芸能好き
 いつの間にか「シブコ節」なる言葉が生まれている。「なおみ節」にあやかってのことだろうが、いずれにしても日本人女子アスリートの飾らない人柄は魅力的だ。いや、ゴルフ専門誌ALBAが渋野日向子をここぞとばかりにプロモートしているだけなのかも知れないが(笑)、関連記事の末尾に「きのうのシブコ節」などとサブタイトルをつけている。
 当初は「渋野節」と呼ばれていたが、海外メジャー覇者となった今も庶民的な性格は変わらず、「シブコ節」という名誉ある愛称に変わった。その全英では、笑顔を振りまく底抜けに明るいキャラと、ごく普通の(と見える)20歳のルーキーが初の海外遠征の海外メジャーで大躍進し、彗星の如く現れたことと引っかけて「スマイリング・シンデレラ」と名付けられたが、実際のところ、その攻撃的なゴルフと、パターにも時間をかけることのないきびきびした動きで、海外のレポーターからは、「彼女は何をすべきか分かっているし、深く考え過ぎていないように見える。とても驚いている」、「この20歳の選手は、コースで隙のないゴルフを見せている」、「メジャー初出場なのに、彼女はコース上でずっと笑っている」などと絶賛されたのだった。そのプレースタイルそのままに、記者会見で単純明快にテンポ良く繰り出される回答は、海外記者にも大ウケだったようだ。(コースのイメージは?の問いに)「全英はリンクスだと思っていた」、(大会の目標は?に)「予選通過できたらいいかな、くらい」、(何歳でゴルフを始めたの?には元気良く)「エイト!」・・・てな具合いで、物怖じしない普段通りの、むしろさっぱり!?の受け答えは大物には違いない。
 全英から戻って休む暇なく、北海道meijiカップに出場し、熱が出て3日目ぐらいから声が出なくなるなど体調が十分ではない中でも、「明治さんから大好きなチョコレートがもらえるから」と笑わせ、その実、「優勝するとは思わなかったけど、海外の試合は初めてで、直後の週はどういう感覚なのか体験してみたかった」などと、結果こそ首位と8打差の13位に終わったが、したたかなところを見せた。その翌週にはNEC軽井沢72に出場し(本人の直接コメントは見かけないが、軽井沢に惹かれたのではないかと思われる 笑)、体調を戻しつつ、夜中に咳が出て目覚めることが多いとこぼしながら、最終日最終ホール、残り5メートル半のバーディーパットを沈めれば優勝と、全英を制した最終ホールと同じような見せ場を作った。固唾を呑んで見守ったが、強気に打ったパットは惜しくもカップを外して2メートル・オーバー、さらに返しのパーパットも外してプレーオフを逃し、3位に終わった。よほど悔しかったのだろう、その時の取材ではぐっと唇を噛んでいたが、後の会見では「人前で(涙を)見せるものではないので、我慢をしていました。(涙が)出たっちゃあ、出ました」と語っている。この根性は本物だ。
 そして一週休みを挟んで、今週末はニトリレディース(北海道)である(こうして見ると、気候が良いとところを選んでいるようにも見える)。大会前には発熱して急性副鼻腔炎と診断され、「今週は自信がないので、予選落ちしても仕方がないと思います」と弱気な発言も飛び出していたが、昨日二日目を終えて、首位と2打差の5アンダーで4位につけている。なにより、国内ツアーでの連続オーバーパーなし記録を「26」ラウンドまで伸ばし、アン・ソンジュが持つ日本ツアー記録「28」まで後2つと迫った。順調に行けば最終日に到達する。抜群の安定感である。昨日の記者会見では、(この日を振り返って)「疲れました」、(どういう疲れかと聞かれて)「昼スタートというのと、おなかがすいて疲れちゃうのと、コースにも疲れるし、変なところに飛んでいく自分のゴルフにも疲れるのと、歩くのが疲れるくらいです(笑い)」、(後半はバーディーを取ってもニッコリという感じはなかったと言われ)「取ったらうれしいけど、喜ぶ気力もない感じでした」、(首位と2打差の4位と言われて)「このスコアは予想していなかった。ようやってるな、とは思います」、(やっぱり、バックナインの女ですね、と言われて)「ですね。いつまで継続するのだろう(笑い)」・・・これぞ「シブコ節」(笑)
