万葉の歌人たちは、ことのほか萩を愛した。山に自生するヤマハギである。山上憶良が詠んだ秋の七草には、萩が一番にあげられる。ものの本によれ、万葉集には萩の花を詠んだ歌が137首にのぼるという。これは花を詠んだ歌のなかで集中一番多いとされる。
秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩が花見に (巻10・2103)
現代でいえば車を連ねて紅葉狩りに行くような感覚で萩の花を心待ちにしていた。萩は涼しい風が吹くとき咲くものと考えられていた。花の咲き始めから、盛りの萩、秋風に揺れる萩、という風に萩の観察も仔細にわたる。後世の日本人が桜の花を愛したように、万葉の歌人たちは萩を愛でて飽くことがない。
光禅寺の東側にある萩。道に沿って、萩が並んで植わっている。なかに白い萩が2本、目に飛び込んで来た。なんともいえない美しさだ。