新婚旅行で泊った山中湖のホテルは50年経て、大きく変わったような印象だったが、フロントで尋ねると「今年で55年になりました」ということだった。もちろん何度か増築と改装が行われたのだろう。案内された部屋はスイートルームで、全面ガラス張りの部屋から富士山がよく見えた。夕方になって暗くなると庭一面にイルミネーションが点灯され、多くの客がその美しさに見とれていた。
食事はフランス料理のフルコースだったので、赤ワインを1本頼むと早速ソムリエがやって来て、ワインの説明を始めた。明るい男性で、カミさんが「イルミネーションは明日からと聞いたのですが?」と聞くと、「もちろんお客様の金婚を祝ってですよ」と調子のいいことを言う。翌朝、カミさんは6時頃から起きて、カーテンを開けて富士山を眺めている。「ワアー、だんだん赤くなってきたわよ」とiPadで紅富士の撮影に夢中だ。
ホテルを出る時、フロントの中年男性にそんな話をすると、彼は「私が撮った写真ですが、良かったら差し上げます」とA4サイズの写真8枚をくれた。人の縁はどこにあるのか分からない。私もつい、中学の修学旅行で見た富士山に魅せられ、新婚旅行で富士5湖を回った話をしてしまった。豪華な旅行をさせてもらい充分満足だったのに、名古屋駅に着いてからが本当にサプライズだった。
社会人となった孫娘の車で菊井町から栄の方へ向かって行く。どこの居酒屋で食事なのかと思っていたら、車は私たちが50年前に結婚式を挙げた会館に入っていく。孫娘は「ちょっと待っててね」と私たちを車に残して会館へ。しばらくすると呼びに来て、今日の「催事の案内板を見て」と言う。そこには私たちの名前の「金婚披露宴」とある。「それではお二人の入場です」とアナウンスされて部屋に入ると、披露宴の時と同じように金屏風が置かれ、長女のダンナが『君についていこう』を演奏し、みんなが拍手で迎えてくれた。
小3の孫娘からの花束贈呈に続いて、仙台の4歳の孫娘のメーッセージが大型画面に映し出され、出席できなかった次女と長女からもお祝いの言葉が映し出せれた。長女のダンナの企画・演出に、私たちはただただ涙するばかりだった。まさか結婚50周年を迎えられたのも奇跡だが、こんな風に子どもたちや孫たちからお祝いをしてもらえるとは感無量で、涙が止まらなかった。本当にありがとう。心から感謝しています。