 プロアマで一緒の組で回った中嶋常幸は「ゴルファーとしても人間性もすごくいいなと思った。技術的に完成されていて、言うことなし」と褒めちぎった。
 折しもテニスの全米オープンでは、「節」の元祖(!)大阪なおみが奮闘中だ。一昨日の二回戦には、元NBAのコービー・ブライアントや元NFLのコリン・キャパニックら有名人が観戦に訪れていたらしく、「彼らが来てくれて本当に恐縮している」「すごくうれしい。実のところ、彼らをあまり長く太陽の下にさらしたくなかったので、できるだけ早く決着をつけたかった」と明かした。試合後、ファンサービスする中で、ある少女ファンが目の前を通り過ぎる大坂に感激し、感極まって涙すると、優しくハグ・・・大会公式ツイッターに「これぞ私たちが求める心温まる瞬間」(Heartwarming moments like this one is what we love to see… ←文法ミスは私のせいではない 笑)と題してわざわざ動画付きで公開され、ファンの間に感動が広がっているらしい。
 そう言えば渋野も、全英女子のときに始めたホール移動時のハイタッチは、安全のために控えるとしながらも、帰国後も子供達とはハイタッチを交わしている。全英女子・2日目16番ホールでは、寝そべっていた小さい女の子に笑いかけると、女の子も笑みを返し、最終ホールまでついてきたため、ホールアウト後にボールを渡したことがあった。記者会見で、小さい女の子を得意の笑顔で瞬殺したと問われ、「超かわいい!友だちができた!うれしい」と無邪気に答えた。子供好きで、地元の子供たちと、ゴルフよりも好きと公言するソフトボールに興じることがあるらしい。
 いやはや日本人女子アスリートの、世界で活躍する中で見せる自然体の、しなやかな強さには、脱帽するしかない・・・(笑)
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哀惜:マスオさん

2019-08-19 00:03:24 | スポーツ・芸能好き
 今日放映された『サザエさん』を最後に、マスオさん役の声優・増岡弘さんが引退された。子供の頃に慣れ親しみ、その後、学生時代から独身時代までご無沙汰したが、子供たちがもの心つく頃から再び親しみ、今は子供たちも離れてしまったのに、家内だけは懐かしがって相変わらず見続けている(私はBGM代わりにして新聞なんぞを読んでいる)『サザエさん』だが、今日はしっかり見届けた(笑)。
 御年83歳だそうだ。それにしてはさすがに声優さんだけあって、最後まで若々しい、しかしサザエさんという実にインパクトのある妻を相手に、妻の実家に同居してご両親にソツなく気配りしながら、甥っ子(カツオくん)・姪っ子(ワカメちゃん)に頼られつつ、飄々と生き抜く夫役を演じて来られたものだ。マスオさん二代目を引き継いだのは1978年というから、私は交替を知らずに、40年以上も慣れ親しんで来たことになる。他にテレビアニメでは、1985年と1998年に「タッチ」の浅倉南のお父ちゃん役を、劇場アニメでも1986年「タッチ 背番号のないエース」「タッチ2 さよならの贈り物」、翌1987年「タッチ3 君が通り過ぎたあとに」で浅倉南のお父ちゃん役を演じておられ、それ以外にも挙げるとキリがないくらいご活躍されているが、マスオさん役と『それいけ!アンパンマン』のジャムおじさん役が代表作と言ってもよいのだろう。
 たかがアニメの端役と言う勿れ。マスオさんは偉大なのだ。因みに「マスオさん現象」とググると、コトバンクに(知恵蔵の解説として)「夫が、妻の実家に、婿入りという形をとらずに同居する家族形態」と出てくる。「嫁入りによる3世代家族では嫁・姑関係が対立しやすいが、舅・婿は平日は仕事のため、家庭内での摩擦は起きにくいといわれている。姓は夫方を名乗るため、夫や夫方の親の体面も保てる。また、同居による経済的余裕や、出産後の妻の仕事継続が容易となるなどのメリットもある。都会育ちの女性と地方出身の男性が結婚する機会が増え、2世帯住宅が一般化した1980年代から使われるようになった」といい、そのせいか、精神科医の和田秀樹さんは「パラサイト・ダブル(寄生する2人)」と呼び、こうした家族形態を推奨しているらしい。それはともかく・・・
