朝、友だちが野菜を持って来てくれた。礼を言うと、「出来過ぎちゃって困るのよ」と笑う。「玉ネギは何十本と持って行かれちゃうし、熟れ頃のスイカも2個盗られちゃった」と、家庭菜園の苦労を語る。彼のところばかりか、他の1坪農園でもよくある話のようだ。事前に下見しておいて、夜中に盗んでいくらしい。
彼を見送った後、カミさんが「腹が立つでしょうね」と言う。「意外にそうではない気がする」と私は答える。野菜作りで生計を立てている訳では無いし、腹が立たないことは無いだろうが、殺したいほど憎んでもいないだろう。盗まれないように対策はしているが、ある程度は仕方ないと諦めていると思う。
午後、カミさんと一緒にテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を見た。1時間ドラマと思っていたら、2時間半もあった。新垣結衣さんが星野源さんの家政婦となって働くが、ふたりは次第に惹かれ合っていく。星野は「結婚はしない」方が合理的と考える男だ。給料をもらうからには完璧に家事を行う新垣。
けれども、好きになって共同経営者となってみると、ズレが生まれてくる。このドラマのテーマは「愛するとはどういうことか」「家庭とは何か」「主婦の家事労働や育児はなぜ評価されないのか」など、男女の生き方が問われていた。好きがためにSEXが出来ない星野を見て、自分を思い出した。恥ずかしいが私も、男なら出来ると思い込んでいた。
難しいテーマなのに、深刻にならず爽やかに描いていた。今はむしろ、バカバカしいくらい軽く扱った方が受けがいいのだろう。「なるようになる」ことを、私たちの時代は重く受け止め過ぎていた。それが真摯な生き方だと考えていた。好きな人に「好き」と軽く言えない雰囲気を背負い過ぎてきた。