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風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

トランプのショック療法?

2025-07-13 09:32:23 | 時事放談

 数日前の日経によると、相互関税と称してトランプ大統領が仕掛ける関税戦争で、輸入価格が上がって米国民は苦しむだろう(だからいずれその内、その政策は挫折する)と専門家は予想したが、実際に起こったことは、中国は米国向け輸出価格を引き下げ、日本の乗用車価格もまた18%弱も下落しているのだそうで、トランプ氏はこれを受けて「『専門家』たちはまたも間違っていた」とSNSに投稿したらしい。彼のいかにも得意げな表情が目に浮かぶ(笑)。

 日経は、こうした状況は、トランプ氏をさらなる高関税政策に向かわせるリスクが大きいし、そもそもこうした価格戦略が企業収益を圧迫し、デフレ圧力を生んだ、などと苦言を呈する。しかし、こうした事態に対処するのは、国家という、ある意味で統一した対応を取り得るアクターではなく、短期業績で株主の目を気にしなければならない個々の企業である以上、なかなか難しいところである(まあ、産業界を適切な方向に向かわせるよう環境設定して誘導するのが政府の役割だと反論されそうだが)。

 もっとも、こうした状況も、3月に米国内企業が値上げを避けるために駆け込みで輸入を増やして在庫を積み上げた事情を反映している可能性があり、これからこうした在庫がなくなれば、高関税がかかった輸入品が米国市場に出回るようになり、関税による物価の押し上げ効果が予想より長い時間差を経て出てくる可能性も小さくない、と日経は結んでいる。経済や外交の原理・原則を無視して好き勝手に振る舞い世界を混乱の渦に陥れるトランプ大統領の鼻を明かしたいという悔しさが滲み出て日経らしさを感じさせる記事である(微笑)。

 トランプ大統領の関税政策は、グローバリゼーションの美名のもとに、世界で製造業の水平分業が進展する一方で空洞化してしまった米国への製造回帰を目指すものとされる。しかし競争力がないからこそ米国内の製造基盤が失なわれたのであって、いくら呼び戻そうにも、昨日・今日の話ではなく、既に久しく、冷戦崩壊から数えても30年を超えるスパンのことである。今更それを支える人材がいるわけでなく、絵に描いた餅じゃないかと、この時代を生きて来たビジネスパーソンはせせら笑っていたのだが、高関税を避けるために米国に製造を移す企業が出始めているとの報道もあり、ほんまかいなと、なかなか一筋縄ではいかない世の中にあらためて驚かされる。

 日経は同じ日の別の記事で、中国によるレアアース規制強化に関して、トランプ氏が中国に勇ましく高関税を課して見せたものの、中国が4月に繰り出したレアアースの輸出規制という“けたぐり“に合ってあっけなく関税引き下げに追い込まれた、と解説して、さもトランプ大統領の失態であるかのように報道する。日本の産業界にも、アメリカにはこれほどの弱点がありながら強気に対峙したのは如何にも稚拙だったと憤慨する人たちが多い。

 そもそもレアアースがEVだけでなく防衛産業にも重要な材料であることは数年前から分かっていたことであって、最近、矢継ぎ早に対中規制を繰り出したのは、こういう事態を見越していたのではないかと、実は私は勘繰っている。つまりトランプ大統領は、素人のように慌てふためいているのではなく、確信犯だったのではないかと思うのだ。穿った見方かもしれないが、言わばショック療法として、内外の企業に行動変容を迫っているのではないか、と。トランプ大統領のやり方は乱暴だが、主張することに一片の真実が含まれることが、そう思う根拠になっている。

 中国では、政策あれば対策あり、と言われる。これには、法の抜け穴を探すような「あざとさ」があるが、より本質的に、たとえば権力構造はそれほどヤワなものではなく、トランプ大統領個人に振り回されているように見えながら、イーロン・マスクのように取り巻きのフリをして近づいて自らの思いを遂げようとトランプ氏に影響力を与えようとする人たちは現れるものだし(イーロン・マスクは失敗したのだと思うが)、同じように、たとえば産業界だってそれほどヤワなものではなく、中国へのレアアース依存を脱するには時間がかかるだろうが、代替ルートを確立するとか、代替技術を開発するなどして、いずれ脱中国を果たし得るのは間違いない。これは産業界への私の願望であるが、技術力への、とりわけ衰えたりと言えども日本の技術力(それは多分に人の問題である)は今なお健在であるとの私の信念でもある。