 長寿番組(テレビアニメとして放映期間の世界記録をもつ)の宿命で、『サザエさん』に登場する人物の声優は、サザエさん役(加藤みどりさん)とタラちゃん役(貴家堂子さん)を除いて、二代目・三代目がご活躍される時代となった。フネさん以外にはそれほど違和感がないが、フネさんとて変わってもすぐに慣れる。問題は、サザエさんのあの張りのある声を代替し、またタラちゃんの舌足らずで甘えた声を代替するのは、なかなか難しいかも知れない・・・加藤みどりさんはこの11月で御年80、貴家堂子さんも御年78である。原作者の長谷川町子さんが亡くなってから四半世紀以上も「国民的アニメ」として続けて来られた関係者のご努力に敬意を表するとともに、気にしないようにしながらも、サザエさん役とタラちゃん役の後任が気になってしまうのだった。
 何はともあれ増岡弘さんにはお疲れさまと、心からお礼申し上げたい。
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スマイリング・シンデレラ降臨

2019-08-06 00:59:41 | スポーツ・芸能好き
 ゴルフのAIG全英女子オープンで、昨年7月にプロテストに合格したばかりでルーキー・イヤーの渋野日向子(弱冠二十歳)が、あれよあれよと言う間に優勝してしまった。日本勢のメジャー勝利は、1977年の全米女子プロ選手権を制した樋口久子さん以来42年ぶり2人目の快挙だそうである。私の世代で言えば、1987年にアメリカ人以外で史上初のLPGAツアー賞金女王になった、あの岡本綾子さんでも手が届かなかったメジャー制覇である。凄いなあ。
 試合前は全くのノーマークで、先ずは同級生ながら先輩格で既に日米両ツアーで6勝をあげている畑岡奈紗、次いで前週のエビアン選手権でローアマを獲得した18歳の安田祐香が注目されていた。ところが初日に、7バーディー、1ボギーの66をマークし、首位と1打差の2位につけると、予選通過にとどまらず上位も狙える状況で迎える二日目・・・などと報じられ、そこでも4バーディー、1ボギーの69で回り、通算9アンダーで首位と3打差で2位を守り、三日目には、7バーディー、2ボギーの67と伸ばして通算14アンダーで、とうとう二位に二打差をつけて首位に立った。最終日も快進撃は止まらず、7バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの68と、四日間を通して唯一人60台で回り、通算18アンダーの270で優勝をかっさらってしまった。
 英紙ガーディアン(電子版)は、笑顔を絶やさずプレーする姿から「スマイリング・シンデレラ」との愛称がを持つ渋野の強心臓ぶりに感嘆し、「(今大会は)スマイリング・シンデレラと呼ばれる選手のおとぎ話のような結末だった」と優勝を称えたらしい。米紙USA TODAY(電子版)は、対戦相手のプレーに対して力強く拍手を送る試合中の渋野の様子を伝え、「このような選手は見たことがない」と絶賛し、終始、笑顔を振りまく姿に「英国のファンは魅了された」と伝えたらしい。
 小学生の頃にソフトボールもやっていたというのは、岡本綾子さんと同じで、体幹が強そうだ。カー娘の「もぐもぐタイム」のように、よっちゃん食品工業の「タラタラしてんじゃね~よ」を試合中に食べていたというので、問い合わせが殺到し、お盆明けから増産するらしい。思わぬところで渋野日向子効果が出ている。
 黄金世代とされるのは、畑岡奈紗(6勝)、勝みなみ(4勝)、新垣比菜(1勝)、小祝さくら(1勝)を追って、一年遅れで渋野日向子(3勝)、河本結(1勝)、原英莉花(1勝)、大里桃子(1勝)と、ツアー優勝経験者が既に8名という錚々たる顔ぶれで、皆、1998年度の生まれで同級生というから驚きである。私の子供たちの世代だから、なんとなく分かるが、今までにない日本人(新人類は死語?)という感じがする。どうかこのまま伸び伸びと活躍して、日本の閉塞感を打ち破って欲しい(笑)。
