
藪のなかに、宝石をまき散らしたようなどすぶんど。その神秘的な色彩が美しい。野ブドウのことで、山形地方の方言でどすぶんどという。ぶんどはぶどうのことで食べられないぶどうという意味がこめられている。酢漬けにして、打ち身、捻挫の薬にする民間療法にも用いられたきた。野ブドウは山ブドウに対比される蔓性の植物で、山になる山ブドウに対して、野に野生するのが野ブドウである。古くはエビカズラと呼ばれた。
古事記では黄泉の国にイザナミを探しにイザナギが行ったが、そのあまりにも変わり果てた姿に逃げ出すが、イザナミは鬼となってイザナギを追う。イザナギは恐怖にかられながら逃げる途中、エビカズラを見つけて投げ与え、鬼がその実を食べる間に逃げ果せる。このエビカズラが野ブドウでこちらの言葉でどすぶんどということになる。
秋になるとどすぶんどやヨーシュヤマゴボウなど実がその植物の存在を誇示するようになる。人は秋の日にかがやく実を愛でながら、一年が早くも過ぎようとする感慨にとらわれる。
野葡萄や埃かかりて町はづれ 石川銀栄子
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