「ボジョレーヌーヴォー」が日本に定着したのはいつごろからだったのだろう。私が地域新聞を発行していた頃、洋風の創作料理の店主が私と同じ歳ということもあって親しかった。しかし、私が日常的に利用できるような大衆店ではなかった。それが当時としてはよかったのだと思う。店主はなかなかの企画マンで、「ボジョレーヌーヴォー」祭りをやっていた。
その頃の私はビール一辺倒で、「ボジョレーヌーヴォー」を試飲しても、「軽い」とか「フルーティというより酸っぱい」程度の味オンチだった。子どもの頃、祖父は食事の前に日本酒の熱燗を飲んでいたが、その匂いが嫌いだった。「日本酒は臭い」と思っていたし、ワインも「酸っぱい」と思っていた。
マンションで大勢の友だちが出来た。全国から集まって来ていて、どういう訳か年上の人が多かったので、宴会となると最初はビールでも、そのうち自分の好みのものに変わっていく。「日本酒はどうも」と断っていたが、「1杯だけでも飲んでみたら」と勧められ、飲んでみたら美味しかった。今では日本酒も焼酎も飲める。
ワインを「味が深い」と感じられるようになったのも友だちのおかげである。醸造酒は日本酒もワインも、材料のコメやブドウによって、あるいは水や地域の温度の違いで、微妙に味が違う。同じ地域でも蔵元によっても差がある。それが面白い。とうとう通販でワインを買うようになってしまったが、送られてくるワインを飲む時はどんな味かと楽しみである。
我が家だけで「ボジョレーヌーヴォー」を楽しんでいては申し訳ないと、親族にも届けるようにしている。以前は2本セットがあったので直接送ってもらっていたが、今は我が家に届けてもらったものを、2本セットにして宅配業の事務所に持ち込み、送っている。なかなか手間だが、「楽しみ」と言われて止める訳にはいかない。楽しみは多いほどいいのだから。