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バスケの星

2019-06-25 00:11:03 | スポーツ・芸能好き
 正確には(「巨人の星」をもじるならば)「ウィザーズの星」と言うべきか(そこまで言うのは気が早いか 笑)。米プロバスケットボールNBAのドラフト会議で、八村塁がワシントン・ウィザーズから日本人初となる一巡目指名(全体9位)を受けた。NBAと言えば田臥勇太が先駆者としているにはいるが、ドラフトを経てNBA入りするのは初めてのことであり、日本バスケットボール界に新たな歴史を刻んだという意味で、日本人も(と言うと、いろいろ異論を差し挟む人がいるかも知れないが)ここまで来たかと感慨深い。
 私は根っからの野球少年なので、アメリカ滞在中にMLBは見に行ってもNBAに足を運んだことはなかった。それでも三大スポーツの中でMLB以上にNBAの人気が高いことは肌で感じているし、当時はシカゴ・ブルズにマイケル・ジョーダンというスーパースターがいて、ミーハーな私はシカゴ・ブルズの真っ赤なTシャツを買って大事にしまっていたが、いつの間にか息子の寝巻になって消費されてしまった(笑)。それはともかく、身体能力に長けた黒人が多く活躍するNBAでは、技術力でなんとかなりそうな(実際にそうなっている)野球以上に、日本人には難しい世界ではないかと思っていた。実際にイチローは次の様な祝福のコメントを寄せている。「頑張ってほしいです。日本人は技術とか、どれくらい正確かが持ち味。うまい人が技術を磨いたとき、磨かれた技術というのはさらに、米国人にはないものがあるはずだから、それを見せつけてほしい」 
 小学生時代は野球少年で、球が早過ぎて誰も取れないからキャッチャーをやっていたらしい。小5のときには陸上100mで全国大会に出場したことがあるという。陸上で見せた身体能力の高さでは、元横綱・千代の富士を思い出させる(笑)。そんな彼のその後の活躍は目覚ましい。中学でしつこくバスケに誘われ、おだてられて軽い気持ちで始めてみると、中3の時にはチームを全国大会準優勝に導き、名門の宮城・明成高に進むと、全国高校選抜優勝大会3連覇を経験したほか、2014年のU-17(17歳以下)世界選手権では強豪国の選手を押しのけて得点王に輝いた。日本代表として、NBAグリズリーズとツーウエー契約した渡辺雄太らと21年ぶりとなる自力でのW杯出場権獲得に貢献し、その成果も考慮されて開催国枠での20年東京五輪出場が認められた・・・。
 全米大学体育協会(NCAA)一部の名門ゴンザガ大では、英語は出来ないし、バスケの強豪校なのでなかなか出番も回ってこないし、苦労したようだが、3年目の今季は出場全37試合で先発を勝ち取って評価を高めたらしい。大学のフュー監督は「言葉、文化、バスケの壁全てを乗り越えないといけなかった」「ルイはここに来たとき、子猫だったが今はタイガーだ」と、その努力を称えたという。ウィザーズとは別のチームの関係者は次のように評価する。「彼はもともと大学に入った直後は即戦力と見なされておらず、将来性重視のレッドシャツ(登録外選手)となる方向性だった。しかしながら、それに満足せず1年目から『試合に出て結果を残す』ことに重点を置き、人並みはずれた練習量でプレーの質を上げ、さらにその類まれなコミュニケーション能力で入学時にはいまひとつだった英語のスキルも急速にアップさせ、周囲の信頼をつかみ取った。控え選手から2年目にはチームの最強シックスマンにまでのし上がり、3年目の今はスターティング・ファイブに入ったどころかチームのエースに君臨している。他の誰よりも非常に速いペースでアジャストする能力を秘めていると思う」 テクニカル・タームはいまひとつ分かりかねるが(苦笑)、努力して急成長を遂げた雰囲気はひしひしと伝わって来るし、見る人は見ているものだと思う。
