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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1199「迷い船」

2022-02-08 17:53:53 | ブログ短編

「ハルコ、データの修復(しゅうふく)はできそうか?」
 ハルコは人工知能(じんこうちのう)に付けられた名前(なまえ)だ。ハルコは人が話すのと変わらない感じで答(こた)えた。
「ムリですね。バックアップも破損(はそん)しています。航行速度(こうこうそくど)も上げられません」
「まったく災難(さいなん)だよな。あんな所に流星群(りゅうせいぐん)が現(あらわ)れるなんて思ってもみなかった」
「仕方(しかた)ありませんよ。地球(ちきゅう)からの観測(かんそく)には限界(げんかい)があります」
「系外(けいがい)には出てるよな。今から地球に帰還(きかん)したいけど、地球の位置(いち)が分からないんじゃどうしようもない。これから、どうしたもんか…。もっと星図(せいず)を勉強(べんきょう)しとけばよかったよ」
 突然(とつぜん)、警報(けいほう)が鳴(な)った。ハルコの声が、「惑星(わくせい)に接近中(せっきんちゅう)。航路(こうろ)を変えてください」
「了解(りょうかい)――」男は操縦席(そうじゅうせき)に座(すわ)り外(そと)を見た。目の前には惑星が迫(せま)ってきていた。
「ウソだろ。こんな近くになるまで分からなかったのか?」
「センサーの精度(せいど)が落ちています。自動(じどう)操縦も故障中(こしょうちゅう)です」
「分かってるよ。任(まか)せなさいって…」男は操縦桿(かん)を握(にぎ)った。
 何とか危険(きけん)を回避(かいひ)すると、男は惑星をまじまじと見つめて言った。
「あの星(ほし)、見たことあるぞ。ハートのような模様(もよう)があって…。何だったかなぁ?」
「あれは冥王星(めいおうせい)です。地球からおよそ48億(おく)キロです」
「なら、冥王星と太陽(たいよう)の位置から地球の軌道(きどう)を計算(けいさん)すれば…。地球に戻(もど)れるぞ!」
「地球の軌道を計算しました。到着(とうちゃく)まで、9年と8ヶ月です」
<つぶやき>地球に戻れるまで時間がかかりそうです。さて、何をして過ごしましょうか?
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1198「自販機」

2022-02-06 17:42:36 | ブログ短編

 それは、いつの間(ま)にかそこにあった。いつ設置(せっち)されたのか分からない。売(う)られているものは、目を疑(うたが)うようなものだった。彼は自販機(じはんき)の前に立って、指(ゆび)を差(さ)しながら呟(つぶや)いた。
「えっと…、恋人(こいびと)、婚約者(こんやくしゃ)、配偶者(はいぐうしゃ)、娘(むすめ)、息子(むすこ)……。これを買(か)い集(あつ)めれば家族(かぞく)ができるってことか? でも、愛人ってのは余分(よぶん)だろ。こんなの買う人、いるのかな?」
 金額(きんがく)を見てみると、一万から十万までになっていた。ちょうど彼は、予定外(よていがい)の収入(しゅうにゅう)があったので、試(ため)しにやってみることにした。
「ここは、やっぱり恋人だろ。金額も一番安(やす)い一万だからな…」
 彼はお金を入れてボタンを押(お)した。すると、カプセルが出てきた。まるでガチャのようだと彼は思った。カプセルを開けてみると、中には電話番号(でんわばんごう)が書かれた紙(かみ)が入っていた。電話をしてみると、女性の事務的(じむてき)な声が聞こえてきた。
「恋人希望(きぼう)でいいですね。どんな感(かん)じの娘(こ)がいいですか?」
 彼は戸惑(とまど)いながらも、「これって、あれですか? 疑似体験(ぎじたいけん)みたいなやつですかね?」
 女性のしゃべり方は変わらなかった。「それは、あなた次第(しだい)ですね。どんなタイプの娘(こ)がいいですか? 希望があればお伺(うかが)いします」
「そこまで選(えら)べるんですか? そ、それは、いいですねぇ…」
「でも、それはお急(いそ)ぎでなければですか…。今ですと、いくつか空(あ)きはあるんですか…」
<つぶやき>これはどういうこと? ほんとに恋人が買えちゃうなんてあり得(え)ないでしょ。
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1197「待ち人」