 そうだとしても、当面は日米欧にとって苦難の時期が続く。

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日韓60年

2025-07-08 23:12:25 | 時事放談

 かつて、「中国の歴史教育はプロパガンダ」、「韓国の歴史教育はファンタジー」と揶揄された。どこぞのシンクタンクが調査・研究した結果だと、もっともらしく引用されていたのを読んだだけなので、ただの都市伝説かもしれない。出来過ぎていて、ファンタジーに付き合っている暇はなく、左右の振れが大きい韓国内の事情に一喜一憂するのもアホ臭いので(大阪弁のニュアンスなのでご容赦頂きたい)、ブログでは滅多に取り上げて来なかった。しかし、北朝鮮がウクライナ戦争に派兵し、見返りに軍事技術を入手している疑いが囁かれて(ロシアのやることなのでクリティカルな技術ではないと思うが)、朝鮮半島情勢がキナ臭くなりつつある昨今、故・安倍さんのように韓国を戦略的に放置し続けるわけには行かないかもしれない。横目で眺めてみる。

 アメリカで、第一期トランプ政権に懲りたはずなのに、同氏を大統領に再選させた民意は、日本人の私には理解し難いけれども尊重しなければならないように、韓国で、第一期トランプ政権で評判の悪かった革新政権に懲りることなく、第二期トランプ政権の今、再び革新政権を選んだ民意は、やはり日本人の私には理解し難いけれども尊重しなければならない。しかし、留保がつきそうだ。

 韓国大統領選挙の結果は、李在明氏の得票率49.42%、金文洙氏41.15%、李俊錫氏8.34%と僅差で、李在明氏に意外に票が集まらなかったのは、投票率があがって、これまで選挙に行かなかった人が投票所に足を運んで、革新系に投票しなかったという事実を指摘する声がある。また、木村幹教授は、「金文洙と李俊錫の得票率の合計が李在明を上回った形になり、『戒厳令宣布後』の大混乱にも拘わらず、韓国の保守・進歩両派の均衡状態は何も変わらない結果になった」、「『戒厳令の結果、保守が勢いを失ったから』ではなく、『戒厳令の結果、保守が分裂したから』、李在明が勝った、という形」、「『分裂した方が負け』という意味で、『平常運転』になった。ある意味で驚くほど『安定している』」、と冷静にコメントされている。また、「今回の李在明の得票率、昨年の国会議員選挙の小選挙区で『共に民主党』が取った得票率を『下回っている』んですよね。つまり戒厳令事態にもかかわらず、進歩派は票の割合を減らしている。結構『凄いこと』だと思うんですけど」ともコメントされている。

 韓国社会の分断状況は、アメリカに似て、左右それぞれに4割前後の岩盤支持層があって、その真ん中に2割の無党派層が是々非々で行ったり来たりする(それによって政権交代を招来する)不安定な構造だと思うが、感情で揺れ動くあの韓国人が戒厳令騒動の後もなお「安定している」状況は、俄かに信じがたい。さすがの韓国人も、保守も革新もどっちもどっちで、革新政党の底の浅さを見透かしつつあるのだろうか。

 いずれにしても、日本人の私としては、かつて日本のことを「敵性国家」、日韓関係を改善させた前政権の外交を「対日屈辱外交」と呼び、選挙戦中はまともな政策論争をすることなく「内乱勢力の撲滅」を言い続けるような李在明なる人物がどうにも信用ならない。いかにもとってつけたような作り笑いは、文在寅氏にも似て、革新系の政治家に共通するわけではないだろうに、やはり信用ならない。李在明氏をよく知る人は、彼のことを必ずしも反日主義者ではなく、実用主義者だと言う。この実用主義なる言葉が韓国でどのように受け止められているのか私は知らない。よく聞かれるのは、過去のことに拘っていても解決のしようがないので、脇に置いて、未来志向で協力していく(つまり日本を利用する)、ご都合主義のツー・トラック政策を主張することのようだが、本来、明確な政治理念を持ち高い理想を掲げつつ現実に対処して行かなければならない現実主義が基本の政治家にあって、実用主義などと、なんとも軽い形容は、日本人の私としては、やはり信用ならない。そもそも、有為な韓国の若者たちに対して反日教育を改めない以上、右・左ともに今後も反日を政治利用するであろう韓国自体、信用ならない。