 ドラフト当日、ジャケット左襟には日の丸のピンバッジをつけ、ジャケット内側には日の丸が刺しゅうされていたという。どうしてもハーフと見られてしまうことを本人も意識しているのだろう。インタビューで、ピンバッチに込めた思いを聞かれて、「日本人として大きな舞台に出ているところを世界に見られている。僕の日本の国を世界に見せないといけないと思った」と答えた。そう、これは海外に暮らす日本人であればこそ自然に芽生える感情だと思う。代理人が同じということで既に食事をしたこともある仲のダルビッシュによると、好物は「餅とあんこ」で、ダルビッシュと同じらしい(笑)。因みに登板前日にメチャクチャ「餅とあんこ」を食べるダルビッシュによると、「カーボアップのためもあるし、餅は良い糖質でもあるし、体に合うし、もちろん美味い」ということだ。日本人ということでは、お母ちゃんが日本人(で、お父ちゃんはベナン人)という点で、大坂なおみと同じで(お母ちゃんが日本人で、お父ちゃんはハイチ系アメリカ人)、子供の成長にとって(もっと言うと日本人としての成長にとって)お母ちゃんの影響は絶大なのだ(笑)。
 彼のこれからの活躍に注目したい。
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祝・9秒97

2019-06-11 21:49:17 | スポーツ・芸能好き
 サニブラウン・ハキームが先日の全米大学選手権100メートル決勝で9秒97をマークし、桐生祥秀が持つ9秒98の日本記録を100分の1秒塗り替えた。先月の大学南東地区選手権決勝で自身初の9秒台である9秒99をマークしたのに続く記録更新の快挙である。高校生の頃、陸上部に属していた我が身としては、実に感慨深い。何がって、長らく・・・実に19年間も破られなかった10秒の壁を、一昨年12月に桐生がようやく突破し、更に二人目が続いて、この日本でもまるで魔法が解けたかのように時計の針が動き出したような、ちょっとゾクゾクする感覚に囚われるのだ(笑)。日本の短距離界がこれほど粒ぞろいの時代はかつてなく、来年の東京五輪400mリレーが楽しみだし、それまでに9秒台が続出するのではないかと期待が高まる。
 サニブラウンと言えば、2017年の世界選手権(ロンドン)200mで当時17歳157日の若さで決勝に駒を進め、ウサイン・ボルトが持っていた最年少ファイナリスト記録(18歳355日、2005年)を塗り替えた逸材である。このとき7位入賞を果たしたが、右太腿裏を痛め、その後のシーズンは休養を余儀なくされた。昨年も5月に右脚付け根を痛めた。アスリートにつきものとは言えケガに悩まされている。私も、レベルは違うが、陸上部で本格的に走り始めて右足裏の関節を痛め、治り切らない内に焦って練習すると今度は左腰を痛め・・・と、ケガを無意識に庇おうと無理をするのか別のところを痛めたりする。油断大敵である。
 ところで、どうでもいい話だが、陸上部の部室の壁には、100m、200m、400m・・・と、部の歴代記録が、本人の名前と記録した年とともにマジックで手書きされており、それをベンジンで消して自分の名前と記録に書き換えるのが夢だった。そうは言っても夢はなかなか叶わないものだから、いつしか500mLコーラの一気飲み記録などを書き加えて、ムキになって競い合ったものだった。凡人の哀しさ・・・
 サニブラウンの話に戻ると、彼の魅力は、188センチ、83キロの体格を生かした大きなストライドにある。桐生の9秒98のときと比較すると、100メートルを駆け抜けるのに要した歩数は、桐生の約47歩に対して、サニブラウンは約43歩だったそうだ。桐生の武器はピッチの速さと言えるのだろう。そんなライバルの二人が今月27日に開幕する日本選手権で直接対決する。こりゃ今から楽しみだ。

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大相撲における品格

2019-04-30 02:27:22 | スポーツ・芸能好き