2022-02-04 17:51:06 | ブログ短編

 彼女には、過去(かこ)に戻(もど)ることができる特殊能力(とくしゅのうりょく)があった。それに気づいたのは高校生(こうこうせい)のとき…。失恋(しつれん)したことがきっかけだった。それ以来(いらい)、彼女はことあるごとにその能力(ちから)を使ってきた。
 ある時、彼女が過去へ戻ったときのことだ。彼女は、見知(みし)らぬ男から声をかけられた。その男は、彼女の能力(ちから)のことを言い当(あ)てて言った。
「もう、その能力(ちから)は使わない方がいい。取り返しのつかないことになるぞ」
 彼女は警戒(けいかい)して、「何でそんなことを…。あたしの勝手(かって)でしょ。あなたにそんなこと…」
「君(きみ)も気づいているはずだ。身体(からだ)の具合(ぐあい)が悪(わる)いんだろ?」
「そ、そんなことないわよ。だって、今は元気(げんき)いっぱいの女子高生なんだから」
「はっきり言うが…。確(たし)かに今の君は高校生だ。見た目はその頃(ころ)と変わらないかもしれない。でも、過去へ戻ったからって、若返(わかがえ)っているわけじゃない。君の身体の年齢(ねんれい)はとっくに三十路(みそじ)を越(こ)えているんだ。これ以上(いじょう)続けると、中年(ちゅうねん)の女子高生になってしまうぞ」
「や、やめてよ。そんなこと言わないで…。だって…、仕方(しかた)ないじゃない。いろんなことが、思うようにいかないし…。あたしだって、こんなこと止めたいわよ」
「じゃあ、これで止めるんだ。これからは俺がそばにいてやるから」
「あなた、誰(だれ)なの? 何でそんなこと…」
「俺は、お前と出会(であ)うはずだったんだ。いつまで待(ま)っても来ないから、迎(むか)えに来た」
<つぶやき>思うようにいかなくても、その先(さき)に幸(しあわ)せなことが待っているかもしれません。
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1196「いいなずけ」

2022-02-02 17:49:28 | ブログ短編

 父親は娘(むすめ)を前に、深刻(しんこく)な面持(おもも)ちで言った。「実(じつ)は、お前に話さないといけないことが…」
 娘は慌(あわ)てて、「ちょっと待ってよ。まさか、俺(おれ)の子じゃないとか、言うんじゃ…」
 母親は、「なに言ってるの。あなたは、あたしたちの子供(こども)よ」
「もう、ビックリさせないでよ。昨日(きのう)見たドラマで、そういうのやってたから…」
「まったく、話しは最後(さいご)まで聞くもんだ」父親は改(あらた)まって、「実は、父(とう)さんの会社(かいしゃ)の…」
 娘は飛(と)び上がるように、「倒産(とうさん)したの? どうすんのよ。あたしの学費(がくひ)は?」
 父親はため息(いき)をついた。母親が口を出した。「倒産なんかしてないわよ」
 父親は諭(さと)すように、「ちゃんと聞きなさい。実はな、父さんの勤(つと)めている会社の近くに喫茶店(きっさてん)が開店(かいてん)してな。そこの店主(てんしゅ)が、むかし、父さんと親(した)しくしてた――」
 娘は声を上げて、「愛人(あいじん)だったの?! お母さん、まさか離婚(りこん)とか考えてないよね」
 母親は、クスクスと笑(わら)い出した。父親は呆(あき)れた顔をして言った。
「そうじゃない。父さんの親友(しんゆう)だ。その親友には、お前と同(おな)い年の男の子がいてな。お前も小さいころ、何度も会ってるんだぞ。実はな、その男の子は、お前のいいなずけなんだ」
 娘はきょとんとして繰(く)り返した。「いいなずけ…。あ、あたし、そんなの聞いてないよ」
「お前、まだ好(す)きな人いないんだろ? 一度、会ってみないか。なかなかの好青年(こうせいねん)だぞ」
<つぶやき>これはビックリですよね。さて、どうするんですか? 会うだけだったら…。
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