長女のところのふたりの娘の合同誕生日会は、今、テレビで流行りのリモートだった。昼間、馴染みの和食処を借り切って行われ、間仕切りのある2部屋と、テーブル席の2カ所にそれぞれノートパソコンが置かれている。長女のダンナが先端技術を屈指し、パソコン画面が4つに分割され、みんなで会話が出来るようになっていた。
テレビ画面を見ながらの会食なのだが、慣れない私たちはついダンナたちのいる方を見てしまう。看護師の長女だけはひとりで1部屋を占めているが、これは絶対に感染しないための工夫だと言う。個々に手の込んだプログラムが組まれていたが、距離の隔たりは心の隔たりでもあった。
美味しいはずの料理も、特別に注文したバーズディケーキも、何故か味気なかった。若い人たちとの世代間の隔たりはもっと大きく感じられたが、きっと、これからはこういう時代になっていくのだろうという予感がある。老兵は静かにしている方がみんなのためだ。
コロナ禍はまだまだ広がりそうだ。ダンナの母親も「娘たちから、『感染したら一番危ないのだからね』といつも注意されている」と零していた。「何だか高齢者は危険物扱いで嫌ですね。でも、心配させる訳にはいかないから、私も家でジッとしています」と同調する。何を言われようが、心配してくれているのだから受け入れる他ない。
みんながそれぞれに自分で考える、自分で判断する、それならば納得である。ただ今は、みんなに同調していれば非難されないからという雰囲気が強い。自分で考えるというより、黙って従っている方が得というところかも知れない。娘たちの次の世代、つまり孫娘たちの社会はどうなっていることだろう。