 今日は(平成最後の)昭和の日だった。私が子供の頃は(昭和)天皇誕生日として親しまれた日だ。そう言えば、昭和天皇は大相撲が大層お好きだった。それだけに、白鵬がモンゴル国籍離脱申請をし、日本国籍取得に向けて動き出すや、そんな柄じゃないとばかりの白鵬バッシングが俄かに湧き起こり(便宜上、ここではそれを守旧派と呼ぶ)、いや、それこそ外国人排斥の頑迷固陋で、そんなことでは大相撲の将来はないと非難する声が対抗する(同じく、革新派と呼ぶ)場外戦には、草葉の陰でさぞ渋い顔をなさっていることだろう。
 双方の主張の間には、「品格」という問題が横たわる。
 「品格」の問題は実は古くない。革新派によれば、大鵬と柏戸が拳銃を不法所持していても、輪島が年寄株を抵当に入れて借金して廃業しても、双羽黒がおかみさんを突き飛ばして部屋を飛び出しても、いずれも日本人横綱であれば品格は問題にされなかったではないかとの剣幕だが、当時の横綱にそもそも「品格」の問題はありようがなかった。
 問題になるようになったのは、外国出身力士が活躍するようになってから、しかも単なる活躍ではない。例えば小錦(ハワイ出身)が1992年春場所までに13勝(優勝)、12勝、13勝(優勝)の成績で横綱に推挙されたが見送られた際、小錦自ら「横綱になれないのは人種差別があるからだ。もし自分が日本人だったらとっくに上がっているはずだ」と語ったという趣旨の記事がニューヨーク・タイムズ紙に掲載されて物議を醸し(後に、本人ではなく付き人のハワイ出身力士が本人に成り済まして語ったとされた)、作家の児島襄氏が月刊誌「文藝春秋」に「『外人横綱』は要らない」という論文を寄稿して、「国技である相撲は、守礼を基本とする日本の精神文化そのものであり、歴史や言語の違う外国人には理解できない」と述べたあたりから、後に外国出身横綱が曙、武蔵丸、朝青龍・・・と誕生するようになる頃に、顕在化してきた問題であることが想像される。言わば文化摩擦である。
 しかし守旧派の気持ちも分からないではない。
 最近のことで言えば、2017年の九州場所11日目、立ち合いで先に嘉風の顔を張ったがそのまま嘉風に攻められ黒星を喫した取組みで、白鵬は立ち合いが合わず「あれは待っただ」と物言いをつけて土俵上で立ち尽くし、土俵下でも残って抗議を続けたことがあった。同じ場所の千秋楽表彰式では万歳三唱し、懲りずに今年の春場所千秋楽ではインタビューのときに「平成最後なので皆さんで三本で締めたいと思います」と観客に三本締めを強いた。こんなことは、これまでの横綱にはあり得ないことだ。
 こうした、何様!?と思わせるような傲慢な振る舞いだけでなく、以前はよく立ち合いで相手の顔を張り、強烈な「カチ上げ」をかまし(プロレスのエルボーのような威力で)、ときには「猫だまし」までし、また勝敗が決まった後も、ダメ押しで相手を土俵下につき飛ばすこともあり、その取り口は横綱としての「品格」に欠けると横審(横綱審議委員会)から「物言い」をつけられていた。私に言わせれば、懸賞金の受け取り方も勿体をつけており(笑)、三代目若乃花の花田虎上氏に言わせれば、白鵬の立ち合いは「ずるい」のだそうだ。本来、横綱の立ち合いと言えば「後の先」などと表現されるように、相手有利の呼吸で受けて立ち、それでも勝ってこそ横綱のはずだが、ただでさえ強い白鵬は相手と呼吸を合わせると言うより100%自分の呼吸で、つまり白鵬の左手がついた瞬間に立ち合い成立という暗黙の了解になっているとまで解説する人もいて、そんな自分本位の絶対優位の立ち合いでは、勝っても有難みがないではないか。
 そんなこんなで、白鵬が何らかの処分を受けた不祥事の数は、今回の三本締めを入れると23件と、暴行事件を起こして引退した元横綱・朝青龍の25件に次ぐそうだ。言うまでもないことだが、横綱推挙状の文面には「品格、力量抜群に付、横綱に推挙す」とあり、ただ強いだけでは横綱にはなれない。「力量」より先に「品格」が挙げられているように、勝ちっぷりにも負けっぷりにも横綱らしい「品格」が求められる。この点で、白鵬にしても朝青龍にしても、勝ちに拘るのは立派だが、それだけに大相撲を格闘技としてしか見ていないフシがあり、それは外国人(と差別するつもりはないのだが)には仕方ない面があるのかも知れない。なにしろ相撲は、元々は神道に基づいた神事であり、日本国内各地で「祭り」として奉納相撲が行われているように、礼儀作法が重視される言わば伝統芸能の一つと言うべきであって、純粋な意味でのスポーツでも格闘技でもないことは、日本人であれば感覚的に分かっていることだからだ。