 それでも、日韓基本条約が締結されて60年の節目の年である。

 韓国は、歴史的に見れば、中国やロシア(や日本を含めてもよい)などの大国に隣接し、地政学的に見れば、大陸の端で逃れようのない半島国家なので、(戦前の日本が迷惑したような)日和見なのも、また、散々苛められてきた中小国家の独特の僻み根性や歪なナショナリズムが高まるのも、理解できなくはない。とかく激しやすく感情に左右される国民性なので、安定的と言われると、俄かに信じがたいが、自慢げに実用主義などといった軽い言葉を使うことなく、価値観を同じくする国同士なのかどうか甚だ怪しいにしても、お互いに西側の、引越しできない隣人として、少なくとも未来志向で向き合って欲しいものだと思う。

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トランプ的世界(続)

2025-06-28 09:41:31 | 時事放談

 NATO首脳会議のためオランダ・ハーグを訪れていたトランプ大統領は、記者会見でBBCウクライナ語サービスのミロスラワ・ペツァ記者の質問を受けた際、記者や家族の状況について尋ねたそうだ(一昨日のBBCによる)。

 記者から、パトリオット・ミサイルをウクライナに売却する用意があるか尋ねられると、それに答える前に、記者が子供とともにワルシャワに避難し、夫は軍人としてウクライナに残っていることを確認した彼は、そりゃ大変だね(Wow, that's rough stuff, right?)と同情して優しく返答し、ミサイルはアメリカ自身も必要だし、イスラエルにも供給していて、入手するのは難しいが(非常に効果的で100%の命中率だと宣伝するのも忘れなかった)、検討する(We’re gonna see if we can make some available.)と静かに答え、最後に次のように結んだ。I wish you a lot of luck, I mean, I can see this is very upsetting to you and say hello to your husband, OK?

 これもトランプ氏なのだ。故・安倍総理とウマが合ったのは、こちらのトランプだったのではないだろうか。

 トランプ氏が登場し、アメリカ社会が分断されて収拾がつかなくなりつつある現象は、トランプ氏が「原因」ではなく、「結果」だと言われる。これは重要なポイントで、彼もそれは分かっていて、MAGA派のご機嫌取りに余念がないし、世論や株価・為替などの指標をやたら気にしている。だから私は時々、次のような妄想に取り憑かれる。トランプ氏は確かに好き勝手に踊っているが、実は同時に操り人形か道化師でもあって、確かに好き勝手なことを言い続けて、その通りにアメリカを動かしているアメリカ合衆国のリーダーなのは事実だが、別の「意図」も同時に働いていて、確かにトランプ氏のものに近いからトランプ氏自身も気が付かないが、実のところ同床異夢ではないか、と。異夢と言うより近い夢ではあるのだろう。というのは、トランプ氏のやり方は乱暴だが、やっていること自体は概ね間違っていないと思うからだ。方向性はほぼ間違っていないが、彼が主張することは必ずしもアメリカ合衆国の国家意思そのものとは言えず、微妙に異なる真意が隠れているのではないか。

 第一次政権で、トランプ氏は中国に対して貿易戦争を仕掛けて、その後、中国との間で技術覇権を争う闘争へとエスカレートしたと解説されるが、そんなリニアなものではなく、トランプ氏の意図は飽くまで貿易戦争まで、貿易赤字を毛嫌いしていただけで、技術覇権闘争は必ずしも彼の意図するところではなく、彼が乗せられただけではないか。第二次政権で、ハーバード大学などのアカデミアがリベラルに過ぎ、反ユダヤ主義の学生に対して適切な対応を取らなかったことを彼は気に入らないと言うが、外国人留学生を減らすのは、そのようにトランプ氏が好む政策をとらせつつ、裏でアカデミアにおける中国の影響力を排除することを意図しているのではないか。だから私たちはトランプ政権における真意は何かを見極めなければならない。それはトランプ氏個人のキャラをいくら分析してみても分かりっこないので、アメリカそのもの、アメリカという複雑系のある側面が問題なのだ、と。

 こんなことを思うのは、権力はそんなに薄っぺらなものではないだろうと思いたいからであり、現にそういうものだと思う。が、これも変種の陰謀論か!?