 守旧派による白鵬バッシングが外国出身だからだとすれば気の毒だが、どうも多くの人の反応は、革新派がなじるように、日本の大相撲がモンゴル出身者(のような外国出身者)に牛耳られる、というような薄っぺらな警戒ではなく、大相撲が長年守ってきた風情が変わってしまうことへの哀惜であろうと思われる(というのは必ずしも明示的ではないかも知れないが)。もし巷間伝えられるように、白鵬が日本人横綱として2020年東京五輪開会式で土俵入りし、これまで4人しかいない「一代年寄」となって白鵬部屋を開き、ゆくゆくは理事長の椅子まで狙っているとすれば、「郷に入っては郷に従え」で、横綱の「品格」とやらを理解し、横綱らしい立ち居振る舞いを身につけてこそ、日本の伝統芸能を担う一員たり得るのだろうと思う。モンゴル出身力士が、長らく低迷する日本の伝統芸能を支えてくれたのは事実だが、だからと言って古来のしきたりや規則を(意味があるかどうかは別にして)曲げてまで、おもねる必要があるとは思わない。所謂ウィンブルドン現象そのものなのだが、グローバルなスポーツであるテニスと、日本古来の伝統芸能である大相撲との違いである。
 こうして見ると、19年ぶりの和製横綱となった稀勢の里が如何に歓迎されたかが昨日のことのように思い出されるし、今年初場所での引退は今さらのように惜しまれる。横綱在位12場所で皆勤は僅かに2場所にとどまり、横綱としての通算成績36勝36敗97休は実に不本意なもので、他にも金星献上や8連敗(不戦敗を除く)など、横綱としての不名誉な記録は数多あるが、白鵬のような横綱らしからぬ「明るさ」「軽さ」(と言っては失礼だが 笑)とは対極の、横綱らしい「孤高」のイメージが好まれ、それがそのまま「品格」を感じさせた。ケガのことを聞かれても多くを語らないような、勝負師としての厳しさがあったし、引退を決意したときの心境を問われて、「そうですね。横綱として、皆さまの期待に沿えられないということは、非常に悔いは残りますが、私の…土俵人生において一片の悔いもございません」と答える有名な一節の中で、横綱として「期待」に応えることの重大さに触れた。振り返れば、2年前の春場所で、左上腕などのケガを押して奇跡の逆転優勝を成し遂げ、表彰式の君が代斉唱で涙を流したのは感動的だったが、責任感の強さが却って仇になり、無理がたたって、横綱の寿命を縮めてしまったようなものだった。一つの悲劇ではあるが、これも守旧派にしてみれば、稀勢の里のようなやや思い入れの強い横綱の宿命として甘受すべきなのかも知れない。
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モンキー・パンチ死す

2019-04-18 02:27:41 | スポーツ・芸能好き
 ノートルダム寺院の尖塔が焼け落ちて、その追悼を書こうと思っていたら、モンキー・パンチさんが亡くなったとの報が流れて、ノートルダム寺院どころではなくなってしまった。ルパン三世が黄色のレトロな車(FIAT 500)を愛用していたご縁で、FIAT JAPANは公式ツイッターで原作者のモンキー・パンチさんへの哀悼の意を表したらしい。