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トランプ的世界

2025-06-23 00:28:03 | 時事放談

 米軍がイランの核施設三ヶ所に対して攻撃を行い、「非常に成功した」と、トランプ大統領が自らのSNSで表明して、その事実を知った。ロイター通信も短く伝えた。とんでもない時代になったものだ。SNSの威力もさることながら、彼の自己顕示欲の強さには驚かされる。世界が自分を中心にして回っているのを喜んでいるのは間違いない。

 だからであろう、トランプ氏がMAGAなどの略語を好むのに倣って、マーケットは略語(造語を含む)を広めて茶化している。Financial Times紙のコラムニストが4月2日「解放の日」以降のトランプ氏の関税政策が優柔不断なのをTACO(Trump Always Chickens Out.=トランプ氏はいつも腰砕け)と揶揄したのが話題になった。グリーンランド購入や51州目の対象にされたカナダを巡って、新MAGA(Make America Go Away=アメリカよ去れ)が唱えられて、アメリカ離れが起きつつあるとの声が漏れた。昔(トランプ氏登場以前)から使われていたFAFO(Fuck Around and Find Out.=好き勝手にやれば痛い目を見る)なる略語が、市場の混乱や不確実性を象徴する表現として最近よく使われるらしい。権威主義に近づいているのではないかと囁かれるトランプ氏だが、本人を対象とするTACOに対してせいぜい不機嫌な対応を見せただけで、さすがに、さる権威主義国でクマのプーさんが哀れにもネット環境から抹殺されている状況とは根本的に異なる。

 そんなトランプ氏は最近、かつてのG8からロシアを排除したことは「大きな間違いだった」と述べ、また、中国をG7に招くことは「悪い考えではない」と指摘した。彼はG7に何を期待しているのだろうか。国連・安保理や、ロシアや中国を含むG20などの国際機関が既に機能不全を起こしているのを知らないわけではないだろう。彼には国際秩序について目指すべき高邁な理想はなく、国際社会をまるで、金づるになりそうな富豪をもてなす悪徳不動産屋のオヤジの仲良しクラブのように捉えているかのようだ(苦笑)。

 制度としての自由民主主義はシステムで動くので、個人の力でどうなるものでもないはずだと思って来たが、彼は懲りずに挑戦し続け、実際に崩れつつあるのか、自由民主主義がレジリエンスを見せるのか、少なくとも自由民主主義の価値や経済原理を理解しないリーダーが巻き起こす混乱は、トランプ劇場として私たちは今まさに目撃しつつある。

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目くそ鼻くそ

2025-06-13 00:01:16 | 時事放談

 大変お下品なタイトルをつけてしまったが、これ以外のタイトルを思いつかなかった。

 環境活動家のグレタ・トゥンベリさんが支援物資を届けるために親パレスチナ活動家らと船でパレスチナ自治区ガザに向かう途中の9日未明、イスラエル軍に拘束され、どうやら無事、国外退去させられたらしい。これほどの有名人だから、無事に国外退去させないわけにはいかないだろう。

 どうでもいいことだが、「グレタ」とは日本人にはなんとも微笑ましい名前だ。もうちょっと学業に専念すれば、きっと優秀で明るい未来が開けているであろうグレタさんは、環境保護を中心に人権や社会問題に関心を持ち、道草を食ってグレている。いや、これはこれで大事なことで、これほどの行動力がある彼女の未来は明るいに違いない。

 ガザを巡って、イスラエルは拘束後、グレタさんに2023年10月7日に起こったハマスによるイスラエル襲撃の映像を見せようとしたが、グレタさんは見るのを拒否したそうだ。それでいて、かねて、民間の犠牲者拡大を厭わず攻撃を続けるイスラエルを批判し続けるのは、ちょっとアンフェアであろう。坊主憎けりゃ・・・といったところか。右も左も同じようにある種の思い込みから「不都合な真実」に目をつぶるのが現実である。

 それはともかく、トランプ大統領のコメントが秀逸だった。「(グレタさんは)アンガー・マネジメント教室に通うべきだ」「変な人だ。若く、怒りに満ちている」と評したという。

 あんたに言われたくない、と誰もが思うだろう。若くないが怒りに満ちた人が、アメリカ国内だけでなく世界を混乱の渦に巻き込んでいるのだ。これを自覚しない鈍感さこそ、トランプ氏の最大の武器であろう。

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