 私事になってしまうが、中学・高校・大学受験・大学・独身寮時代と、それぞれに愛読した漫画がある。『いらかの波』(河あきら作)であり(『別冊マーガレット』に連載されたもので、もとより男の私は知り得ず、姉に紹介されて、二人で貪り読んだものだった)、『ルパン三世』であり(インベーダーゲーム全盛の当時、陸上部でストイックな高校生をしていた私は、インベーダーゲームには見向きもせず、なけなしの小遣いで20冊近く、他に『SFマガジン』を毎月購読していた)、『エリート狂走曲』(弓月光作)であり(ともすれば怠けがちの受験生に自ら喝を入れた 笑)、『タッチ』や『みゆき』(あだち充作)であり(大学付近まで出かけても講義には出ず、大学近所の洒落た喫茶店「ぱんぷきん」で、むさ苦しい男どもは毎週のようにコーヒー1杯で粘って漫画雑誌を回し読みした)、『コブラ』(寺沢武一作)である(その後、会社のリストラで独身寮がお取り潰しになり、近所の本屋や喫茶店やクリーニング屋は果たして商売が成り立っているのだろうか・・・)。
 それぞれに思い入れがあるが、『ルパン三世』はアメリカのコミックのような筆致で、中身もアメリカの大陸的な大らかさと感情を引き摺らないドライなドタバタが、子供心にはとても新鮮で、コミックだけではなくTVアニメまで含めると、『ルパン三世』は圧倒的な存在感を誇る。中学生の頃に憧れたのは狐狸庵先生(遠藤周作さんの仮の姿)のぐうたら生活という、年齢に似合わない枯れた性格だったが(苦笑)、高校生の頃に憧れたのは、世界を股にかける自由人のルパン三世で、なおまっとうさには欠けるがそれなりに子供らしい伸びやかさと躍動感を取り戻した(笑)。それから四半世紀の後、マレーシア・ペナン島に駐在した頃、いかがわしい場末のDVDショップで、まさか海賊版じゃあるまいと怪しまないことにして(笑)超格安DVDセットを購入し、日本語放送に飢えた親子二代で、週末のひとときを楽しんだ。海賊版じゃないと思い込んでいるDVDセットは、その後、南半球オーストラリアまでお供し、その後、子供のおもちゃに紛れて、無事、日本の地を踏んだ。
 さて、『ルパン三世』は、ジェームズ・ボンドの007シリーズの泥棒版で、「だから女好き。長髪にするはずが締め切りに迫られ描きやすい短髪にした」(モンキー・パンチさん)という。そしてボンドガールが峰不二子で、「毎回違う女性にするはずが面倒になって全部、不二子にしちゃった」(同)、「名前は目の前にあった富嶽三十六景のカレンダーに“霊峰不二”とあり、そこに“子”を付けた」(同)ということらしい。へええ。次元大介は、以前ブログにも書いたが、映画「荒野の七人」のジェームズ・コバーンがモデルで、石川五ェ門は司馬遼太郎原作のドラマ「燃えよ剣」の沖田総司がモデルだ。銭形警部がルパン三世を追いかける設定は「大好きなトムとジェリーを当てはめた」(同)という。まさに(笑)。こうした紋切型には安心感があり、しかもそれをマンネリ化させない、毎回異なる味付けが絶妙だった。そして、大人の鑑賞にも耐えうる『ルパン三世』は、うるさ型のオトナの国フランスやイタリアでも人気を博し、クールジャパンの先駆けになったと言われる。
 ルパン役の山田康雄さん(享年62)は既に1995年に鬼籍に入り、1971年のアニメ開始時から40年にわたって銭形警部を担当した納谷悟朗さん(享年83)は2013年に、初代の石川五ェ門を演じた大塚周夫さん(享年85)は2015年に、鬼籍に入った。私自身も含めて、お互いにそういう齢なのだと頭では分かっていても、心はすぐに高校生の頃に戻る。
 それにつけても、思い出すのは、『カリオストロの城』のラストシーンで、ルパンと一緒に旅をしたいと願うクラリスの元をルパンが立ち去った後、ルパンを追う銭形警部が「くそ~、一足遅かったかぁ! ルパンめ、まんまと盗みおって」、クラリス「いいえ、あの方は何も盗らなかったわ。私のために戦ってくれたのです」、銭形警部「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました」、一瞬間を置いて、「あなたの心です」・・・とっつぁんには似合わない、なんて粋なセリフだろう。まさにルパン三世は、同時代の子供たち、いいオトナのおっさん、おばさんの心を盗んでしまったのであった。そんな原作者のモンキー・パンチさんに感謝と哀悼の気持ちを込めて、合掌。
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